2018年2月28日水曜日

ヴィクトール・ウルマンのピアノソナタ第7番

ラ・フォル・ジュルネの福間洸太朗のプログラムにあるヴィクトール・ウルマンのピアノソナタ第7番を聴いてみた。死の年の1944年に書かれた作品である。

とりあえず、YouTube にあった2つの演奏を聴いてみた。

 viktor ullmann SONATA n.7

こちら(↓)は各楽章ごとに分かれている。上の演奏よりこちらの方が好みかも知れない。残念ながら、ピアニストが誰なのかは両方とも記載がない。

♪1. Allegro, gemächliche Halbe
♪2. Alla marcia, ben misurato
♪3. Adagio, ma non moto
♪4. Scherzo. Allegretto grazioso - Trio - Scherzo
♪5. Thema, Variationen und Fugue über ein hebräisches Volkslied


曲としては、2〜3回聴いたくらいではよく分からない、というのが「現代作品」を聴いたときの最近の個人的な&正直な感想だ。なので、「最後まで集中して聴けるかどうか」ということを一つの判断基準としている。

そういう意味では、この曲は惹きつけられるものを感じながら最後まで聴けたし、もう一度聴いてみようという気にもなった。部分的には、ピアノ曲の美しさも感じたし、音楽のダイナミズムも感じることができた。少なくとも聴きごたえのある作品である。

聴く前に、ウルマンはこのピアノソナタを完成させた数週間後、アウシュヴィッツに送られて命を絶たれた、ということを知ったので、心穏やかに聴くことはできなかったような気がする。…が、聴き始めたあとは曲のもつ力に魅了されて行ったように思う。


曲に関する情報を探したが、あまり見つからなかった。その中でこのCD(↓)の Booklet に少し解説(英語)が載っていた。

Piano Sonatas Nos. 4 5 6 & 7



以下、意訳・抄訳。

「7番はウルマンのピアノソナタの中で最も規模の大きな、形式において最も洗練された作品。彼のパーソナルな自伝的・集大成的作品とも言える。バッハ、マーラー、シェーンベルクからワーグナーまで多くの影響や引用が見られる。最後の方では『トリスタンとイゾルデ』が引用されている。また、スロバキヤの賛美歌、ルター派のコラールなども。最終楽章のテーマはヘブライの民謡からとられている」

「この曲はウルマンの4人の子供のうちの3人に献呈されており、このことはこの作品が人生を肯定する雰囲気や未来への希望を感じさせることとつながっている」


第5楽章「ヘブライ民謡による変奏曲とフーガ」については、ピアニスト、田隅靖子さんの文(↓)があり、ここにテーマのヘブライ民謡のことが書いてある。

✏️ヴィクトル・ウルマン: ヘブライ民謡による変奏曲とフーガ(『ピアノ・ソナタ 第7番』第5楽章)

「第5楽章のテーマは(下譜参照)1910年頃にパレスチナのユダヤ人の間で民謡として大流行したもので、たぶんロシア経由でチェコのウルマンの耳に届いていたのだろう。ナチスはそれをただの民謡として見逃したのかもしれないが、このテーマはユダヤ人の母と血を賛美する心の歌であった…」



楽譜はショット社から出ている。"Piano Sonatas Vol.2" に第5番〜第7番が収められている。下記はその1ページ目のプレビュー。

ちなみに、ショット社のウルマンのページにはプロフィールなどが載っている。




参考:《ラ・フォル・ジュルネの「先行抽選」決めた ♪》に記載したウルマンのプロフィール概要(再掲)。『ヴィクトル・ウルマン Viktor Ullmann (1898-1944)』からの引用。


「旧チェコスロヴァキア(またはポーランド)の作曲家,指揮者。…ウィーン大学で法学を専攻する一方で,1918年からシェーンベルクの作曲法科で学ぶ。…作曲家としては『シェーンベルク変奏曲集』がジェネバ音楽祭で高く評価されるなど名声を高めた」

「1940年8月にナチスにより囚われの身となる。…その後も作曲活動を継続したが、やがてアウシュヴィッツで1944年10月18日に殺害された。…作風は、初期のものはシェーンベルクの影響下に無調技法を多用し、その後はポスト・ロマン派的な枠組みの中へ無調技法を展開させることで,独自の語法を開拓した」



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