…と思ったのだが、セミファイナルの結果を見ると、色んなことを考えてしまう…(^^;)…ので、少し感想など書いてみようと思う。
まず真央くんの演奏だが、最初登場したときからかなり緊張している感じだった。で、スクリャービンが始まって、あれっ?音が出てない、肩が上がってる…。
聴いている(見ている)方が緊張してしまうような出だし…大丈夫か…と思っているうちにスクリャービンが終わってしまった。上の写真はその直後の一瞬の「放心状態」?
でも、演奏自体は悪くなかったし、繊細で濃密な音楽が聴衆を惹きつけていたと思う。「放心状態」のあと立ち上がって挨拶したときの「ホッ」という小さなため息と、小首をかしげた動作が、真央くんの心の状態をよく表していた。
…で、気を取り直して?ショパン。ここでかなり自分を取り戻したのではないか…。真央くんとしてはもっと上手くもっと表現できるという感じだったかも知れないが、(ベストではないにしても)十分に良い演奏だった。
そして極め付けはプロコフェエフの 7番。ここで完全にトップギアに入ったという印象。この曲がこんなに素晴らしい色彩豊かな情感溢れる名曲だったということを、実際の演奏で、音で聴かせてくれた。ガンガン弾きのプロコに慣れていたロシアの聴衆はびっくりしたのではないか。
バレンボイムが「優れた演奏ではすべての音が聴衆に聴こえる」といったことを書いていたが、真央くんの演奏はまさにそういう演奏だった。
たくさんの音が次から次へと鳴っているのに、すべての音があるべき響きであるべき位置に構築されていく、美しく響くフォルテはもちろん、細かい弱音の 2音の不協和音でさえはっきりと耳に届く。音楽の流れがとうとうと流れていく中に、生命力を感じる(機械的ではない)リズムが刻まれていく。
至福の時。ピアノファンにとっては実に贅沢な時間であった。真央くん、ありがとう ♪
演奏を終えたあとの表情を見ていると、本人は満足していなかったのかも知れない。
でも、あの緊張(もしかすると真央くんにとっては初めての経験?)の中であれだけの演奏ができたことが、ファイナルのいい演奏につながりそうな気もする。期待したい…(^^)♪
で、ファイナリストには次の 7人(1人増えた…)が選ばれた。
- Konstantin Yemelyanov (Russia)
- Dmitriy Shishkin (Russia)
- Tianxu An (China)
- Alexey Melnikov (Russia)
- Alexandre Kantorow (France)
- Mao Fujita (Japan)
- Kenneth Broberg (USA)
…わけだが、ちょっと意外な感じもあり、よかったなぁ〜と思うところもあり…。
驚いたのが中国の Tianxu An。別に下手だとは思わないのだが、私の好みとは合わない。
…なのだが、6人が 7人になったことも含めて考えると、これは仕組まれていたことなのでは?…と。「下種の勘繰り」ですが…(^^;)。
つまり、これは「長江」ピアノとマツーエフの約束のようなものがあって、「出来レース」だったのではないか? ピアノの宣伝にチャイコフスキーコンクールがうまく使われた…ということなんではないかと…。
まぁ、審査員団と私の好みの違いかも知れないのだが、もし彼が入賞するようなことにでもなったら、ちょっとチャイコンとの付き合い方?も考え直すかな…(^^;)?
冗談はさておき、結果を見て思ったことをいくつか…。
一つ、結果的によかったと思ったのは、ロシア弾きでアピールする「ファイナルに残れて当然でしょ」みたいなコンペチタたちがほとんど残らなかったこと。
チャイコフスキーコンクールなので、《チャイコン2次1日目:ググニンのショパンよかった ♪》に書いた、「『やはりそうなのね…』と思うコンペチタたち」つまり、ググニン、ガジェヴ、メルニコフ、コパチェフスキー、タラセヴィッチ=ニコラーエフ、アンナ・ゲニューシンあたりがもっと残るのでは?という「危惧」を感じていたからだ。
ただ、メルニコフとシシキンはセミファイナルの演奏を聴いた範囲ではファイナルに残ったのは順当だと思う。ググニンは微妙だったが…。
そういう意味では、審査員団に少しだけ「あっぱれ!」をあげたい…(^^;)。
もう一つ、エメリャーノフ(Konstantin Yemelyanov)とカントロフ(Alexandre Kantorow)が残ったのは、楽しみが残ったという意味では嬉しいのだが、ちょっと複雑な心境…。
二人とも、選曲がある意味大胆?で、ちょっとやり過ぎじゃない?と思うようなパフォーマンスだったからだ。
今回は、派手なピアニストが選ばれる傾向があるのかも知れない。そういえば、少し大人しい感じのするブロバーグ(Kenneth Broberg)もちょっと心配していたのだが、セミファイナルでは、バーバーとメトネルのソナタの熱演で会場を沸かせていた。
で、改めて 7人の名前を見ると、それなりに納得のできる、…というより「楽しめそうな ♪」ピアニストが残ったのかなと思う。Tianxu An も個性的という意味では、面白いのかもしれない…。
サラさん(Sara Daneshpour)が残らなかったのはちょっと残念ではあるが、アーカイヴでセミファイナルの演奏を聴いた限りでは、仕方ないかな…という感じである。
…ということで、いよいよファイナル。
応援するのは当然!藤田真央くん ♪ あとは現時点では「横一線」かな? ただ、それぞれ個性的なピアニストが残ったので、それを審査員団がどう判断するか?ということになるのだろう。その前に、どんな演奏が飛び出すのか楽しみだ…(^^)♪
おまけ。現地レポート中の高坂はる香さんのツイッターによると、ファイナリスト発表のときにちょっとしたアクシデントがあったようだ。真央くん、肝冷やしただろうな…。
チャイコン、ファイナリスト発表後の藤田真央さん!演奏順に呼ばれていたところ、なぜか藤田君の名前がスキップされて最後に呼ばれまして。しかもマツーエフ氏の発音も微妙だったから、一瞬ダメだったのかとご本人もドッキリした模様。— 高坂はる香(音楽ライター) (@classic_indobu) 2019年6月22日
隣にいたブロバーグに「君の名前だよ」と言われて気づいたらしい pic.twitter.com/1sjLXz2SKd
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