2017年4月19日水曜日

ピアノのヴォイシング、ボイシング、voicing…?

私が初めて「ヴォイシング」(voicing)という言葉を知ったのは、ピアノにおける和音の弾き方・練習方法を調べていたときのこと。


このときは、連続和音の練習をしていて、いちばん上の音を旋律として際立たせることをヴォイシングというのか、と思っていた。上の記事で紹介した Graham Fitch 先生のビデオ・レッスンはとても役に立った。 

その後、いちばん上だけではなく、和音の縦に並んだすべての音に対する音量配分をヴォイシングというらしいということも分かってきた。


で、いま練習しているベートーヴェンのソナタ第13番第3楽章の連続和音がうまく弾けないので、ヴォイシングの練習方法を使ってみようかと思っていたとき、ふとつまらぬ(自分では面白いと思った)考えが浮かんだのだった。

縦方向(和音)の強弱付けがヴォイシングで、横方向の強弱付けがダイナミクス(デュナーミク)だとすれば、本当はその組み合わせで、10本の指はとてつもなく難しい操作を要求されているのではないか?ということに思い当たったのだ。

気晴らしに?理工学的?イメージ図を作ってみた。下記の楽譜の3小節目を考えてみる。




この小節の音量配分を、横方向を赤い数字、縦方向を青い数字でテキトーに書いてみた(5段階)。そうすると、和音を構成するそれぞれの音はその二つの数字によって決まるはずである。面倒なので2拍目だけ、大雑把に音量配分(音符の中の白い数字)を入れてみると、こんな(↓)感じになるのでは…?




まぁ、実際にはこんなこと考えながら弾けるわけもないが、一人でこんな絵を描いて面白がっていた次第。…なのだが、もしかして、プロのピアニストはこれに近いことをやっていたりするのだろうか??


それはさておき、タイトルに「ヴォイシング、ボイシング、voicing」と書いたのは、実はピアノに関して「ヴォイシング」という言葉はいくつかの使われ方をしているようなのだ。

ポピュラー系(ジャズ系?)では、同じコード名の和音に対して、どういう音の組み合せをするか、ということをヴォイシングと呼ぶようだ。


作曲と編曲において、ボイシングとは、楽器法および、和音に含まれるそれぞれの音の垂直的な間隔と並び順を決めることである(どの音を最高音位や中間音位に配分するのか、どの音を重複させるのか、それぞれの音をどのオクターブに置くのか、それらの音をどの楽器や歌に担当させるのか、転回形を決定する最低音位にはどの音を配分するのか)

という説明がある。


たとえば、C(ドミソ)の和音でも、ソドミ、ミソドなどの転回形、いちばん上の音をどれにするか、どの音を重複させるかなど、数え切れないほどの組み合せがある。それによって当然、和音の響きや音楽そのものが変わってくる。

ジャズなどでは、コード進行だけをあらかじめ決めて、実際の演奏は各プレーヤーの即興演奏でやったりするので、どのように「ボイシング」するかというセンスが問われることになるのだろう。


そして、もう一つピアノの調律でもヴォイシングという言葉が使われていて、日本語では「整音」と呼ばれる。

これは、音色を揃える・整えるために、ハンマーのフェルトに紙やすりをかけたり針を刺したりなどして音色を調整すること(のはず…)。



…と、何となくいろいろ知識だけは増えたのだが、ベトソナ13番の第3楽章、練習しなくっちゃ…(^^;)!


おまけ:この記事には色々と有益なコメントを頂いたので転記しておく。新しい順。(古いブログから移動した記事なので、コメントはそのまま持って来れない…)


pia(→私の返信コメント)2017年04月20日 21:38

あずにゃん さん、こんばんは。

「音楽の勉強は『聴く事』から始まる」というのは、分かるような気がします。本格的な音楽の勉強をしたことがないので、何となく…というレベルではあるのですが、音楽の本体(本質・実体)は鳴り響いている音にあると感じています。

