「父の友人ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767)の作曲様式を受け継ぎ、装飾や走句を多用する『ギャラント様式』、唐突な雰囲気の変化や大胆な転調によって感情を直接に表現しようとする『多感様式』を特徴としている。古典派音楽の基礎を築き、ハイドンやベートーヴェンにも影響を与えた」というのが、Wikipedia などでの定型的な紹介文。
ここでは鍵盤作品のみを取り上げるのだが、それでも膨大な数の作品を残している。独奏作品で 630曲以上、コンチェルトも 52曲ほどあるそうだ。
ソナタを探索して、その他のロンド、幻想曲などのソロ曲を探索して、協奏曲を探索して…とやっていたら 1カ月近くかかってしまった…(^^;)。
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まず、C.P.E.バッハの概略年譜を、ソナタ集の出版年と合わせて整理した。
Early years: 1714–1738(0-24歳)
- 1714年 3月8日、ドイツのヴァイマルに生まれる。名付け親はテレマン。
- 1723 (9歳) 父J.S.バッハがライプツィヒのトーマス教会カントールに就任したことに伴い、同地へ移住。父から直接音楽の手ほどきを受ける。
- 1731 (17歳) ライプツィヒ大学に入学。法律を学ぶ。
- 1734 (20歳) フランクフルト(アン・デア・オーダー)大学へ転籍し、引き続き法学を学ぶ。大学で音楽活動の中心人物となり、作曲を開始する。
Berlin years: 1738–1768(24-54歳)
- 1738 プロイセン王国の皇太子(のちのフリードリヒ大王)に仕えることが決定
- 1740 首都ベルリンおよびポツダムの宮廷チェンバロ奏者となる
- 1742 (28歳)「プロイセン・ソナタ」"Prussian" sonatas, Wq. 48 を出版
- 1744 (30歳) "Württemberg" sonatas, Wq. 49
- 1747 名作「無伴奏フルートのためのソナタ イ短調(Wq.132)」を作曲
- 1753 (39歳)『正しいクラヴィーア奏法への試論』第1部を出版(第2部は1762年出版)
- 1753 "Probestücke" sonatas, Wq. 63
- 1760 "Reprisen" sonatas, Wq. 50
- 1761 "Fortsetzung" sonatas, Wq. 51
- 1763 "Zweite Fortsetzung" sonatas, Wq. 52
- 1766 "Leichte" sonatas, Wq. 53
- 1767 宮廷を辞し、ハンブルクの音楽監督およびカントール(合唱長)に就任
Hamburg years: 1768–1788(54-74歳)
- 1770 "Damen" sonatas, Wq. 54
- 1773 (59歳) 自伝的な回想録を出版し、当時の音楽界の貴重な資料を残す。
- 1779–87 "Kenner und Liebhaber" sonatas, Wq. 55–59, 61
- 1788 (74歳) 12月14日、ハンブルクにて逝去
C.P.E.バッハの作品番号には 2つある。併記されることが多いようだ。
- Wq(ヴォトケンヌ番号):1905年にベルギーの音楽学者アルフレート・ヴォトケンヌ(Alfred Wotquenne)が作成した目録番号
- H(ヘルム番号):1989年にアメリカの音楽学者ユージン・ヘルム(E.Eugene Helm)が出版した目録の番号
C.P.E.バッハの鍵盤作品の概要は下記の通り。
- ソロ曲:630曲以上
- ソナタ:約 150曲
→《🎹C.P.E.バッハ①:150曲あるピアノ(鍵盤)ソナタから代表曲を探す…》
→《🎹C.P.E.バッハ②:ピアノソナタ50数曲を聴いてお気に入りを探す》 - ロンド 15曲
- ファンタジア(幻想曲)12曲
- 変奏曲 12曲
- その他 多数
→《🎹C.P.E.バッハ③:ロンド、幻想曲、変奏曲、小曲のお気に入り曲を探す》 - 管弦楽を伴う作品
- 協奏曲:52曲
- 鍵盤楽器とオーケストラのためのソナチネ:12曲
→《🎹C.P.E.バッハ④:52曲のピアノ協奏曲からお気に入り(代表曲?)を探す…》
分かりやすい作品リストが見つからず、結局一番頼りになったのは、2014年(C.P.E.バッハ生誕 300年)にリリースされたアナ=マリヤ・マルコヴィナ(Ana-Marija Markovina、クロアチア、1970- )による『C.P.E.バッハ鍵盤独奏作品全集』(26CD、クラヴィーア協奏曲の鍵盤独奏編曲版を含む)の記事(↓)。
✏️ベーゼンドルファーによるC.P.E.バッハのピアノ曲全集(HMV&BOOKS)
で、困ったのは「代表曲」というのがよく分からない…ということ…(^^;)。
一番有名で演奏機会も多いのは(ジャズ編曲なども含めると)間違いなくこの曲(↓)だと思われる。私のお気に入り曲でもあり、練習したこともある。
ソルフェッジョ(ソルフェジエット) ハ短調 Wq.117-2(H220)
なので、現代ピアノによる演奏をざっと聴いた範囲で、私の独断と偏見と好みで「お気に入り」を選ぶことにした。「主要作品」ということにはならないかも知れないが…(^^;)。
細かいことは、上の「概要」で挙げた 4つの記事(🎹C.P.E.バッハ①〜④)を見て頂くとして、ここでは選んだ作品を並べるだけとする。
