2026年6月26日金曜日

🎹C.P.E.バッハ①:150曲あるピアノ(鍵盤)ソナタから代表曲を探す…

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ (Carl Philipp Emanuel Bach、1714-1788)は、多くの鍵盤楽器作品を残しているが、中でもソナタに関しては生前に出版した 10数巻のソナタ集を含めて、150 曲以上のソナタ作品を残している。

急緩急の 3楽章の構成や、「ソナタ形式」の二つの短い主題や動機分解による展開を初めて採用するなど、鍵盤音楽史的にも C.P.E.バッハの鍵盤ソナタは重要な位置を占めている。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどにも大きな影響を及ぼしている。




【C.P.E.バッハ:ピアノソナタ概観】

まず、ソナタ集を中心に年代順に全体を概観してみる。

  • ベルリン時代:1738–1768(24-54歳)

  • 1738 プロイセン王国の皇太子(のちのフリードリヒ大王)に仕えることが決定
  • 1740 首都ベルリンおよびポツダムの宮廷チェンバロ奏者となる
  • 1742 "Prussian" sonatas Wq. 48『プロイセン・ソナタ』6曲
  • 1744 "Württemberg" sonatas Wq. 49『ヴュルテンベルク・ソナタ』6曲
  • 1753 『正しいクラヴィーア奏法への試論』第1部を出版(第2部は1762年出版)
  • 1753 "Probestücke" sonatas Wq. 63『6つのソナタ~正しいクラヴィーア奏法の試み、 新たに加えたソナティナ』12曲
  • 1760 "Reprisen" sonatas Wq. 50『6つのソナタ』6曲
  • 1761 "Fortsetzung" sonatas Wq. 51『6つのソナタ(続編)』6曲
  • 1763 "Zweite Fortsetzung" sonatas Wq. 52『6つのソナタ(第2続編)』6曲
  • 1766 "Leichte" sonatas Wq. 53『6つのやさしいクラヴィア・ソナタ』6曲

  • ハンブルク時代:1768–1788(54-74歳)

  • 1770 "Damen" sonatas Wq. 54『婦人たちのための6つのクラヴサン・ソナタ』6曲
  • 1779–87 "Kenner und Liebhaber" sonatas Wq. 55–59, 61『専門家と愛好者のためのソナタ集』
    • Wq. 55『専門家と愛好者のための6つのクラヴィア・ソナタ第1集』6曲
    • Wq. 56『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタ第2集』3曲
    • Wq. 57『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタ第3集』3曲
    • Wq. 58『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第4集』2曲
    • Wq. 59『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第5集』2曲
    • Wq. 61『専門家と愛好者のためのロンド付きピアノ・ソナタと自由な幻想曲第6集』2曲

  • 生前未発表または個別出版のもの

    • Wq. 62 『ソナタ、行進曲、ポロネーズ』(1730年代〜1750年代半ばの作品:ソナタは24曲、うち 1曲 Wq.62/12 は「組曲」)
    • Wq. 64 『6つのソナティナ』(1734年頃の初期の作品)6曲
    • Wq. 65 『ソナタ集 』(生涯にわたって作曲・改訂された 50曲の単独ソナタを、後にアルフレッド・ヴォトケネがカタログ番号として集成したもの)50曲


主な出典は下記。


✏️Carl Philipp Emanuel Bach(Wikipedia/E)


最初のものは、2014年(C.P.E.バッハ生誕 300年)にリリースされたアナ=マリヤ・マルコヴィナ(Ana-Marija Markovina、クロアチア、1970- )による『C.P.E.バッハ鍵盤独奏作品全集』(26CD、クラヴィーア協奏曲の鍵盤独奏編曲版を含む)の記事。見た中では一番分かりやすく網羅性に富んでいると思われる。


で、これだけの曲数になると主な(代表的な、有名な、演奏機会の多い)ソナタ作品を探すのがとても大変だ。聴き始める前からちょっと疲れているかも…(^^;)。

「C.P.E. Bachは大変多作で、駄作もたくさん書いております。先駆者であり、実験者でもあったわけですから、失敗作が多くなってもしょうがありません」などと書いておられる方もおられる。(✏️クラシック音楽の父、C.P.E. バッハ〜生誕300年 @_Nat Zone)

…なので、いい(好みの)作品を見つけるのは一苦労なのだが、気を取り直して、出版されている楽譜や録音音源などから、ある程度の当たりを付けてみたいと思う。


【C.P.E.バッハ:ピアノソナタの楽譜】

ヘンレ社の "C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection" には、3巻に分けて 34曲が入っている(↓)。第3巻には「Wq65/44 H211のもともとの中間楽章」が含まれる。ヘンレ社のセレクションなので信頼できると思われる。年代順になっている。

  1. C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume I(1740〜1748)
    1. ソナタ ト長調 Wq65/12 H23
    2. ソナタ ロ短調 Wq65/13 H32.5
    3. ソナタ ロ短調 Wq49/6 H36
    4. ソナタ ハ長調 Wq62/7 H41
    5. ソナタ ヘ短調 Wq62/6 H40
    6. ソナタ 嬰へ短調 Wq52/4 H37
    7. ソナタ ト短調 Wq65/17 H47
    8. ソナタ 二短調 Wq69 H53
    9. ソナタ 変ホ長調 Wq52/1 H50
    10. ソナタ ト長調 Wq65/22 H56
    11. ソナタ 二短調 Wq65/23 H57

