昨日の記事《近況:モーツァルトのソナタ「新規まき直し」!》に、「どう弾くかというイメージを深める」ということを書いた。
YouTube で何人かのピアニストの演奏を聴いて、いくつかの弾き方のイメージが見えて来たような気がする。それを何となく分類?してみるとこんな感じ(↓)…。
①ピリス:上質の純正モーツァルト
②シフ:バッハ(バロック)風
③バレンボイム:ベートーヴェン風
④モーツァルトのオペラ風
⑤ソナチネアルバム風
以下、簡単に説明をしてみる。
①の「上質の純正モーツァルト」としたのは、私のモーツァルトに対するイメージに一番近くて、好みにも合っているピリスさんの演奏。私の中では「これぞモーツァルト!」という感じだ。
よくある「頭の良くなるモーツァルト」とか「植物が元気になるモーツァルト」とか、世間一般の「モーツァルト的演奏」というのがあると思うのだが、それよりももっと艶があるというか、魅力やダイナミックさに富んだ豊かなモーツァルトというイメージだ。
こういう演奏は、一見(一聴)簡単そうに見えて、実はとても難しいのではないかと思う。正しく弾くだけでは、こういう演奏にはならないと思う。
②のシフの演奏は、ちょっと面白い。モーツァルトを少しバッハの時代に引き戻して、対位法的な色彩を色濃く出した演奏だと思う。タッチや装飾音符(トリルなど)からもバロックの香りを感じることができる。
YouTube では第1楽章しか聴くことができなかったが、端正な感じが好ましい。
シフの弾くバッハ(平均律とかフランス組曲とか…)では、対位法の中の内声やベースのフレーズがときおり浮かび上がって来たり(強調されたり)して、それがちょっと意外な面白さを醸し出すことがあるが、このモーツァルトでも同じような印象の部分がある。
例えば次(↓)のような箇所。上の段の左手の伴奏は、右手の旋律に呼応するかのようにやや強めに、かつノンレガート的に弾かれる。下の段では、突然「内声」(アルト:黄色いマーカ部分)が表に出てきて?びっくりする。
③のバレンボイムの演奏は、シフとは逆に次の時代の雰囲気というか、ベートーヴェンの中のロマン派的な要素を感じさせるような演奏だと思う。バレンボイムの芸風?を反映しているとも言えるかもしれない。
「モーツァルトらしさ」みたいなものをとりあえず横に置いておくとすると、こういう響きとダイナミクスは好きである。「もっと自由に弾いていいんだよ」というバレンボイムの声が聞こえてくる…かも…(^^;)??
これら①②③の演奏がそれぞれに成り立つということは、モーツァルトの音楽というものがバッハとベートーヴェンとその両方の要素を持っているからなのかも知れない。バッハの音楽を正しく引き継いで発展させ、ベートーヴェンの時代を先取りしているモーツァルト…?
④の「オペラ風」というのは、誰かの演奏を聴いて感じたのではなく、いろいろ聴いているうちにふと思いついたものである。その理由は主に第1楽章にあるようだ。
例えば、何となく『魔笛』の音楽を連想させる?「同音連打の第2主題」とか、突然のフォルテの和音(21〜22小節目)による「場面転換」とか、オペラ歌手が歌い上げるようなフレーズ(23小節目からの「推移主題」)とか…。
で、オペラ風の演奏というのもありうるのではないかと YouTube で探してみた。いくつかの演奏を聴く中で、一番近いかな?と思ったのが次のミェチスワフ・ホルショフスキ(昔の巨匠?)の演奏。
オペラ風と思って聴くと、第3楽章などもなかなか面白く感じる。
⑤は私が勝手に命名しているが、要はピアノ教室のお手本のような演奏。
この曲は作りがシンプルというか、基本的な音型が多いので、ある意味「ピアノ教室的な」演奏というのが想像しやすい曲だと思ったのだ。技術練習のための素材、あるいは習得した技術を応用する曲としての選曲…?
聴く(鑑賞する)ための演奏としては、あまり面白くないかもしれないが、そういう「基本に忠実な」「ピアノの先生が(お手本として)好みそうな」演奏もありうると思った。弾き手の「意図」が分かりやすく実現されている演奏?
例えばこのPTNAの「お手本音源」(↓)などはそういう弾き方なのかもしれない。
で、こうやって見てきて…、さて自分はどういう弾き方をしたいのだろう、と自問してみる。
①のような演奏をしてみたいとは思うが、難しい、私には無理。比較的、自分の弾き方としてアプローチしやすそうなのが③のベートーヴェン風(バレンボイム)のような気がする。もともとベートーヴェンが好きなのでそう思うだけなのかも知れないが…。
④のオペラ風も捨てがたいので、モーツァルトがこの曲で作り上げた「ピアノで作るジングシュピール(歌芝居)」みたいなものを想定しながら、自分なりの(ややベートーヴェン風の)「感情移入」のようなものをやってみようかと思っている。
どの程度できるかは分からないが、そういうイメージを持って、そのイメージに合った音を出すことを目指して練習した方が、格段に面白くなると思うのだ。さてさて、一体どんなものになるのやら…(^^;)?
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