急緩急の 3楽章の構成や、「ソナタ形式」の二つの短い主題や動機分解による展開を初めて採用するなど、鍵盤音楽史的にも C.P.E.バッハの鍵盤ソナタは重要な位置を占めている。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどにも大きな影響を及ぼしている。
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【C.P.E.バッハ:ピアノソナタ概観】
まず、ソナタ集を中心に年代順に全体を概観してみる。
- ベルリン時代:1738–1768(24-54歳)
- 1738 プロイセン王国の皇太子(のちのフリードリヒ大王)に仕えることが決定
- 1740 首都ベルリンおよびポツダムの宮廷チェンバロ奏者となる
- 1742 "Prussian" sonatas Wq. 48『プロイセン・ソナタ』6曲
- 1744 "Württemberg" sonatas Wq. 49『ヴュルテンベルク・ソナタ』6曲
- 1753 『正しいクラヴィーア奏法への試論』第1部を出版(第2部は1762年出版)
- 1753 "Probestücke" sonatas Wq. 63『6つのソナタ~正しいクラヴィーア奏法の試み、 新たに加えたソナティナ』12曲
- 1760 "Reprisen" sonatas Wq. 50『6つのソナタ』6曲
- 1761 "Fortsetzung" sonatas Wq. 51『6つのソナタ(続編)』6曲
- 1763 "Zweite Fortsetzung" sonatas Wq. 52『6つのソナタ(第2続編)』6曲
- 1766 "Leichte" sonatas Wq. 53『6つのやさしいクラヴィア・ソナタ』6曲
- ハンブルク時代:1768–1788(54-74歳)
- 1770 "Damen" sonatas Wq. 54『婦人たちのための6つのクラヴサン・ソナタ』6曲
- 1779–87 "Kenner und Liebhaber" sonatas Wq. 55–59, 61『専門家と愛好者のためのソナタ集』
- Wq. 55『専門家と愛好者のための6つのクラヴィア・ソナタ第1集』6曲
- Wq. 56『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタ第2集』3曲
- Wq. 57『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタ第3集』3曲
- Wq. 58『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第4集』2曲
- Wq. 59『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第5集』2曲
- Wq. 61『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第6集』2曲
- 生前未発表または個別出版のもの
- Wq. 62 『ソナタ、行進曲、ポロネーズ』(1730年代〜1750年代半ばの作品:ソナタは24曲、うち 1曲 Wq.62/12 は「組曲」)
- Wq. 64 『6つのソナティナ』(1734年頃の初期の作品)6曲
- Wq. 65 『ソナタ集 』(生涯にわたって作曲・改訂された 50曲の単独ソナタを、後にアルフレッド・ヴォトケネがカタログ番号として集成したもの)50曲
主な出典は下記。
✏️ベーゼンドルファーによるC.P.E.バッハのピアノ曲全集(HMV&BOOKS)
✏️Carl Philipp Emanuel Bach(Wikipedia/E)
✏️バッハ, カール・フィリップ・エマヌエル(PTNAピアノ曲事典)
最初のものは、2014年(C.P.E.バッハ生誕 300年)にリリースされたアナ=マリヤ・マルコヴィナ(Ana-Marija Markovina、クロアチア、1970- )による『C.P.E.バッハ鍵盤独奏作品全集』(26CD、クラヴィーア協奏曲の鍵盤独奏編曲版を含む)の記事。見た中では一番分かりやすく網羅性に富んでいると思われる。
で、これだけの曲数になると主な(代表的な、有名な、演奏機会の多い)ソナタ作品を探すのがとても大変だ。聴き始める前からちょっと疲れているかも…(^^;)。
「C.P.E. Bachは大変多作で、駄作もたくさん書いております。先駆者であり、実験者でもあったわけですから、失敗作が多くなってもしょうがありません」などと書いておられる方もおられる。(✏️クラシック音楽の父、C.P.E. バッハ〜生誕300年 @_Nat Zone)
…なので、いい(好みの)作品を見つけるのは一苦労なのだが、気を取り直して、出版されている楽譜や録音音源などから、ある程度の当たりを付けてみたいと思う。
【C.P.E.バッハ:ピアノソナタの楽譜】
ヘンレ社の "C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection" には、3巻に分けて 34曲が入っている(↓)。第3巻には「Wq65/44 H211のもともとの中間楽章」が含まれる。ヘンレ社のセレクションなので信頼できると思われる。年代順になっている。
- C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume I(1740〜1748)
- ソナタ ト長調 Wq65/12 H23
- ソナタ ロ短調 Wq65/13 H32.5
- ソナタ ロ短調 Wq49/6 H36
- ソナタ ハ長調 Wq62/7 H41
- ソナタ ヘ短調 Wq62/6 H40
- ソナタ 嬰へ短調 Wq52/4 H37
- ソナタ ト短調 Wq65/17 H47
- ソナタ 二短調 Wq69 H53
- ソナタ 変ホ長調 Wq52/1 H50
- ソナタ ト長調 Wq65/22 H56
