第1楽章の断片(冒頭73小節+反復記号)だけが、自筆の下書きという形で残されていて、「1819年4月」と記されている。
聴いてみると、勢いがあってなかなかいい感じ ♪ 名曲の萌芽を感じさせるだけに、シューベルトが途中で筆を置いたのが残念だ…。
シューベルトは最後の反復記号のあと何かを書くつもりだったのか?…あるいは、断念したのか?… そもそもが下書き…というか実験のようなものだったのか?…謎のままだ。
小澤和也氏(↓)によると、シューベルトはこのソナタで、ベートーヴェンのような「主題労作」を懸命に試みながらも途中で断念したのではないか?…とのこと。
✏️【中期のシューベルト3】ピアノソナタ嬰ハ短調(音楽ノート)
そして、音楽家たちの間では、この断片が提示部なのか、提示部+展開部なのか…といった議論があって、決着はついていないようだ。この辺りは下記記事に詳しい。
現時点では「補筆完成版」と言えるようなものはないらしい。バドゥラ=スコダでさえ、(アドリブの)終結和音を付け足すという提案をしている(ヘンレ版)だけのようだ。
YouTube で探してみた範囲では、Alwin Bär というピアニストが補筆したものを自ら録音している音源があった(後述)。第1楽章のみ。
上述の記事によると、佐藤卓史氏が展開部と再現部を補筆したものを演奏しているようだが、残念ながら YouTube では音源を見つけることができなかった。
断片なので音源は少ないが、それでも 4つほど見つけたので、何となく気に入った順番に並べておく。
マッシミリアーノ・ダメリーニ(Massimiliano Damerini、伊、1951 - 2023)という名前は初めて聞くが、ヘルムート・ラッヘンマンの作品(「終止音」)を初演したり、ダルムシュタット夏季現代音楽講習会の講師を務めていた人だそうだ。音楽の輪郭をくっきりと聴かせてくれる、溌剌とした演奏が好印象 ♪
♪ Piano Sonata in C-Sharp Minor, D. 655 (fragment)
アルウィン・ベーア(Alwin Bär、オランダ、1941 - 2000)の補筆版。
補筆内容は下記記事にある。シューベルトの「断片」を提示部+展開部とみなし、再現部を再構成し、コーダ 19小節を作って完成させてあるようだ。
✏️シューベルト ピアノソナタ嬰ハ短調 D655 バール補筆完成版世界初録音 (No.1308)(Piano Music Japan)
参考
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