その審査のやり方に特徴があり、ちょっと面白いかも知れない。審査の一部に、ルドルフ・ブッフビンダー、ポール・ルイス、ファジル・サイ、アレクセイ・ヴォロディンなども参加するようだ ♪
Photo credit: Johann Sebastian Hänel |
アントニオ・モルモン氏はイタリアの音楽界では有名な人だったようで、1983年に La Società dei Concerti(Foundation)を創設し、これまでに 1,500回以上のコンサートを行い、また、多くの優れたアーティストを発掘しコンサートに招いた。
発掘したピアニストの中には、スタニスラフ・ブーニン、エフゲニー・キーシン、アナトール・ウゴルスキ、グリゴリー・ソコロフ、オルガ・カーン、ファジル・サイ、コンスタンチン・リフシッツ、ベアトリーチェ・ラナ、など錚々たる名前が数多く並ぶ。
ヴァイオリニストとしても、私でも知っているマキシム・ヴェンゲーロフやヴァディム・レーピンの名前が含まれている。
La Società dei Concerti Foundation は、現在、アントニオの奥様でピアニストでもある Enrica Ciccarelli Mormone(エンリカ・チカレッリ・モルモン)さんが President を務めている。
彼女は、今回のコンクールの発案者であり、ピアニスト&指揮者の Matthieu Mantanus 氏とともに Artistic Director と審査員を務める。
さて、"Antonio Mormone International Prize" であるが、4年毎にピアノとヴァイオリンのコンクールが交互に開催される。第1回目の "2019-20 competition" はピアノである。
参加年齢は 18歳から28歳。優勝賞金は€30,000(約370万円)で、副賞として Universal レーベルのCD録音、1年間のマネジメント契約(Lorenzo Baldrighi Artists Management)、コンサートツアー(イタリア、ドイツ、ポーランド、北米、アジア)がある。
面白いのは 2次ラウンドの審査方法だが、応募からの流れを順番に簡単に説明する。
応募は通常のビデオと書類なのだが、さすがに今どきのやり方だ。ビデオは YouTube か Vimeo にアップロードし、そのリンクを通知する仕組み。一瞬、応募者全員のビデオが見られる!と思ったのだが、"unlisted mode" で…と書いてある。そりゃそうだ…(^^;)。
内容は、Haydn/Mozart/Beethoven/Schubert いずれかのソナタを含む 40分〜60分の、編集なしのビデオ。締め切りは 7月4日、まだ間に合うよ…(^^;)!?
審査は 3つのラウンドで行われる。
1次ラウンドはビデオ・書類審査(2019年 8月〜9月)で、結果は10月4日に発表される。合格者はたったの 10人。この 10人には Yamaha Music Europe から €500(約6万円)の奨学金が与えられる。
2次ラウンド(2019年10月15日〜2020年4月30日)は "Traveling jury" と "Milano round" の2つからなる。この "Traveling jury" のやり方がなかなかが面白い。3次(ファイナル)ラウンドに進めるのは 3人(2020年5月8日発表)。
"Traveling jury" では、通常のコンクールのように 1カ所のホールでコンペチタが次々に演奏するのではなく、各ピアニストが自分自身の公演を 3つ以上指定して、そこに審査員がお忍びで?聴きに行く、という形をとる。
4人の正式な審査員以外に、次のようなピアニストたち(↓)もこの "Traveling jury" に参加するようだ。公演後には審査員が身分を明かすようなので、コンペチタはこういうすごいピアニストにも会えるのかも知れない…(^^)♪
Rudolf Buchbinder, Beat Fehlmann, Vadim Kholodenko, Paul Lewis; Beatrice Rana, Fazil Say, Alexei Volodin
公演はソロリサイタル、オーケストラとのコンサート、室内楽コンサートで、一般的な公演(ホール主催、音楽祭など)以外にも大学などでの演奏会でもいいようだ。
公演活動をあまりしていないピアニストには厳しい条件なのかも知れない。あと、ネットでコンクールを楽しもうと思っている私などにとっては、「聴けないんだ…」という残念感もある…(^^;)。
"Milano round" では、ミラノにおいて Foundation La Societa’ dei Concerti が主催する 2つのソロリサイタルを行う。
応募時に申請した 2つの 40分のリサイタルプログラムを元に Foundation La Societa’ dei Concerti が 2つの公演(↓)を構成するようだ。
- 25分のリサイタル+自己紹介・アピール
- 40分のソロリサイタル
2019年の 11月から 2020年の 3月まで、毎月 2人ずつの公演が行われる。約半年間の間に、自分自身の公演 3つ以上とミラノでの 2つの公演をこなす必要がある訳だ。
コンクールというより、通常の公演を評価される感じになるのだろうか…?
コンクールにありがちな「コンクール映えする曲を審査員にアピールする弾き方で弾く」というよりも、こちらの方が断然いいと思う。本来の音楽、演奏会のあり方により近い状態で評価できるのではないだろうか。
3次(ファイナル)ラウンドはソロリサイタル、室内楽、ピアノ協奏曲の3つが、 2020年の7月2日〜5日の間にミラノで行われる。
ソロリサイタルは、60分以内で、ベートーヴェンのソナタと現代曲(委嘱作品:作曲家は Ivan Fedele で 8分ほどの長さ)を含む。
室内楽は、Quartetto Adorno との共演のピアノ五重奏曲。応募時点で 6つの候補曲(↓)から選んだ 3曲を考慮して(…の中から?)1曲を事務局から指定される。
- R. Schumann, Piano Quintet in E flat major op. 44
- A. Dvorak, Piano Quintet in A major op. 81
- J. Brahms, Piano Quintet in F minor op. 34
- D. Shostakovich, Piano Quintet in G minor op. 57
- C. Franck, Piano Quintet in F minor
- G. Martucci, Piano Quintet in C major op. 45
ピアノ協奏曲は、スカラ座での Orchestra of the Accademia Teatro alla Scala との共演。応募者は下記の候補曲(↓)から 5曲を選択し、(たぶん)その中から 1曲を指定される。
- W.A. Mozart K 466; K 467; K 488; K 491; K 595
- L. van Beethoven, all five piano concerti
- F. Chopin, op. 11 e op. 21
- R. Schumann, op. 54
- F. Liszt, nr 2 in a major
- J. Brahms, op. 15 and op. 83
- C. Saint-Saens, concerto nr 2 op.22
- S. Rachmaninov, concerti nr 1 / 2 / 3 / 4
- P. I. Tchaikowsky, concerti nr 1 op.23 / nr 2 op.44
- S. Prokofiev, concerti nr 2 op. 16 / nr 3 op.26
- G. Sgambati, op.15
- B. Bartòk, nr 3 sz. 119
今のところ、ネット配信の情報はない…。なお、ファイナルの審査員は下記。
- Bruno Canino
- Enrica Ciccarelli
- Michele Dall’Ongaro
- Ivan Fedele
- Cristina Frosini
- Olga Kern
- Paul Lewis
- Alexander Pereira
- Menahem Pressler
- Etienne Reymond
- Michael Stille
- Alexei Volodin
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