ソナタ
- ソナタ イ短調 Wq.49-1 H.30
- ソナタ ホ短調 Wq.52-6 H.129
- ソナタ イ長調 Wq.55-4 H.186
- ソナタ ホ短調 Wq.62-12 H.66
- ソナタ ト短調 Wq.65-17 H.47
- ソナタ ホ短調 Wq.65-30 H.106
- ソナタ ニ長調 Wq.65-40 H.177
- ソナタ 変ホ長調 Wq.65-44 H.211
ロンド
- ロンド 変ホ長調 Wq.61-1 (H.268)
- ロンド ホ短調 Wq.66 (H.272)
ファンタジア
- ファンタジア ハ長調 Wq.61-6 (H.291)
- ファンタジア 嬰ヘ短調 Wq.67 (H.300)
変奏曲
- アリオーソによる変奏曲 Wq.118-10 (H.259)
- アリエッタによる8つの変奏曲 イ長調 (H.351)
その他
- ソルフェッジョ ハ短調 Wq.117-2 (H.220)
- わがジルバーマン・ピアノへの別れ Wq.66 (H.272)
協奏曲
- Concerto in A minor, H.403 (Wq.1)
- Concerto in A major, H.410 (Wq.7)
- Concerto in A major, H.411 (Wq.8)
- Concerto in D minor, H.425 (Wq.22)
- Concerto in A minor, H.430 (Wq.26)
- Concerto in B minor, H.440 (Wq.30)
鍵盤楽器とオーケストラのためのソナチネ
- ソナチネ ニ長調 Wq.96,H.449
ちなみに、CD や音源の種類(弾いているピアニスト)はそれほど多くはなかったのだが、キース・ジャレットが「ヴュルテンベルク・ソナタ」Wq.49 全 6曲を録音した CD は素晴らしい演奏でオススメだと思う ♪
1994年に自宅スタジオで録音され約 30年間眠っていた音源が 2023年に CD としてリリースされたもの。
✏️キース・ジャレットによる未発表クラシック録音が発売決定。(BLUE NOTE CLUB)
全体的な感想としては、何人かの人がコメントしているように「もっと演奏されていい作曲家」だと思った。沢山の名曲が埋もれていて、素晴らしい演奏によって発掘されるのを待っているのではないだろうか?
上でご紹介したキース・ジャレットの CD などはその好例だと思う。今後もいろんなピアニストが C.P.E.バッハの作品に新しい命を吹き込んで欲しいものだ ♪
それから、「バロックから古典派への橋渡し」みたいな紹介が多いのだが、むしろ新しい時代を切り拓いた「古典派の開祖」のような位置付けをしてもいいのでは?…とも思った。
J.S.バッハのたった一世代あとの音楽とは思えないほど、時代を先取りしている印象を受けた。感情を前面に出す「多感様式」や「Sturm und Drang(疾風怒涛)」の影響、突然の曲想の変化や「メロディ+和声」の多用、「急 - 緩 - 急」の様式…など。
どのジャンルも「新鮮」で溌剌とした曲が多く、聴いていて結構楽しめた。
一方で、音楽作品としてのまとまり(構築性)や完成度、そして伝わってくるものの内容や質に関しては、曲によるばらつきが大きいという感じもした。
その理由は、次の二つの解説記事で何となく分かる。
✏️クラシック音楽の父、C.P.E. バッハ〜生誕300年(@_Nat Zone)
「C.P.E.バッハが忘れられてしまった原因はシューマン?」のところで、評論家として大きな影響力を持っていたシューマンが、C.P.E.バッハについて「創造的な音楽家として父親とは余りにも格が違いすぎる」と評価したらしいのだが…。
その理由としては「当時の作曲家の御多分にもれず、C.P.E. Bachは大変多作で、駄作もたくさん書いております。先駆者であり、実験者でもあったわけですから、失敗作が多くなってもしょうがありません」…ということのようだ。
✏️C.P.E. バッハの「ピアノ協奏曲集 Wq. 7, 42, 37」(クラシック音楽の小窓-その後)
ピアノ協奏曲に関する C.P.E.バッハの言葉として紹介されているのが下記。
「というのも、私は自作のほとんどを特定の人物や一般大衆のために書かねばならなかったので、私自身のためだけに書いた数少ない作品に比べると、どうしても制約が多かったのだ。私の全作品、とりわけピアノ作品の中で、完全な自由を享受し、自分自身の私的な使用のために書いた協奏曲は、ほんの一握りしかない」
最後に、ちょっと番外編の「代表曲」。
✏️もっと評価されて欲しいカール・フィリップ・エマニュエル・バッハ(Logophile!)
上の記事には、C.P.E.バッハの残した名作として「ソルフェジエット」「ヴュルテンブルクソナタ」と並んで二つの「フルートソナタ」が紹介されている。
それが、BWV1031(変ホ長調)とBWV1020(ト短調)の 2曲。作品番号から分かるように、これらは当初、父 J.S.バッハの作品とされていたのだが、現在では C.P.E.バッハの作品であることが有力視されているようだ。
とくに変ホ長調の第2楽章は「シチリアーノ」として非常に有名である。ケンプがピアノに編曲したものは多くのピアニストが取り上げている。
若き日のキーシンの演奏でどうぞ(↓)♪


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