2016年1月29日金曜日

ピアノの音響の可能性「音の塊」♪

去年の内田光子さんと今年のローラン・カバッソさん、たまたま立て続けにベートーヴェンのディアベッリ変奏曲を聴いた。

ともに素晴らしい演奏で、ディアベッリという曲の、そしてピアノ音楽の魅力を再発見できたリサイタルであった。

その両方の演奏から感じたことが頭の中に残っていて、ずっと気になっている。うまく言葉で説明できないのだが、実感・体験が薄れてしまう前に、少し書き留めておきたいと思う。


それは、これまであまり感じたことのない「ピアノの『音の塊』による響きの多様な美しさ・パワー」というようなものだ。

ピアノという楽器が作り出せる音・響きの可能性が、私がこれまでに持っていたイメージを超えた、と言ってもいいのかもしれない。


これまで持っていた、ピアノの「いい音・好きな音」のイメージは、

・粒立ちのいい音の連なり、「真珠を転がした」ような軽やかな音、重厚な和音の響き、キラキラした音の塊、空間に消えていく余韻、等々。

・一つ一つの音がくっきり聴こえる演奏

・そんなに大音量ではなく、どちらかというと高音の潤いのある響き(きれいな音)

…といった感じであった。


それに対して、今回感じた印象を、それぞれの記事から抜粋してみると…。


「小さな音のレーザービームのような美しさと、ピアノ全体(いやホール全体)が強靭な響きを放つような大音量。それが、あるときは一瞬にして変化し、あるときはうねりのように迫ってくる。」

「『音の塊(かたまり)』の存在感のようなもの。…細かい音の速いパッセージがまとまって『音の塊』のように響いてくる。」



「カバッソさんの『音のきれいさ・魅力』はむしろ中低音のダイナミックで深みのある音色にある。」

「中低音の和音や速いパッセージの塊が心地よく響く。和音の響き、その厚みや彩りが音楽の流れに沿って絶妙に変化する。低音が気持ちよい重量感を持って弾む。その上に乗って、高音部のメロディーも光る。」


「音楽」の流れやうねり、といったものとは違う、まったく物理的な音響現象のことを言っている。もちろん、それが重要な要素(表現力・素材)となって、素晴らしい音楽を構成しているのだが…。

「音の塊」「存在感」「重量感」「強靭な響き」「厚みや彩り」といったあたりがキーワードになりそうである。


で、ピアノ音楽を鑑賞するという立場からは、この感覚・感動を求めて次の演奏を探す、ということになるのだろう。が、ピアノの「奏法」(を理解したい)という観点で見ると、どういう弾き方なのだろう?という疑問が湧いてくる。

直感的には、「ピアノのお稽古」的なピアノの正しい弾き方と、内田光子さんやカバッソさんの「音の塊」を出現させる弾き方の間には、大きなギャップがあるように思えるのだ。


そりゃ当然!だとは思うのだが、同じピアノという楽器を人間の身体が操作している、という点では同じとは言わないまでも「連続性」?があるはずだという気もする…。

でも、「お稽古」的な弾き方をどこまで極めても、あの内田光子さんやカバッソさんの音響は出てこないような気がしてならない。

なにか「ピアノの操作方法」?が根本的に違っている、あるいは「通常の操作方法」以上の弾き方をしている?ということなのか…??


…と、素人がいくら考えても答えは出そうもないので、理工学的?発想で少し問題を紐解いてみることにする。以下「蛇足」です…(^^;)。

普通の考え方。

一つのキーを押すと一つの音が出る、タッチで音色や音量が変わる、それをいろんなアーティキュレーション(レガート等音のつなぎ方)で連続すると旋律になる。和音を弾くときはそれぞれの指のタッチの違いと音量バランスで和音の音色・響きが変わる、アルペジオなどの速いパッセージでも同様、…。


もう少し分解してみると…。

①1音:タッチ(アタック)(+残響)
②単音の旋律:①+アーティキュレーション+スピード+音量バランス(横)
③和音:①+音量バランス(縦)
④連続和音:③+アーティキュレーション+スピード+音量バランス(横)

これにペダル(ダンパー/ソフト/ソステヌートとかハーフペダルとか)をどう組み合わせるかによって、様々な音の響き・効果を一通り?出すことができる。

面倒なので、グリッサンドやクラスター(手のひらや前腕でまとめて弾く)やプリペアドピアノや内部奏法や音を出さずに鍵盤を押さえて(ソステヌートペダルを踏んで)他の音を弾く、といった特殊奏法は考えないことにする。


これを見ながら「音の塊」の正体に迫る?と、
  • 和音の音量バランスとタッチによる、響きのテクスチャー(質感・肌理感?)
  • それを連続した時の、響かせ方、音の混ぜ方(ペダリング)
  • (聴覚的に和音に近いほどの)速いパッセージの響かせ方、音の混ぜ方(ペダリング)

…といった感じかな?


と書きながら、いや、実はこういう奏法とは違った、一段階上の「ピアノの操作方法」とか「秘術」?があるのではないかと思ってしまう。

この数10個の音を3秒間の間に(結果として)こういう風に響かせるには、鍵盤をこう「操作」すればよい、みたいな…(^^;)?。

音色とか響きに着目した教本とかないのだろうか? そうすればもっとピアノを弾くのが楽しくなりそうな気がする。(蛇足の蛇足:それに、魅力的な音を聴かせてくれるピアニストも増えるかもしれない…。)



【関連記事】
《内田光子さんのリサイタル最高でした!♪》

《カバッソさんの「ディアベッリ変奏曲」圧巻でした♪!》


  にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ 

0 件のコメント: