その中で、モンポウが発見したという「金属和音」というのが気になって、少し調べてみた。モンポウのピアノ曲を理解するための重要な鍵の一つであるようだ。
フェデリコ・モンポウ、バルセロナの鐘工場にて、1915年頃 |
上の写真は、モンポウが子供の頃から入り浸っていた鐘の製造工場(祖父と叔父が経営)での一枚。下記記事からお借りしたもの。
✏️フェデリコ・モンポウ : 原点回帰・プリミティズム・鐘の音他(諏訪和慶|クラシック・ギターリスト)
ここに「鐘」との深い関わりが書かれている(↓)。
「鐘の音のような響きはモンポウの音楽の特筆すべき特徴の一つです。…幼少時代に聞いたり熱心に観察した鐘の音はモンポウの音楽に多大な影響を与えました。…(モンポウの作曲法は)あたかも鐘を一つずつ注意深く調整するかの様に、本当に上質な音のみ選択されて五線譜上に配置されていった様な感じがします」
椎名亮輔氏の近著『フェデリコ・モンポウ: 静寂の調べを求めて』(↓)に、「金属和音」に関する説明がある。
一部を引用させて戴くと…。
「フェデリコ(モンポウ)は、祖父と叔父の経営する鐘鋳造工場に子供の頃から入り浸り、製造中で調整されつつある鐘の音に耳を傾け、その響きの微妙さ・複雑さに目を(耳を)みはったのだった。その金属の奏でる多様な響きの印象が醸成して、後年『金属和音』となって彼の手から現れ出ることになる」
モンポウ自身の1910年冬の日付(17歳)のメモが残っており、下図のような和音とともにこんなこと(↓)が書かれている。本人はこの和音を「海岸地帯」と命名したようだ。
「海岸地帯…/この和音は私の音楽のすべてだ。遠くから聞こえる騒音のなかに、私は奇妙な和声=調和 harmonia を感じた。海に面した岸辺で、打ち寄せる波の静かなリズムが金属と労働の神秘的な音響と混ざり合う…」
「金属和音」が使われている例をいくつか上げておく。
「ひそやかな音楽」Música Callada 第1巻第5曲
「歌と踊り」Cançons i danses 第3番
「魅惑」Charmes 第5曲
「街はずれ(郊外)」Suburbis 第1曲「道、ギタリストと年老いた馬」
上記の曲については、スペイン音楽のスペシャリスト、ピアニストの上原由記音さん(琉球大学名誉教授)のモンポウに関する論文(↓)を参考にさせて戴いた。
✏️モンポウ研究序説 - その生涯とピアノ作品の演奏解釈法(琉球大学学術リポジトリ)
ここに「金属和音」の使用例(↓)が、楽譜付きで紹介してある。
参考:上原由記音氏のプロフィール
パリにて、巨匠ジャック・フェヴリエ氏に師事しモーツァルト、ドビュッシー、ラヴェル、プーランクの作品を主に学ぶ。 フェヴリエ氏の没後、スペイン人の作曲家アントニオ・ルイスーピポと出会いスペイン音楽を学ぶ。
アリシア・デ・ラローチャ女史にもレッスンを受け、故フェデリコ・モンポウ氏の作品については彼の夫人のカルメン・ブラーボ女史より薫陶をうける。
出典:✏️上原由記音プロフィール
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