カール・マリア・フォン・ウェーバー(Carl Maria von Weber、独、1786 - 1826)は、ロマン派初期の作曲家、指揮者、ピアニスト。歌劇を中心としてロマン主義を推進し、とくに歌劇『魔弾の射手』によってドイツ・ロマン派オペラの様式を確立し、ワーグナーへの道を開いた。
ピアノ作品としては「舞踏への勧誘」以外はあまり有名ではない?が、4曲のピアノソナタは、ベートーヴェンからシューベルトにつながる流れを感じさせるいい作品である。3曲のピアノ協奏曲も魅力的。とくに「小協奏曲」Konzertstück は演奏機会が多いようだ。
最初に簡単な年表を…。39歳の若さで亡くなったことは知らなかった。今年 2026年は没後 200年。
- 1786 ドイツ・リューベック近郊のオイティーンに生まれる。
- 1787 父親が劇団を結成しドイツ、オーストリア全土を回るようになる。
- 1812(26歳)ピアノソナタ 第1番 Op.24 ハ長調
- 1813(27歳)プラハ歌劇場の芸術監督に就任し低落していた歌劇場を再興。
- 1814 - 16(30歳)ピアノソナタ 第2番 Op.39 変イ長調
- 1817(31歳)女性歌手のキャロライン・ブラントと結婚。
- 1817(31歳)ザクセンの宮廷楽長に任命されドレスデン歌劇場に移る。自作によってドイツ・オペラを根付かせることに成功。当時最高のピアニスト(10度を簡単につかめたらしい…)としてもヨーロッパ各地で演奏を行う。
- 1819(33歳)華麗なロンド「舞踏への勧誘」Op.65 変ニ長調
- 1821(35歳)ベルリンで『魔弾の射手』初演が大成功・大反響。
- 1822(36歳)ピアノソナタ 第4番 Op.70 ホ短調
- 1826(39歳)ロンドンのコヴェント・ガーデン歌劇場の依頼により、英語によるオペラ『オベロン』を作曲。
病苦(結核)を押して渡英し、自ら指揮棒を振り大成功を収めたが、その後病状が悪化し、6月5日ロンドンで客死(39歳)。
✏️カール・マリア・フォン・ウェーバー(Wikipedia)
✏️At the Piano With Carl Maria von Weber(Interlude)
【ピアノ独奏曲】
ウェーバーのピアノ作品はそれほど多くない。CD の録音や楽譜などもそれなりにあるので、それを元に代表曲と思われるものをリストアップしてみた。
ヘンレ社と全音の「ウェーバー・ピアノ曲集」的な楽譜と、ギャリック・オールソンの CDアルバム "Weber: Complete Piano Sonatas"(決定盤・名盤と言っていいと思う ♪)に入っている曲を合わせると次のようになる。(それぞれの収録曲は文末に掲載)
聴いた感想「🌸:気に入った 🌼:やや気に入った」をつけてある。4曲のソナタはどれもそれぞれに魅力的な作品だと思った。
- ビアンキのアリア「こちらへおいで、美しいドリーナ」による7つの変奏曲 Op.7 ハ長調:1807
- モメント・カプリッチョーソ Op.12 変ロ長調:1808
- 大ポロネーズ Op.21 変ホ長調:1808
- ピアノソナタ 第1番 Op.24 ハ長調:1812(26歳)🌼
第4楽章は「Perpetuum mobile(常動曲)」🌸として有名 *1 - ロシアの主題「美しいミンカ」による9つの変奏曲 Op.40 ハ短調:1815
- ピアノソナタ 第2番 Op.39 変イ長調:1816(30歳)🌸
- ピアノソナタ 第3番 Op.49 ニ短調:1816(30歳)🌼
- ジプシーの歌による7つの変奏曲 Op.55 ハ長調:1817
- 華麗なロンド「ざれごと」Op.62 変ホ長調:1819
- 華麗なロンド「舞踏への勧誘」Op.65 変ニ長調:1819(33歳)🌼
- 華麗なポロネーズ「笑いこける」 Op.72 ホ長調:1819
- ピアノソナタ 第4番 Op.70 ホ短調:1822(36歳)🌼
