期待していたリーズ国際ピアノコンクールであったが…。結果的にはほとんど楽しめなかったし、これといったピアニストも発掘できなかったので、もう忘れてショパン・コンクールに行こう!と思っていたのだが、気になる記事があったので、もう1回だけ書くことにする。
その記事は、9月13日付の2つの記事である。書いたのは Norman Lebrecht という Pianist magazine の編集者で、チャイコフスキー・コンクールでもなかなかいい記事を書いていた人だ。
(リーズ優勝者についての心配)
(リーズでは何が間違ったのか)
一つ目の記事では、記者自身の感想として「記憶にある限り最も低調なコンクール」であったこと、会場で聴いた人の感想(ソーシャルメディアへの書き込み等)は「これまでのコンクールよりレベルが低かった」「1位は『該当者なし』とすべきだった」といったものだったことが書かれている。
二つ目の記事では、"this year was a tricky one" と、今回の結果に疑問を投げかけながら、ファイナリスト6人についての記者自身の評価が書いてある。
ポイント(意訳)だけ抜き出してみる…。「※」は私の感想。
Tomoki Kitamura (24/M, Japan)
心地よい音でいいところもあったが、最終楽章は生気に欠けていた。シューマンのコンチェルトは選曲ミスかも(映えない)。
※1楽章は微妙にテンポ感がずれている気がして、聴いている方の気持ちがついていけない。もう少したっぷり感のようなものが欲しい。音はきれいだが、全体に線が細い印象。2楽章は比較的いい。3楽章も途中までいいのだが最後の部分はちょっとバタバタしたかな?
Heejae Kim (28/F, Korea)
ベートーヴェンの4番、音楽的に円熟した瞬間があちこちに聴かれた。とくに緩徐楽章は素晴らしく、オーケストラを支配していた。オーケストラが選ぶ "the Terrence Judd Award" を得たのも納得出来る。
※音が硬い。粒立ちのいいクリアな音は好感が持てるし、歯切れがいいのだが…。オーケストラとのバランスもいい。ただ、音色のパレットが少なく、ずっと聴いていると硬質の音が気になる部分もある。音楽の解釈・表現は秀逸と言っていいと思うが、深みを感じないのは音色のせい?かも。6人の中では1番の演奏だと思う。拍手も大きかった。
Yun Wei (21/F, China)
ラフマニノフの3番は彼女には重荷だったかも。とくに第3楽章はひどかった。オーケストラと弾くのは初めてだったらしい。まぁ、若いんだから3年後にまたおいで。
※オーケストラに埋もれている。面白くない。
Drew Petersen (21/M, USA)
エレガントでやや遅めのラフマニノフ1番。第1楽章はよかったけど、第2楽章は感情がこもってない。全体に冷たい印象。もっと人生経験(恋愛も!)が必要。
※やや音量不足。オーケストラからピアノの音が浮き上がって来ない。エレガントというより控えめ。1楽章後半のフォルテでは音が暴れる感じだが、全体としてはきれい。2楽章はオーケストラの美しさがピアノのそっけなさを浮き彫りにしている感じ。ピアノの音色はきれいなのだが、今ひとつ盛り上がり切らずに終わった。聴衆の反応はよかったみたい。
Vitaly Pisarenko (28/M, Russia)
このラフマニノフ3番は大げさな狂乱といってよく、オーケストラを打ち負かそうとしているとしか思えない。疲れた〜。
※1楽章、オーケストラと合わない。走り気味、意味不明の焦り? ずっと同じような弾き方で、つまらない。狂乱とまでは思わないが、確かに少し疲れたかも…。
Anna Tcybuleva (25/F, Russia)
ブラームスの第2番は、ビロードのような柔らかい音色はもちろん、温かさ、実直さ、謙虚さが必要なのだが、残念ながらそういったものは伝わってこなかった。暗譜がとんだりミスタッチもあったし…。審査員たちを動かした(impressed)何かがあったに違いないのだが…。
※音が貧弱。ブラームスに必要な音の厚み・深みがない。タッチが浅いような、表面を撫でているような感じ。解釈・音楽もつまらない。退屈。この記者の感想に同感。
セミ・ファイナル、ファイナルの演奏を少し聴いた限りでは、上の記事はそれほど外れていないのだろうと思う。
※追記: the Guardian にも記事を見つけました。Heejae Kim と Drew Petersen を評価しているようです。(9/17)
✏️Leeds International Piano competition final - first prize for Anna Tcybuleva, not the obvious choice
日本で記事になっているか探してみたが、見つかったのは次の2つくらい。「北村さん5位入賞」以外にほとんど情報はない。
✏️伊熊よし子のブログ/北村朋幹(9/13)
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