「作曲遊び」をやるにあたって、ソルフェージュ代わりとはいえ、一応「作曲」という、これまでやったことのないものをやるわけなので、何か1冊くらい本を読んでみようと思った。
とりあえず図書館で棚を眺めて、選んだのが『新実徳英の作曲入門』という本。新実徳英さんは合唱曲などたくさんの作品を作っていて、尾高賞も受賞されているようだ。
この本は、「古典に学ぶ」「僕の作曲法」「添削講座」「音楽の背景にあるもの ー 宇宙観・世界観」という4部構成になっているが、いちばん参考になったのが最初の「古典に学ぶ」の章。
バッハからラヴェルまで、「大作曲家たちの小品から美しいメロディーを取り上げ、その美しさの理由を考え」る(解説する)という内容で、いろいろとヒントになりそうだ。
その前に「序文」と「はじめに」から、気に入った箇所を少しだけ抜き書きしておく…。
「…『創造的』な何かに近づくこと…実は…『模倣』から始めるのです」
「いろいろな種類の佳い旋律をたくさん聴き、たくさん感動し、そしてたくさん貯えること」
「音楽=作曲の秘密」を知りたくなったら、その曲を「分析」してみること。しかし、それでは「結局なにもわからない」「美の真実は記述することができない」…。
では、「曲の良し悪しはなぜわかる?」のか。
…「感動するためには、その音楽の語法・様式にある程度以上親しんでいる必要がある」、そして「直観力を育てること」が大事。それが、鑑賞力、ひいては作曲力につながる。
「音楽を聴く、奏する、作る、そして考える」これらは「自己啓発の活動」である。
以下、使えるかも…と思ったヒント集(なんとなく気に入った順)。
●和声学の本を読むのが面倒なら、賛美歌やバッハのコラールを毎日弾いてみること。
●一つの音は、それと組み合わせる和音によって、多様な色彩を持つ。
ある音(とくに和声外音)が様々な和音と合わさると、どういう響き・色彩を持つか体感して知ることは重要。例えば、ハ長調の「ドミソシ」は、「ドミソ」の和音に「シ」という和声外音が加わったものだが、この「シ」に「レファラ」「ミソシ」「ファラド」等の和音を合わせると、和音全体の響きと同時に「シ」の音のニュアンスも変わるはず。
●バスが旋律を、音楽を支えている。バスの動きを大事にする。旋律のラインとバスのラインの対比に注目する。
●オクターブ違う音は別の音。(ブラームスの交響曲大第4番の例)
※ペルトの「鏡の中の鏡」も…
●分析するいろんなこと。
・和声の進行
・旋律線(上行・下行など骨格となるライン)
・和声外音や刺繍音
・4度や6度などの跳躍
・バスの進行
・リズム(の繰り返し、変化…)
・同じ音の反復による効果
・音域の使い方(山場まで広音域をあえて使わない等)
・小節の構造(組み立て方)
●いい曲の和声進行を味わう。(そして、真似する?)
一つの和声進行はたくさんの旋律(の可能性)を「内包」している。
例えば、バッハの〈シチリアーノ〉(BWV1031より)のメロディーが乗っている「和声とバスの進行」を使って、元の旋律とは異なるたくさんの旋律を作ることができる。
そのたくさんの可能性の中で、バッハが選んだ旋律は別の旋律と何が違うのか?バッハの旋律を魅力的なものにしているのは何か?を考えて、味わってみること。一例として、バッハの旋律にある「6度の跳躍」を外してみると、古典(バロック)らしさが減ってロマン派に近づく感じがするはず…。
●「努力を継続する」という才能。
ベートーヴェンは、モーツァルトのように、いきなり完成された旋律を作る才能には恵まれなかった。しかし、彼には「ナニカガチガウ」という内なる声を聞き逃さず、音楽を完全な形に磨き上げる、その努力を惜しまないという才能があった。
我々(凡人)が見習うべきはベートーヴェンのような「努力の継続」。いろんな可能性の中から「これだ!」というものを見つけるまで、磨き上げる努力を続けるべし。
●磨き上げるためのヒント。
・平凡な音列でも、しかるべきリズムが与えられると、美しい旋律が生まれることがある。
・シンコペーションは使い方によっては絶大な効果をもたらす。
・ポイントとなる箇所で半音階の上昇・下降。
・ベクトルの向かう方向、旋律の頂点を意識したライン。
●特徴的な和音を知ること。転調の仕方なども。
・転回形
・ドッペルドミナント
・ナポリの和音
・ドイツ6度(ジャーマン6th)
・7th、9th(七の和音、九の和音)
●その他
・統一感と特徴を持たせる部分とのバランス
・単位は小さいが(動機)まとまりは大きい(息の長いフレーズ)
・動機的な(ジャジャジャジャーン)もの→展開
・メロディー的なもの(歌:感情が入りやすい)
・ラヴェルの〈ボレロ〉は旋律とリズムの力を学ぶ格好の材料である
…以上、とりとめもなく、ヒント集でした…。
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