*1 ソナタ第1番の第4楽章 "Rondo. Presto" を、ウェーバーは "L'infatigable"(疲れ知らず)と名付けたが、のちにシャルル=ヴァランタン・アルカンが「Perpetuum mobile(常動曲)」という通称で定着させた。ブラームス、チャイコフスキー、ゴドフスキーらによる編曲がある。
ギャリック・オールソンで聴いたソナタの感想を少し。
第1番はいきなりベートーヴェンっぽさを感じる作品。第4楽章は聴いた途端に惹きつけられる吸引力というか、音楽の勢いを感じる。のちの多くの作曲家が編曲した気持ちも分かる。
ちなみにこの時点で、世の中にはクレメンティの 70曲のソナタ、ベートーヴェンの 27曲のソナタなどが広く知られていたようだ。
第2番は一番気に入ったのだが、どうも以前(学生時代?)に聴いたことがある作品だったように思う。あちこちに聴き覚えのあるメロディーが登場する。
解説によると、結婚直前のフィアンセがいた頃に作られた作品なので、その雰囲気が反映しているのでは…ということのようだ ♪
第3番の第1楽章は "Allegro feroce"(荒々しく)で始まるだが、すぐに優しく美しいメロディー(第2主題?)が登場し、その後も楽しげなフレーズなどが続く展開が面白い ♪
比較的単純な旋律を華麗に響かせるところが、劇場音楽的・管弦楽的なものを感じさせる。ピアノ作品としてはヴィルトゥオーゾ的かな…。
第4番の第1楽章のシリアスな感じは個人的には好きなのだが、この頃から「作風に暗い影が漂い始め」…と解説している記事(Wikipedia)もあり、その例にこの第1楽章の「厭世的」な雰囲気(…とはまったく思わないが…)が挙げられていたりする。
第2楽章以降は、私の思っている「ピアノソナタ」とちょっと違うなぁ…という感じもちょっとした。劇場音楽をソナタという形式に、オーケストラの響きをピアノ 1台に押し込めた…とでも言おうか?
ベートーヴェンのピアノソナタともシューベルトのピアノソナタとも違う世界…と思って楽しんだ方が良さそうなところもある ♪?
私の舌足らずな感想メモを補足する意味でも?、なるほど!と思った記事があったので、一部引用させて戴く。タイトルの絵文字は凄いが…(^^;)…内容には納得した ♪
✏️✝️ウェーバー命日✟第8回ショパン・コンクールの覇者💮ギャリック・オールソン🦸🏻ピアノ・ソナタ全集💯(クラシック音楽ぶった斬り)
「録音される機会が少ないレパートリーながら、ベートーヴェンとシューベルトの間を繋ぐピアノ・ソナタの一例としても興味深く…」
「収録されたソナタは単一のテーマを展開する形式ではなく、むしろオペラの序曲や間奏曲、アリアや重唱などをソナタ形式に則ってピアニスティックにまとめた一種のパラフレーズであり、この点でフランツ・リストの先駆的存在ともいえる」
「音楽自体は深刻さを帯びないが、情景描写的な旋律と疾走感あふれるパッセージを巧みに対比させた即興的手法は卓越しており、オペラ作曲家としての個性が際立っている」
ギャリック・オールソン以外にも、リヒテル(3番)、若い頃のレオン・フライシャー(4番)、ポール・ルイス(2番)などが弾いている。あと、ソナタ全曲の録音もいくつか見つかった。知らないピアニストも何人か…。
気に入った演奏をいくつか挙げてみると…。
ポール・ルイス
ウェーバーの第2番は Track No.1-4
ティエリ・ド・ブリュノフ(Thierry de Brunhoff、仏、1934 - :1974〜修道士)
ウェーバーの第2番は Track No.4-7
ヘイミッシュ・ミルン(Hamish Milne、英、1939 - 2020)
【ピアノ協奏曲】
ピアノ協奏曲は「小協奏曲」を含めると 3曲書いている。どの曲も聴き応えがあって魅力的な作品となっていると思う。ウェーバーは管弦楽の方が得意だったのかも…。
- ピアノ協奏曲 第1番 Op.11 ハ長調:1810
- ピアノ協奏曲 第2番 Op.32 変ホ長調:1811
- コンツェルトシュテュック(ピアノ小協奏曲) Op.79 ヘ短調:1821
YouTube で見つけた全曲録音は 3つ。どれもなかなかいい演奏だと思った ♪ あえて選ぶとすれば、オピッツかな…♪?
