2025年10月31日金曜日

ショパンコンクール2025 の採点表を見て色々思ったこと…

第19回ショパンコンクールの採点表が公開された。今回のコンクールのお祭り騒ぎ&結果にはちょっと興醒めしたので、見るつもりはなかったのだが、やはり気になる…(^^;)。


一番気になっていた 3次予選だけ少し詳しく見てみた。どの審査員がどんな評価をしたのかを見たかったので、ヒマに任せて一覧表を作ったりもした。上の図はその一部。

コンクール途中で問題発言?をしたヤブウォンスキ教授の牛田くんへの評価が高いことには、喜ぶべきか?…少なくともショパンの音楽(楽譜)に対して「謙虚さや知識」があって、「ショパンの音楽を正しく守り、演奏の様式を次世代に伝える」ような演奏だと評価されたのだろうと思う。

審査委員長の採点でも、牛田くんが上位 10人の中に入っているのは嬉しい。最高点を付けた審査員も一人(R.McDonald)いた ♪


ただ、審査員全員 17人が選んだ上位 10人のコンペチタの名前を横並びにしてみたのだが、これが実にバラバラで混沌としているのには、本当に驚いた。

審査員個人の意見はあって当然なのだが、今回のコンクールの方向性とか、審査員団としてある程度まとまった方針?とか、「第19回ショパンコンクール」がどんなピアニストを求めているのかとか…、そういうコンセンサスのようなものがあってもいいのでは?

これだと、素人のピアノ音楽ファンを 17人集めてそれぞれの「好み」で選ぶのとそんなに変わらないのでは?…などと考えてしまう、失礼ながら…(^^;)。


あと、審査員によって「1〜25点」の点数の付け方に偏りがあるのも気になる。

最初に挙げた図の 5人の中では、ミシェル・ベロフは「25〜22点」(しかも 24点以上が 7人もいる)、ダン・タイ・ソンは「23〜19点」と点数の分布が異なっている。

K.Jablonski が 1位をつけたケビン・チェンは 25点だが、R.McDonald が 1位をつけた牛田くんは 23点だ。

もちろん、コンペチタの中では 1位だけれど満点ではない…という意味合いもあるのだろうが、各審査員の考え方に整合性があったのかどうか?…という疑問は残る。


一応、下記のような点数の基準?(Rating scale)があるのだが、"Perfect"(25点)はさすがに付けづらいと感じた審査員もいたと想像できる。

25: Perfect
23–24: Exceptional
18–22: Very good
16–17: Good
12–15: Average
6-11: Below average
1–5: Poor

ついでに言うと、予備審査を通過したピアニストたちの演奏が "Below average" や "Poor" である訳がないので、このスケールも上半分しか機能してないことになる。1次予選の採点表をざっと見た限りでは 9〜11点を 7つほど見つけたが、無視できる数である。


3次予選の採点には不満があるが、私が当然通過すると思っていた、牛田くん、ヒョクくん・ヒョ兄弟が次点に並んでいる(↓)のがせめてもの救い…かな?




ついでにファイナルの採点も見てみた。




ファイナルの得点では 8位・9位になる二人が入賞しているのがとても気になる。

総合点は各ラウンドの得点を加味して、下記の式で計算される。3次とファイナルの重み付けが同じ 35%というのはどうなんだろう?

総合点=1次 × 0.1 + 2次 × 0.2 + 3次 × 0.35 + ファイナル × 0.35

入賞者が 8人に増えたのは審査員団の苦肉の策か?…と思うのは気のせい?


いずれにしても、今回の結果は個人的には後味の悪いものになってしまった。いろいろ苦心して作ったであろう今回の新審査ルールは、再検討の余地があるのではないだろうか?


 19th International Fryderyk Chopin Piano Competition
 Warsaw, 2–23 October 2025


ちなみに、私の国際ピアノコンクールの楽しみは、新しいお気に入りピアニストの発見だったり、親しみを感じているピアニストの成長だったり、新しい解釈の素晴らしい演奏だったりするのだが、そういう意味ではいくつかの「幸せを感じる時間」があった ♪

主催者・関係者やピアニストの方たちには本当に感謝している。


新しいお気に入り候補のピアニストとしては、ちょっと独特の感性を持った  David Khrikuli(ダヴィド・フリクリ)くんが一番気になっている。今後(ショパン以外で)どんな演奏を聴かせてくれるのか?という期待感がある。

17歳になったばかりの Tianyao Lyu(リュー・ティエンヤオ)は、今後の成長が楽しみなピアニストである。現時点ではお気に入りになるかどうか何とも言えない。

あと、素晴らしい新鮮な演奏で大きな成長を感じたのは、牛田智大くん、Hyo Lee くん、Hyuk Lee くん。惜しくもファイナルに進めなかった三人であるが、このままそれぞれ自分の信じる道を進んで欲しいと思う。さらにもっといい演奏をしてくれると信じている。

とくに Hyo Lee くんは、今年のロン・ティボーで初めて知って気になっていたピアニストだが、今回のショパンコンクールでかなり私の好みに合ってることが確信できた。これからも活躍して新しい感覚の素晴らしい演奏を聴かせて欲しいと思う。




【関連記事】


0 件のコメント: