シーモアさん(Seymour Bernstein)が 4月末に 99歳で亡くなられたことを知って、そのとき読んだ記事の一つに『人生をより美しく』(2020年)という本が紹介されていた。
図書館にあったので、早速借りて読んだ。
📗人生をより美しく: シーモアさんとの対話 音楽、家族、友情、そして創造(シーモア・バーンスタイン&アンドリュー・ハーヴェイ 対談、小野山弘子 訳、音楽之友社)
半世紀ほど前にステージからは引退し、その後は主にピアノ教師として活動していた人なので、ピアニストとしての経歴(や生い立ちなど)はあまり知らなかったが、なかなかに大変な人生を歩んだ人だったようだ。
シーモアさんの父親は 15歳のときにロシアから米国へ来たユダヤ人移民、母親はワルシャワから 3歳のときに米国へ。音楽への理解のない父と、音楽家になることをサポートした母の間で苦労しながら育った。朝鮮戦争中には朝鮮半島で従軍した経験もある。
アルトゥール・シュナーベルの弟子である、サー・クリフォード・カーゾン(Sir Clifford Curzon、英、1907 - 1982)に師事していて、カーゾンを支えてもいたようだ。
カーゾンは有名なピアニストなのだが、個人的にはあまり聴いていない。モーツァルトのピアノ協奏曲を探索しているときに一度聴いている(↓)。
下記はピアニストとしてのシーモアさんの経歴の一部。意外に日本との縁も深い。
1955年、ラプソディー・イン・ブルーを日本初演(指揮者:近衛秀麿)
1961年、日本ツアー(アレンジしたのは訳者 小野山弘子 氏の母)
以下、本の中で気になった言葉。文頭に "A" を付けたものはアンドリュー・ハーヴェイ氏の発言、それ以外はシーモアさん。※を付けたのは私のコメント。
「…科学者の証言なんだが、脳に障害がない限り、人は年をとればとるほど、脳の中に学ぼうとする領域が増すのだということ。人間は年をとると、若い時以上に進歩できるということなのだ」
「…天才でないとしても、持って生まれたものを最大限に生かす、ということ…」
「構築するのは後でいい。物事は、まずは自然に始めるもの」「知識の世界はひとまず置いておいて、先入観のない状態で演奏するように」
A「今は感情を伝える表現の伝統が失われつつあり…。…現代は感情を重んじない、無菌の、感情の入らない文化の中にあります」
※最近の国際ピアノコンクールで優勝したり、(商業的?)コンサートでもてはやされるピアニストを見ていると、「無菌の、感情の入らない文化」という言葉が「そうかも知れない…」と、ふと思ってしまう。
「人間は、脳や感情を使わないと萎縮してしまう…」
A「…戦争という恐ろしい現実の中で、音楽はもう一つの現実、つまり耐えねばならないものを耐える人々を救える現実なんですね」
「精神の貯水地」
「私は学ぶ段階を四つに分ける。自発性を持つこと、意識すること、コミットすること、そして一体にすること、つまり統合」
「最初(初見)の段階では感情はすべて自発的に起きるもの…。…先入観やテクニックに関する考察なしでフレーズを弾いていると、音楽自身がどうしたいか告げてくれる。だから初見がよくできることが前提」
「…それ(演奏)は精神的、感情的、知的、そして身体的に世界のすべての統合を伴う。…これらすべての要素は音楽そのものの中にある…」
A「… vision of pianism …」→ Seymour「… vision of beauty …。彼(クリフォード・カーゾン)はメカニカルな楽器を弾いているということを忘れようと、常に心がけていた。…彼のビジョンは打楽器であるピアノをボーカルのそれにしたいということ…」
「どんな関係においても、互恵以外は品位に欠けることだから」
「…健康な人とは感情的、知性的世界が健康的に活動している身体の中で一体になっている人である。…感情と思考が合成されるということ…」
「…『心で弾くピアノ』の中心をなしているのは…『choreography at the piano』…ピアノ演奏における振付なんです」
「…なぜ人は、言葉で言い表せないものがあるということを受け入れられないのだろうか。…アインシュタインが言っている。『人生そのものが神秘であり、自然に潜む理由を最小限に理解できれば私は満足である』と」
「…私は宇宙を治めている、ある種のパワー、名前はないがとても不思議な力、我々の理解を遥かに超えた力があると考えている」
※ "something great" の存在を信じている私としては、シーモアさんのこの辺りの考え方にはとても共感する ♪
シーモアさんに関しては、どうしてもピアノの練習の仕方とか考え方に関する部分に興味を引かれる。それと、「こんな年寄りになりたい」というお手本というか、年を取ってからのものの見方・考え方みたいな部分…。
今回読んだ中でも、「人は年をとればとるほど、脳の中に学ぼうとする領域が増す」という話は、勇気づけられるというか、年を取ることへのモチベーションが上がる?というか…少し希望と元気をもらった気がする…(^^)♪
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