ゲルハルト・オピッツ(Gerhard Oppitz、独、1953 - )
ベンジャミン・フリス(Benjamin Frith、英、1957 - )
なお、華麗なポロネーズ「笑いこける」 Op.72 にリストがオーケストラを付けたものも収録されている。
ペーター・レーゼル(Peter Rösel、独、1945 - )
単独の音源を探すと、なぜか「小協奏曲」"Konzertstück f-moll Op.79" が圧倒的に多い。Op.79 は人気曲なのかも?
ロベール・カサドシュ、フリードリヒ・グルダ、グレン・グールド、アルフレート・ブレンデル、ニコライ・デミジェンコ、ミハイル・プレトニョフ、アレクセイ・ヴォロディン、…。
探索している途中でこんな記事(↓)を見つけた。聴き比べしている。
この記事によると、上に挙げた以外に、アンネローゼ・シュミット、タン、マルティン・ヘルムヒェンあたりが録音しているようだ。
また、この記事によると、この Konzertstück は物語になっていて、「バルコニーで一人遠くを眺める婦人。彼女の愛する騎士は十字軍としてパレスチナへ遠征している。不安に苛まれる日々…。そして夫は無事帰還して再会、愛の勝利を宣言する」…みたいな内容が 4楽章で構成されているそうだ。
なんだか、オペラの楽曲を再編成した組曲みたいな作り…と思えばいいのかな?
この作品の人気の秘密はこういう「物語」の存在なのかも…。あと、16分くらいというコンパクトさもコンサートで取り上げられやすい理由?
気に入った演奏をいくつか挙げておく。ブレンデルの演奏が好きかな…。
アルフレート・ブレンデル(クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団):1980年度のレコード・アカデミー賞を受賞
ミハイル・プレトニョフ(弾き振り:ロシア・ナショナル管弦楽団)歯切れはいいが、やや速すぎる?ちょっと奇を衒っている感じも?
♪ ウェーバー:ピアノ小協奏曲/《舞踏への勧誘》序曲、他(アルバム)
Konzertstück は Track No.1-4
アレクセイ・ヴォロディン(Dima Slobodeniouk 指揮 SWR Symphonieorchester)
マルティン・ヘルムヒェン(クリストフ・エッシェンバッハ指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)2021年リリース
【Perpetuum mobile(常動曲)の編曲】
原曲(ウゴルスキの高速演奏)
ブラームス(原曲の右手の音形を左手で弾く)
チャイコフスキー
ゴドフスキー
参考【楽譜に見る代表曲】
📘ウェーバー: ピアノ作品選集/ヘンレ社/原典版(Amazon)
- Momento Capriccioso B flat major op. 12
- Grande Polonaise E flat major op. 21
- Air russe varié (Schöne Minka) c minor op. 40 (37)
- Piano Variations on a Gipsy Song C major op. 55
- Rondo brillante E flat major op. 62
- Invitation to the Dance D flat major op. 65
- Polacca brillante E major op. 72
📘ウェーバーピアノアルバム(Amazon)
✏️ウェーバー:ピアノ・アルバム(全音)
- 華麗なる大ポロネーズ Op.21
- 華麗なるロンド Op.62
- モーメント・カプリチオーゾ Op.12
- ビアンキのアリア〈こちらへおいで、美しいドリーナ〉による7つの変奏曲 Op.7
- ロシア民謡〈美しきミンカ〉による9つの変奏曲 Op.40
- 華麗なポラッカ「笑いこける」(華麗なるポロネーズ)Op.72
- 舞踏への勧誘 Op.65
参考【 CD に見る代表曲】
ギャリック・オールソン(Garrick Ohlsson、米、1948 - )『ウェーバー:ピアノソナタ全集』(1988年録音)
✏️Complete Piano Sonatas(Hyperion)
♪ Weber: Complete Piano Sonatas(アルバム)
- Piano Sonata No 1 in C major, J138 Op 24
- Piano Sonata No 2 in A flat major, J199 Op 39
- Aufforderung zum Tanz, J260 Op 65
- Piano Sonata No 3 in D minor, J206 Op 49
- Piano Sonata No 4 in E minor, J287 Op 70
- Rondo brillante, J252 Op 62
- Momento capriccioso, J56 Op 12
【関連記事】


0 件のコメント:
コメントを投稿