  2. C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume II(1749〜1758)
    1. ソナタ ハ長調 Wq 62/10 H59
    2. ソナタ 変ホ長調 Wq 65/28 H78
    3. ソナタ ホ長調 Wq 65/29 H83
    4. ソナタ ホ短調 Wq 65/30 H106
    5. ソナタ 変ロ長調 Wq 62/16 H116
    6. ソナタ ハ短調 Wq 65/31 H121
    7. ソナタ ト短調 Wq 62/18 H118
    8. ソナタ ト長調 Wq 62/19 H119
    9. ソナタ ロ短調 Wq 62/22 H132
    10. ソナタ イ長調 Wq 65/32(70/1) H133(135)
    11. ソナタ イ短調 Wq 62/21 H131
    12. ソナタ ホ短調 Wq 52/6 H129

  3. C.Ph.E. Bach/ Piano Sonatas, Selection, Volume III(1760〜1783)
    1. ソナタ ハ長調 Wq51/1 H150
    2. ソナタ ハ長調 Wq65/35 H156
    3. ソナタ ハ長調 Wq65/36 H157
    4. ソナタ イ長調 Wq65/37 H174
    5. ソナタ ニ長調 Wq65/40 H177
    6. ソナタ ハ長調 Wq65/41 H178
    7. ソナタ 変ホ長調 Wq65/42 H189
    8. ソナタ 変ホ長調 Wq65/44 H211
    9. ソナタ へ長調 Wq62/24 H240
    10. ソナタ ハ長調 Wq65/47 H248
    11. ソナタ ト長調 Wq65/48 H280


【C.P.E.バッハ:ピアノソナタの主な録音】

次に演奏機会というか録音の多い曲を探すことにした。全曲録音しているアナ=マリヤ・マルコヴィナは除いて、「C.P.E.バッハ/ ピアノ曲集」のような CD を録音しているピアニスト、古楽器奏者を探してみた。

その一覧が下記。

  • マルカンドレ・アムラン
    • ソナタ イ短調 H247 Wq57/2
    • ソナタ ホ短調 H66 Wq62/12
    • ソナタ ヘ短調 H173 Wq57/6
    • ソナタ ニ長調 H286 Wq61/2
    • ソナタ 変イ長調 H31 Wq49/2
    • ソナタ ホ短調 H281 Wq59/1

  • ミハイル・プレトニョフ
    • ソナタ ト短調 Wq65/17
    • ソナタ ハ短調 Wq65/31
    • ソナタ ニ長調 Wq61
    • ソナタ 嬰ヘ短調 Wq52/4
    • ソナタ ト長調 Wq62/19
    • ソナタ ホ短調 Wq59

  • アンソニー・スピリ
    • ソナタ イ長調 H.289
    • ソナタ 変ロ長調 H.282
    • ソナタ ハ長調 Wq.65-47 (H.248)
    • ソナタ ハ短調 Wq.65-49 (H.298)
    • ソナタ ホ長調 Wq.65-46 (H.213)
    • ソナタ 変ホ長調 Wq.65-28 (H.78)

  • ピエール・ゴア(ピリオド楽器) 
    • ソナタ ヘ短調 Wq 57/6
    • ソナタ ヘ長調 Wq 55/2
    • ソナタ ニ短調 Wq 57/4
    • ソナタ ホ短調 Wq 61/5
    • ソナタ ニ長調 Wq 61/2
    • ソナタ ホ短調 Wq59/1
    • ソナタ ト長調 Wq 58/2
    • ソナタ ホ短調 Wq 58/4

参考記事(↓)。



試しに、上の CD に録音された曲を並べて重複度合いを調べてみた。意外に重なっていない。これだと、どの曲が代表曲なのかよく分からない…(^^;)。

「録音」=A:アムラン、P:プレトニョフ、S:スピリ、G:ゴア。



上に挙げた CD 以外にも、キース・ジャレットが『ヴュルテンベルク・ソナタ集』Wq.49 の 6曲を録音したものがあり、これはなかなか素晴らしい演奏だ ♪



このあと、自分である程度聴いて、お気に入りの作品や演奏をご紹介しようと思ったのだが、何を聴けばいいのか調べるだけで時間がかかってしまったので、またいずれ別記事で…。

記事を書きながら少しずつ聴いているのだが、なかなかいい曲が多いような気がしている。もっと演奏されていい作曲家であることは間違いなさそうだ。


おまけ。AI に少し聞いてみた。「代表的」「演奏機会の多い」など、聞き方を変えて試したのだが、あまり参考にはならなかった。

ソナタでは『プロイセン・ソナタ』『ヴュルテンベルク・ソナタ』や『専門家と愛好者のためのソナタ集』(ロンド、幻想曲も含まれる)などが出てくる。

ソナタ ロ短調 Wq.55/3, H.245の第2楽章「アンダンテ・エ・ソステヌート」は、単独で「Rondo Espressivo」としても広く親しまれている名曲…だそうだ。

演奏機会が多いものでは「ソルフェジエット ハ短調 Wq.117-2」が一番多いが、まぁ、これは当然だろう。


その他で挙げられたものはこんな感じ(↓)。

  • 「プロイセンの女」あるいは「ラ・プリンゼッテ」などの性格的小品集 (Wq. 117)
  • 幻想曲 Wq. 61/6
  • 幻想曲 ト短調 Wq.117-13 / H.225
  • 幻想曲 嬰ヘ短調 『C.P.E.バッハの感情』Wq.67
  • 『クラヴィーアのための6つのロンド』 Wq. 56
  • ロンド ハ短調 Wq.59/4, H.283


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