日本のピアノ製作が始まった頃に、職人気質の親子が創り出した「幻の名器」の話である。日本にもこういう「ブランド」があったんだ ♪ という思い。
著者は長井進之介という人。ピアニストであり音楽ライターであり、インターネットラジオOTTAVAにプレゼンターとして出演、という多方面で活躍している人のようだ。
本の内容は、日本のピアノ産業が育ってきた歴史と、その中で大橋幡岩(はたいわ)・巌(いわお)親子が手作りの品質にこだわったピアノを作り続けた話が中心である。
ヤマハの前身である日本楽器などでの活躍や、そこからの辞職、浜松楽器でのディアパソン(Diapason)の開発などを経て、大橋ピアノ研究所を立ち上げ、4,639台の「OHHASHI ピアノ」を世に送り出す。…が、後継者もなく廃業に至った。
物語としては面白いのだが、こういう会社やブランドが生き残れなかった日本の社会事情や産業構造などの問題もおぼろげながらではあるが感じた話であった。
とくに、「外国製ピアノを模倣し大量生産をするという方針を固めた」日本楽器を辞するという話は印象に残った。
以上が第1章で、第2章は筆者が探し当てた、現在残っている「オオハシピアノ」との出会いと、弾いた感想など、第3章は「ピアノの仕組み」となっている。
そのあとの「データ、資料編」が専門家などには役に立つのかも知れない。
で、私の興味は実物の音色を聴いてみたい、可能であれば弾いてみたい、という方向に行ってしまうのだが、なにせ「幻のピアノ」である。ほとんど不可能だと思う。
そこで、とりあえずネットでもその姿や音を知ることはできないかと探したら、販売しているサイト(↓)などが見つかった。冒頭の写真はここからお借りしたもの。
✏️中古ピアノ 大橋(OHHASHI 183) 国産ピアノの至宝 大橋のグランドピアノ
そしてそこに演奏動画も載っていた。下記は YouTube の同じ動画。ネットで聴いて分かるほど私の耳は肥えてないので、なんとも言えないが…(^^;)。
♪ 【演奏動画】大橋 グランドピアノ 183 グランドギャラリー
ついでに、YouTube で色々みていたら、なんと「大橋ピアノの新品」という動画があった。残っていた部品を使って、足りない部分などは設計図通りに作って組み立てたものらしい。「H23モデル」のアップライトピアノとなっている。
🎦 ①奇跡の大橋ピアノの新品!(H23年モデル)ぴあの屋ドットコム
🎦 ②奇跡の大橋ピアノの新品!(H23年モデル)ぴあの屋ドットコム
それにしても、ヤマハとかカワイという「多角経営企業」ではない、専業のピアノメーカーが日本にも一つくらいあってもいいのではないかと思うのだが、やはり経営が成り立たないのだろうか? ファツィオリの日本版…(^^)!
ちなみに、ピアノの日本メーカーというのは実はたくさんある(あった?)らしい(↓)のだが、現存していて世界で通用するブランドはあるのだろうか?
✏️ヤマハ・カワイ以外の国産のピアノブランド・メーカーまとめ
読んだ本の情報。
幻の国産ピアノ“オオハシ"を求めて OHHASHI いい音をいつまでも
長井進之介 著
創英社/三省堂書店 (2019/4/24)
ピアノ製造の一大拠点だった浜松で、技術力で知られた大橋ピアノ研究所。「幻のピアノ」と呼ばれるピアノと職人たちの軌跡を追う。
ちなみに、次の本からの情報もかなり含まれているそうだ。
人技あればこそ、技人ありてこそ―父子二代のピアノ
大橋ピアノ研究所 著
創英社 (2003/03)
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