《鍵盤音楽史:バッハ以前》の作曲家 12人目は、ジャン=アンリ・ダングルベール(Jean-Henri d'Anglebert, 1629-1691)。
クラヴサン(チェンバロ)全盛期、17世紀後半のフランスで活躍した音楽家の一人。シャンボニエールの跡を継いでヴェルサイユ宮殿のクラヴサン奏者となる。
ジャン=アンリ・ダングルベールは、音楽的な環境に恵まれた裕福な家庭に生まれる。義兄フランソワ・ロベルデはオルガニストであった。
1660年にルイXIV世の弟、オルレアン侯爵のクラヴサン奏者となり、1668年にシャンボニエールの跡を継いで、ルイXIV世のヴェルサイユ宮殿のクラヴサン奏者に任命された。
ダングルベールの作品はほとんどがクラヴサン曲で、オルガン曲も数曲残っている。
死の前年 1689年に出版された『クラヴサン曲集 Pièces de clavecin』が唯一の出版楽譜である。これには 4つ調性(ト長調、ト短調、ニ短調、ニ長調)の組曲が収録されている。
恩師への追悼曲「シャンボニエール氏のトンボー」も含まれている。
これ以外に 2つの手稿が残されており、リュート作品を編曲したものなどが含まれる。
『クラヴサン曲集』に含まれる 4つの「組曲」は、前奏曲(最初の3つの組曲)、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグと続くのだが、そのあとにガヴォット、メニュエット、ガリヤルドなどの舞曲や、リュリのオペラからの編曲などが含まれている。
ト長調の組曲は合計17曲、ト短調の組曲は21曲、ニ短調の組曲は13曲、ニ長調の組曲は8曲からなっている。これは、当時の「曲集」のスタイルであり、奏者はこの中から任意に「選曲」して演奏していたと思われる。
また、ダングルベールの「前奏曲」は "unmeasured prelude"(↓ 拍節なしの前奏曲)となっており、テンポなどは奏者の自由に任されていたようだ。
もうひとつこの曲集で重要なのは、"table of ornaments"(↓ 装飾記号表)である。J.S.バッハは自分の音楽帖に書き写しており、ラモーなどにも影響を与えたと思われる。
以上、主な出典は下記。
✏️ジャン=アンリ・ダングルベール(Wikipedia)
✏️Jean-Henri d'Anglebert(Wikipedia/英語)
✏️ジャン・アンリ・ダングルベールのクラヴサン組曲を聴く(私的CD評)
YouTube にチェンバロ曲全集の音源(↓)がある。
5つの組曲とイ短調の小品が含まれる。演奏はクリストフ・ルセ(Christophe Rousset)。元の CD は下記。
例によって?全曲演奏を通して聴いても、なかなかお気に入り曲を見つけるのは難しいので、今回は現代のピアニストの選曲眼(耳)?を信じたいと思う…(^^;)。
今回、ピアノ演奏で良かったのは、一つは昨日の記事《ハイク・メリクヤンの弾く現代ピアノ曲はちょっといいかも ♪》に書いたメリクヤンの演奏(↓)。
そして、アレクサンドル・タローが "Versailles (French baroque music) "(ヴェルサイユ)というアルバムに選んでいるダングルベールの 5曲。
YouTube には CD 全曲(ラモーやクープランなども含む)のプレイリスト(↓)がある。
収録曲(ダングルベール)
※ ( )の数字はCDのトラック番号
- (7)リュリの「ヴィーナスの誕生」によるサラバンド「神の世界」
- (14)クラヴサン小品集 「シャコンヌ」 ハ長調
- (15)リュリの「カドミュスとエルミオーヌ」からの序曲
- (17)クラヴサン小品集 「オルガンのためのフーガ・グラーヴェ」
- (21)クラヴサン小品集「スペインのフォリアによる変奏曲」
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