- ソナタ 二短調 Wq65/23 H57
- C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume II(1749〜1758)
- ソナタ ハ長調 Wq 62/10 H59
- ソナタ 変ホ長調 Wq 65/28 H78
- ソナタ ホ長調 Wq 65/29 H83
- ソナタ ホ短調 Wq 65/30 H106
- ソナタ 変ロ長調 Wq 62/16 H116
- ソナタ ハ短調 Wq 65/31 H121
- ソナタ ト短調 Wq 62/18 H118
- ソナタ ト長調 Wq 62/19 H119
- ソナタ ロ短調 Wq 62/22 H132
- ソナタ イ長調 Wq 65/32(70/1) H133(135)
- ソナタ イ短調 Wq 62/21 H131
- ソナタ ホ短調 Wq 52/6 H129
- C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume III(1760〜1783)
- ソナタ ハ長調 Wq51/1 H150
- ソナタ ハ長調 Wq65/35 H156
- ソナタ ハ長調 Wq65/36 H157
- ソナタ イ長調 Wq65/37 H174
- ソナタ ニ長調 Wq65/40 H177
- ソナタ ハ長調 Wq65/41 H178
- ソナタ 変ホ長調 Wq65/42 H189
- ソナタ 変ホ長調 Wq65/44 H211
- ソナタ へ長調 Wq62/24 H240
- ソナタ ハ長調 Wq65/47 H248
- ソナタ ト長調 Wq65/48 H280
【C.P.E.バッハ:ピアノソナタの主な録音】
次に演奏機会というか録音の多い曲を探すことにした。全曲録音しているアナ=マリヤ・マルコヴィナは除いて、「C.P.E.バッハ/ ピアノ曲集」のような CD を録音しているピアニスト、古楽器奏者を探してみた。
その一覧が下記。
- マルカンドレ・アムラン
- ソナタ イ短調 H247 Wq57/2
- ソナタ ホ短調 H66 Wq62/12
- ソナタ ヘ短調 H173 Wq57/6
- ソナタ ニ長調 H286 Wq61/2
- ソナタ 変イ長調 H31 Wq49/2
- ソナタ ホ短調 H281 Wq59/1
- ミハイル・プレトニョフ
- ソナタ ト短調 Wq65/17
- ソナタ ハ短調 Wq65/31
- ソナタ ニ長調 Wq61
- ソナタ 嬰ヘ短調 Wq52/4
- ソナタ ト長調 Wq62/19
- ソナタ ホ短調 Wq59
- アンソニー・スピリ
- ソナタ イ長調 H.289
- ソナタ 変ロ長調 H.282
- ソナタ ハ長調 Wq.65-47 (H.248)
- ソナタ ハ短調 Wq.65-49 (H.298)
- ソナタ ホ長調 Wq.65-46 (H.213)
- ソナタ 変ホ長調 Wq.65-28 (H.78)
- ピエール・ゴア(ピリオド楽器)
- ソナタ ヘ短調 Wq 57/6
- ソナタ ヘ長調 Wq 55/2
- ソナタ ニ短調 Wq 57/4
- ソナタ ホ短調 Wq 61/5
- ソナタ ニ長調 Wq 61/2
- ソナタ ホ短調 Wq59/1
- ソナタ ト長調 Wq 58/2
- ソナタ ホ短調 Wq 58/4
参考記事(↓)。
✏️アムラン/C.P.E.バッハ:ソナタ&ロンド集(2CD)(HMV & BOOKS)
✏️C.P.E. バッハの「ソナタとロンド集」:アムラン(クラシック音楽の小窓-その後)
✏️C.P.E.バッハ:ソナタとロンド/ ミハイル・プレトニョフ(Universal Music Japan)
✏️ピエール・ゴア~クラヴィコード、パンタロン、フォルテピアノの歴史的銘器を弾き分けたC.P.E.バッハ:鍵盤作品集(3枚組) (TOWER RECORDS)
試しに、上の CD に録音された曲を並べて重複度合いを調べてみた。意外に重なっていない。これだと、どの曲が代表曲なのかよく分からない…(^^;)。
「録音」=A:アムラン、P:プレトニョフ、S:スピリ、G:ゴア。
上に挙げた CD 以外にも、キース・ジャレットが『ヴュルテンベルク・ソナタ集』Wq.49 の 6曲を録音したものがあり、これはなかなか素晴らしい演奏だ ♪
✏️キース・ジャレットによる未発表クラシック録音が発売決定。(BLUE NOTE CLUB)
このあと、自分である程度聴いて、お気に入りの作品や演奏をご紹介しようと思ったのだが、何を聴けばいいのか調べるだけで時間がかかってしまったので、またいずれ別記事で…。
記事を書きながら少しずつ聴いているのだが、なかなかいい曲が多いような気がしている。もっと演奏されていい作曲家であることは間違いなさそうだ。
おまけ。AI に少し聞いてみた。「代表的」「演奏機会の多い」など、聞き方を変えて試したのだが、あまり参考にはならなかった。
ソナタでは『プロイセン・ソナタ』『ヴュルテンベルク・ソナタ』や『専門家と愛好者のためのソナタ集』(ロンド、幻想曲も含まれる)などが出てくる。
ソナタ ロ短調 Wq.55/3, H.245の第2楽章「アンダンテ・エ・ソステヌート」は、単独で「Rondo Espressivo」としても広く親しまれている名曲…だそうだ。
演奏機会が多いものでは「ソルフェジエット ハ短調 Wq.117-2」が一番多いが、まぁ、これは当然だろう。
その他で挙げられたものはこんな感じ(↓)。
- 「プロイセンの女」あるいは「ラ・プリンゼッテ」などの性格的小品集 (Wq. 117)
- 幻想曲 Wq. 61/6
- 幻想曲 ト短調 Wq.117-13 / H.225
- 幻想曲 嬰ヘ短調 『C.P.E.バッハの感情』Wq.67
- 『クラヴィーアのための6つのロンド』 Wq. 56
- ロンド ハ短調 Wq.59/4, H.283



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