シャルル・リシャール=アムランの弾くガーシュウィンの記事を書いたときに、たまたまアムランのインタビュー記事を見つけた。ショパンコンクールのあと(しばらくして?)のヤマハによるインタビューなので少し古いが、なかなか面白かった。
✏️アーティストインタビュー:シャルル・リシャール=アムラン(ヤマハ)
✏️アムランへ"5"つの質問(ヤマハ)
※追記@2023/09/11:2つともリンク切れ
Charles R-H thanks for listening! |
中でも一番いいなぁと思ったのは次の箇所。
「スルドゥレスク先生の教え方はユニークで、スケールやアルペジオなどの指の訓練のためのエチュードは使わず、曲の中でエクササイズしたので、音楽とテクニックを分けて考えずに自然に身につけることができました」
プロのピアニストの中にも、ツェルニーやハノンを使わずに「曲の中でエクササイズ」した人がいて、ここまでの結果(ショパンコンクール2位&活躍する若手ピアニスト)を出した人がいることが、なんだか嬉しいのだ。
レベルはまったく違うし、私の場合、ハノンなどの機械的練習が好きじゃないという理由でしかないのだが、一応の基本方針として「曲の中で基本練習をする」ことにしているので、アムランの話を読んで何となく心強い気がしたのだ…(^^;)♪
もう一つ面白かったのは、グールドのことを聞かれたときの回答。
「グレン・グールドやマルタ・アルゲリッチは、きわめて特別なピアニストだと思うのです。僕はバッハを聴きたいと思った時、グレン・グールドの録音は聴きません。でも、時々グールドを聴きたいと思って、彼の録音を聴きます。彼の個性は強烈で、様式感や作曲家を超越してしまうのです。アルゲリッチやホロヴィッツもそうですね。作曲家ではなく、彼らの演奏自体がすごい存在なのです。彼らに憧れますが、僕はそういうピアニストではありません。僕はまず何よりも作曲家を尊重したいと思っています」
アムランのレベルのピアニストにとっても、グールド、アルゲリッチ、ホロヴィッツなどは「特別な存在」なんだ…と、まぁ、そうなんだろうな〜と思いながらも、きっぱりと断言するアムランの言葉に妙に感心してしまった。
私自身、聴き手としても「神領域」だと思うピアニストが何人かいるが、そういう人たちは「特別な存在」で、その強烈な個性で「様式感や作曲家を超越してしまう」という言い方が本当にぴったりくると思った。
話はちょっとそれるが、ここで、昔キット・アームストロングのバッハを聴いたときのことを思い出した。
このときの私の感じ方はちょっと不思議な感じで、「思いっきり『今生きているキット君のバッハ』が目の前に現出しているのだが、…(中略)…聴こえてくるのはバッハの音楽、という感じ」などと書いている。
つまり、キット君の「個性」と同時に「バッハの音楽」が聴こえているという感覚。もしかすると、こういうのが「作曲家を尊重」する演奏の一つの在り方かも知れない、と思った。
アムランの話に戻ると、インタビューの時点で、2016年は「すでに70回のコンサートが世界10ヶ国で予定」されていて戸惑っていると言っているのがすごい。さすがにショパンコンクールの影響は大きいということか…?
でも、それよりも期待したいと思ったのは次の言葉である。
「コンクールに入賞して一番うれしいのは、大きな自由を手に入れたことです。…これからは自分の好きな作品を演奏できます」
聴き手の一人としても、いつもショパンや定番曲を聴かされるのは飽きてしまうので、ピアニスト自身が本当に弾きたいと思っている曲を、できれば私などがあまり知らない新しい曲をどんどん聴かせてほしいと思っている。
アムランが例としてあげているのは「ベートーヴェンの《ロンド》、エネスクの《古風な形式による組曲第2番》」など。エネスクという作曲家はまったく知らないので、さっそく聴いてみようと思っている。
そして、最後の「ピアノを学んでいる若い方たちへのメッセージは?」という質問に対して、「いつも心を込めて演奏してください」ということに加えて、次のように語っているが、これも、本当にそうなんだと思う。
「ある作曲家に興味を持ったら、その人のあらゆる作品を聴いてみてください。僕は10代の頃、ブラームスの作品に出会って感動し、何週間も彼のピアノ作品だけでなく室内楽、交響曲など、あらゆる作品を聴き続けました。楽譜を見ながら録音を聴いて彼の作品世界に没頭し、ピアニストとしての幅が広がったように思います」
ちなみに、《ピアノ演奏の聴き方の多様性?:アムランのガーシュウィン》の記事の中で「アムランとガーシュウィンという組み合わせがピンとこない」と書いたのだが、書きながら「誰ならピンとくるのだろう?」と自問自答しながら思い浮かべたのがブラームスだった。
どこか(風貌とか演奏とか…)に、ブラームスを感じさせる何かがあるのだろうか?
いずれにしても、一度、生の演奏を聴いてみたいと思うピアニストの一人である。
【関連記事】
《ピアノ演奏の聴き方の多様性?:アムランのガーシュウィン》
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