見つけたのは、"A major pianist calls time out"という英文記事。で、その記事は"Humans of New York"というFacebookページから全文引用("3/2 1:26"の記事)しているようだ。
要点を意訳してみるとこんな感じ(↓ 「 」内)。
「木曜夜(3月3日)のコンサートが終わったら"sabbatical"(サバティカル=休養・充電期間)を取るつもりだ。いま休む(step away)なんてクレイジーだという友人もいるけれど、年間200のコンサートをする演奏マシンにはなりたくないんだ。」
脂の乗り切った今、休むのはクレイジーというのは私も同感…。でも「演奏マシンに…」という部分もわかる気がする。
「演奏マシンになるにはすごい効率性・手際の良さが必要だ。そしてそれが演奏家を消耗させる(burns you out)。リンカーンセンターやカーネギーホールで演奏するプレッシャーはすごいものがあるんだ。」
まあ、そうだろうと思う。だけど、アンデルシェフスキの本音は次のあたりにありそうだ。
「400人の乗客を乗せたボーイング777を操縦しているときに、新しい技を試そうなんて思わないだろ。面白いことをやったり、実験をやったりはできない。自分の夢やアイデアに浸る暇はない。成長する場を持つには、公衆の目から遠ざかる必要があるんだ。」
命を預かるパイロットの比喩はすごいが、たぶん彼にはやりたいこと(夢やアイデア)があって、それを楽しみながらいろいろ試してみたいと思っているわけだ。
「休養は、自分を"automaton"(機械人間)ではなく、もっと人間にしてくれる。オフ(Time off)は、これまでに知っていること以上の何かが起きる可能性を与えてくれる場所なんだ。」
その少し後のFacebook記事(3/2 7:44)に、夢やアイデアのヒントになるかも知れない書き込みがある。抄訳してみる。
「芸術(art)はコミュニケーション…。聴衆の前で演奏するというのは奇跡みたいなものだ。自分自身と聴衆と作曲家(200年前に楽譜を書いた)とのコミュニケーションを感じるんだ。」
「でも、楽譜は重要じゃない。楽譜は作曲家のただ一つのコミュニケーション手段。重要なのは、音符と音符の間に、音符の後ろにあるもの(what’s between the notes and behind the notes)。」
「ピアニストの仕事は解釈(interpret)すること。なぜ作曲家はこの音符を書いたのか?音符が書かれた直前の瞬間を理解する必要がある。そして、200年前の作曲家の人間性に触れること(connect)ができたとき、聴衆とのコミュニケーションと同じものを感じるんだ。」
"connect to a composer’s humanity" というあたりがヒントだと思うのだが、いまアンデルシェフスキが考えている作曲家というのは誰なんだろう?気になる…。
実は、アンデルシェフスキがサバティカルを取るのは初めてではない。「2011年夏から1年半の休業」をとって、そのあと初めて来日したのが2015年2月。日本では、3年半ぶりのリサイタル(バッハとシューマン)だったそうだ(↓)。行っときゃよかった!
まあ、音楽を真摯に追究する彼の言うことだから、間違いない判断だとは思うし、気持ちも分かる気がする。ファンとしては、休養明けのひとまわり大きくなったアンデルシェフスキを聴けることを楽しみに、首を長くして待つことにしよう…。
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