2026年8月12日水曜日

🎹M.クレメンティ②:グラドゥス・アド・パルナッスム 100曲を聴いてみた

クレメンティ(Muzio Clementi、伊、1752 - 1832)の「グラドゥス・アド・パルナッスム」といえば、ドビュッシーの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」(1906年『子供の領分』第1曲)で皮肉られたことで有名なのかも知れないが…。

この練習曲集は、ベートーヴェンやショパンからも高く評価されていた(ピアノ奏法の練習曲として?)…という説もあり、とにかく全 100曲を聴いてみることにした。

ちなみに、現在出版されている「グラドゥス・アド・パルナッスム」の楽譜のほとんどは、カール・タウジヒが機械的な練習曲を中心に 29曲を選んだもの。これが、後世の誤解の元になっていて、ドビュッシーもこれに影響されていたのでは?…と思われる。




「グラドゥス・アド・パルナッスム」"Gradus ad Parnassum" Op. 44 は、クレメンティの晩年(65歳〜74歳)に 3巻に分けて出版されたもの(1817年、1819年、1826年)。

クレメンティはピアノという楽器の発展に力を注ぎ、ピアノ音楽の可能性を最大限に発揮できるような奏法の開発にも取り組み、ピアノを普及させるための多くの作品も出版した、その生涯の集大成のような練習曲集と言っていいかも知れない。

副題に、"l'art de jouer le piano-forte, démontré par des exercices dans le style sévere et dans le style élegant"「ピアノ演奏の技法、厳格なスタイルと優雅なスタイルの練習曲による実証(実例)」とあるように、ピアノ奏法の色んなスタイル(の可能性)のショーケースのようなものを意図していたのではないかと思われる。


100曲の中には、まさに練習曲という感じのものもあるが、ソナタの 1楽章にしてもいいような曲があったり、フーガやカノンがあったりと、実に多彩である。その中でとくに目立つのは「組曲」の存在だ。

3曲〜6曲で構成される「組曲」が 13も入っている。第45番の "Introduzione: Andante malinconico - Fuga: Allegro moderato" を 2楽章構成の組曲と考えるならば 14の組曲、100曲中の 58曲が組曲を構成する楽章に当てられている。


例えば、第12〜15番は "Suite of 4 pieces" として、次のような構成となっている。

I. Preludio: Allegro
II. Fuga: Allegro non troppo
III. Adagio sostenuto
IV. Finale: Allegro

参考までに、組曲となっている曲番号は下記の通り。

9-11、12-15、25-27、37-41、42-44、51-55、56-58、60-63、66-70、71-76、77-81、82-87、88-92


1865年頃に編纂された「タウジヒ版」の 29曲の元の曲番号は次のようになっているが、組曲に含まれるのは 9曲のみ、それもテンポの速い "Finale" などが多い。

16、17、12、50、95、87、9、3、19、5、28、31、2、63、77、78、7、36、34、24、44、27、30、23、47、65、76、21、22

曲順も含めて、明らかにクレメンティの意図は無視されていると考えられる。タウジヒの意図はこんな感じ(↓)?→出典✏️クレメンティ グラドゥス・アド・パルナッスム (zen-on piano library)(アマゾン)

No.1 右手5本の指の全調での練習
No.2 No.1の右手と対をなす左手の練習
No.3 アルペッジョのジグザグ進行の練習
No.4 特殊な運指による練習
No.5 5連音符とポリリズムの練習


「グラドゥス・アド・パルナッスム」の音源は少ない。

アレッサンドロ・マランゴーニ(Alessandro Marangoni、伊、1979 - )というピアニストが全曲録音の CD を出している。これが一番有名なようだ。






参考までに、100曲全曲を聴いてわりと気に入った曲の番号は、2、5、15、42、43、45、48、54、57、69 あたり。個人的な趣味として、フーガが多くなっているかも…(^^;)。


あと、YouTube にダニエル・ラヴァル(Danielle Laval、仏、1939 - )というピアニストの、全曲録音音源もあった。

何曲か聴いてみたが、マランゴーニの方が私の好みに合っている。


全体的な感想としては、聴いていて面白いものもあるが、じっくり聴きたいと思うような曲はあまり見つからなかった。

ただ、上に書いた「組曲」を一つ一つ取り出して深く掘り下げたような演奏があれば、また違う印象なのかも知れない…とは思った。


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