お勧めの近藤由貴さん、一度聴いてみたいと思います。カプースチンから直接声がかかるなんてすごいですね ♪

そういえば、最近あまりピアニスト探索(新しいお気に入りピアニストを探すこと)をやってないことに気がつきました。老化現象かも…(^^;)。


あずにゃん 2017年04月20日 10:49

おはようございます。こちらこそお返事ありがとうございます。
普通に行われているというのは、『本場ウイーン』でという意味で日本でという意味ではありません。(三歳から芸大を目指す人たちはしていると思いますが。)
あと、基礎というのは『具体的な教則本等ではなく』、ピアノを弾く目的の様な物です。
具体的にはバイエル前半の様な単純な曲の段階で音色、アーティキュレーション、アゴーギク、デュナーミク等に心を配った演奏を心がけるという事。
クラシック音楽の場合は演奏の究極の目的は『作曲者との同一化』にあると思いますので、貴方様のされている事は方向性は正しいと思います。
音楽の勉強は演奏、作曲にかかわらず『聴く事』から始まると思います。
私のお勧めのピアニストは近藤由貴 さんです。
演奏を見たカプースチンから直接連絡があったという方です。
以後よろしくお願い申し上げます。


pia 2017年04月20日 09:53

あずにゃん さん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

そうなんですね…、普通に行われているんですね…。勉強不足でした…(^^;)。

私の場合、まともにピアノを習ったことがないので、バイエルも我流でちょっとかじったくらいです。

まぁ、趣味で自分が楽しめればいいというのが基本ですので、あまり苦労はしたくない。なので、できればハノンとかツェルニーは避けたい…と思っているのですが…。

なんか最近テクニック教材も必要なのでは?という雰囲気が高まっているみたいで、さてどうしたものか…と思案し始めております。

なにか進展?があればブログに書きたいと思います。これからもよろしくお願いします ♪


あずにゃん 2017年04月20日 03:43

はじめまして。こんにちは。貴方様の方法はウィーンの国立芸術アカデミーでは普通に行われています。(私が通った訳ではありませんが。)
音量配分は主に色彩面や音色面、音質面を目的として行われています。
(あとフレージング等)
このような事は『バイエル前半程度の曲』で徹底して行っておかないと後々苦労するのではないかと思います。
この曲は私には難しくて全く弾けません。(笑)


pia 2017年04月19日 22:48

チロルさん、こんばんは。
ご訪問&丁寧なコメント、ありがとうございます。

素人の算数的な数字合わせに対して、とても音楽的なコメント、穴があったら入りたいくらいに恐縮しております。

ピアニストの方たちは、私が想像した以上のことをやっておられることがよく分かりました。同じ音の重複、倍音、音高による差など、相当なパラメータがありそうですね。こういうことを瞬時にやってのけるピアニストの耳と指には驚嘆するしかありません。ピアノ音楽の奥深さを改めて考えさせられました。

素人独習者にとっては、10段階の「pp:p:mp:mf:f:ff=2:4:6:8:10」などとても参考になります。それと、テクニック教材についての必要性については、「ベトソナを教本代り」などと言っている身としては耳の痛い話です…(^^;)。少しは考えてみようかと思います…。

これからもよろしくお願いします。


チロル 2017年04月19日 13:49

こんにちは。これをご自分で考えられたって、すごいですね。

ヴォイシング、というのかどうかは分かりませんが、ピアニストは似たようなことは行いますよ。
おおざっぱに申しますと、2拍目の頭(数字が書いてある部分)ですが、右手の下声(Des)は、上声(Des)で同じ音を鳴らすので、右手の下声(1)、右手の上声(5)くらいにします。また(As)は、左手の下声・上声・右手の中声と3か所で鳴っているので、左手の下声(3)、上声(2)、右手の中声(1)、と割り振ります。これで(As)と(Des)が同じ割合(数値を合算すれば、各6)で聴こえてきます。左手の中声(F)は、適当に3くらい。(全数値の合算で15)
でもって強弱がpなので3分の1(5)程度に修正しますが、拍頭なので結局は3/4倍(7.5)程度になるでしょうか。そしてクレッシェンドがついているので、2拍目からのタテの音量配分は、piaさんの数値で言えば(3)→(1)→(1.5)→(2)という感じになるように、それぞれの和音をリサイズしていくような感じですね。合算・修正後のサイズとしては、(7.5)→(9)→(10.5)→(12)くらいでしょうか。

実際には、ピアノは上声部よりも下声部の弦が太く長く振動して大きく聴こえるため、2拍目で言えば上声の(Des)が目立つようにバランスを取ったり、また倍音があったりするので、細やかな調整は、奏者の耳と、思ったように動いてくれる指次第ということになるかと思います。そのためには、やはりテクニック教材が必要かと思われます(笑)
ちなみにタテの合算数値に関しては、最終的に10段階になるように考えたほうが、強弱(pp:p:mp:mf:f:ff=2:4:6:8:10)にも対応しやすくなるかもしれません♪



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