2025年1月9日木曜日

🎹K.S.ソラブジ 1892-1988 超絶・長大なピアノ作品群、よく分からない…(^^;)?

《鍵盤音楽史》の中で、まだ探索していない作曲家を少しずつ調べてお気に入りの演奏などを見つけようと思っている。まずは、名前は知っているがほとんど聴いたこともない作曲家から始めることにした。

今回はカイホスルー・シャプルジ・ソラブジ(Kaikhosru Shapurji Sorabji、英、1892 - 1988)。インド系の父とイングランド人の母を持つ作曲家、ピアニスト、評論家である。

バルトーク、シマノフスキー、ストラヴィンスキーなどより 10歳ほど若く、プロコフィエフやモンポウとほぼ同世代である。




ソラブジは、ピアノと作曲をほぼ独学で学び、20代半ばに至っても作曲家よりもむしろ音楽評論家として身を立てることを考えていたようである。ブゾーニに見出され、作曲・演奏活動を開始する。

現在知られる最初の作品は1915年(22歳)であるが、96歳で亡くなるまでに 100以上の作品を残している。ピアノ作品が多くを占めている。

若い頃には、バルトーク、スクリャービン、ドビュッシー、ラフマニノフ、レーガー、シェーンベルク、ラヴェル、マーラー等に傾倒した。ブゾーニやバッハの影響も受けている。


その作品の特徴は「超絶と長大」に集約されるかも知れない。その他、ソラブジを語るキーワードとしては「対位法、変奏、夜想曲、持続低音、極限」など…。

ピアノ作品の楽譜も普通に多段楽譜が使われることが多い。

現代音楽作曲家として、メシアンやブーレーズなどとともに語られることも多いが、一方で「ソラブジの使う音楽要素としては 19世紀までに音楽史に登場しなかったものは何ひとつない」という辛辣な意見もあるようだ。

前衛でもなく(無調でもなく)、その反動としての後期ロマン派回帰でもなく、音楽史上の位置付けは難しく、戦後前衛への影響もほとんどないと言われている。

長大なピアノ独奏曲という意味で、フィニスィーの「音で辿る写真の歴史」(1995-2001:6時間)、ジェフスキーの「道」(1995-2003:10時間)などに影響を及ぼしたとは言えるかも知れない。


多くのピアノ作品(ピアノ協奏曲 8曲、ピアノソナタ 6曲、ピアノ交響曲 8曲、トッカータ 5曲など)があり、また長大な作品が多いので、代表曲と言われていて YouTube にいい音源があるものを選んで聴くことにした。

聴いたものは下記(3. と 4. は一部のみ)。

  1. ピアノソナタ第1番 KSS20:20分
  2. 超絶技巧百番練習曲 KSS66:8時間15分
  3. オプス・クラヴィチェンバリスティクム KSS50:4時間45分
  4. 「怒りの日」によるセクェンツァ・シクリカ KSS71:8時間23分


先に結論を言うと、あまり好みではない、よく分からない。

音楽は「分かる・分からない」ではないと思うが、この人の作品は意図や何を言いたいのかが分からないし、ピアノに拘っている人の割にはピアノの音響の美しさを、それこそ「極限」まで引き出しているとも思えない…。

ただ、初めてで、ザッと聴いただけなので、本当のところはどうなんだろう?…とも思う。聴く方にも相当な覚悟?を求める作品・作曲家なのかも知れない。

ちなみに、マルカンドレ・アムランは、「超絶技巧百番練習曲」の冒頭 18曲の校訂版を作成したあと、「単に難しい技巧の羅列としか感じられなくなった」という理由でそれ以上の校訂を放棄したそうだ。何となく分かるような気がする…(^^;)。


1. ピアノソナタ第1番 KSS20:20分
(Pf:マルカンドレ・アムラン)



2. 超絶技巧百番練習曲 KSS66:8時間15分
(Pf:フレドリク・ウレーン)

食休みのゴロゴロ時間やこの記事を書いたりしながら、ぜんぶ聴いた…が、途中からは「苦行」みたいなものになった…(^^;)。「ながら聴き」して、ちょっといいかも…と思ったのは No.10、18、20、33 くらいかな?






3. オプス・クラヴィチェンバリスティクム KSS50:4時間45分
(Pf:ジョン・オグドン)



4. 「怒りの日」によるセクェンツァ・シクリカ KSS71:8時間23分
(Pf:ジョナサン・パウエル)

グレゴリオ聖歌のメロディを使った 27の変奏曲…と言うほど単純ではないようだが、それはさておき、主題となる旋律があるからか、この 4作品の中では比較的聴きやすかった。

後述の参考記事(★印)に、パウエルによる特徴的な曲(変奏)の分類と解説が紹介がしてあり、これを参考に抜粋して聴いた。

"XIX. Quasi Debussy"(ドビュッシー風に)のようなオマージュ曲も何曲か(ゴドフスキー、アルベニス、アルカン)ある。最後の第27変奏は 5つのフーガ(2声〜 6声)になっていて、ここは部分的にはちょっと面白い。

♪ Sorabji: Sequentia Cyclica:アルバム


ソラブジに関するネット情報をいくつか紹介しておく。

一番、詳細で信憑性が高いと思われるのは、大井浩明氏のブログ記事(↓ 2017年)に掲載されているアリステア・ヒントン氏(英ソラブジ・アーカイヴ)の作品・作曲家解説と野々村禎彦氏の補足記事。



「現代音楽とマーラーと⋯」というブログの記事も参考になった。






✏️ソラブジ, カイホスルー・シャプルジ(PTNAピアノ曲事典)


✏️超絶技巧百番練習曲(Wikipedia)



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