最近の CD チェック、第3弾はジャン・ロンドー(ハープシコード)の『パルナッソス山への階梯』。パレストリーナからドビュッシーに至る「階梯」を登り詰め、そして下るというちょっと面白い構成のアルバムになっている。
💿Gradus ad Parnassum
- パレストリーナ:第1旋法によるリチェルカーレ
- ヨハン・ヨーゼフ・フックス:アルペッジョ
- ハイドン:ピアノソナタ 第31番 変イ長調 XVI:46
- クレメンティ *:『パルナッソス山への階梯』Op. 44 より第45番:アンダンテ・マリンコーニコ ハ短調
- ベートーヴェン *:ピアノまたはオルガンのための前奏曲 第2番 Op.39
- ドビュッシー *:『子供の領分』より グラドゥス・アド・パルナッスム博士
- ベートーヴェン *:前奏曲 ヘ短調 WoO 55
- クレメンティ *:『パルナッソス山への階梯』Op. 44 より 第14番:アダージョ・ソスティヌート ヘ長調
- モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397
- モーツァルト:ピアノソナタ 第16番 ハ長調 K. 545 より 第2楽章:アンダンテ
- ヨハン・ヨーゼフ・フックス:チャッコーナ ニ短調 K.403
- パレストリーナ:第2旋法によるリチェルカーレ
* クレメンティ、ベートーヴェン、ドビュッシーは「ジャン・ロンドー編」
プログラム構成としては、有名な古典的対位法教本 "Gradus ad Parnassum"(ヨハン・ヨーゼフ・フックス著)を軸として、この教本を学んだ作曲家たちや、同じ "Gradus ad Parnassum" というタイトルの曲集を残したクレメンティ、その作品を揶揄した?ドビュッシーの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」まで、時代順に音楽を探索していくという感じになっている。
具体的には、フックスの先生であったパレストリーナから始まって、フックス、その教本を勉強したハイドン、クレメンティ、ベートーヴェンを経てドビュッシーに至り、そこから逆に戻って(戻りにはモーツァルトも…)パレストリーナで終わる…。
その背景にある歴史?については下記記事に簡単にまとめた。
この CD についてのジャン・ロンドーのインタビュー記事(↓ 英語)の中で、いくつか興味を引いたことをメモしておく。
✏️ Jean Rondeau on Gradus ad Parnassum(prestomusic)
対位法教本 "Gradus ad Parnassum" を書いたフックスの作曲した作品はほとんど後世の作曲家に影響を与えてないが、その教本は対位法の「聖典」として、バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどに深い影響を与えている。
そのことが、この CD のプログラムの基本概念のようなものになっていると思うのだが、ジャン・ロンドーはちょっと洒落た表現をしている ♪
"I liked the idea of them as musical angels hovering over later generations, giving them the confidence to explore a new musical language."
また、ハイドン、モーツァルトの時代にはピアノとハープシコードが共存していて、彼らの初期の作品にはどちらで弾いてもいいようなものもある…という指摘をしている。
おそらく、鍵盤作品の中にはピアノ(ピアノフォルテ)を意識したものと、ハープシコードで弾くことを想定したものとがあるのだろう。
さらに、ピアノ向けの作品を作るときにも、作曲家の頭の中にはハープシコードの響きをイメージすることもあったかも知れない。
ジャン・ロンドーは、ベートーヴェンの曲については、初期の(バッハの影響を感じるような)2作品を選んでいる。
…で、聴いた感想であるが…。
改めて、私はハープシコードの響きが好きなんだ…と思った。意外に深い(太い)響きの低音の魅力も素晴らしいと思った。パレストリーナなど古い作品もいいなぁ…とも感じた ♪
でも、一番楽しめたのはドビュッシーの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」だった…というのも正直な感想だ…(^^;)。
ピアノで聴き慣れている曲をハープシコードで聴くと、また違った雰囲気で、それがちょっと面白かったりする。やはり、一度は生で聴いてみたい ♪
あと、ほとんど演奏機会のないフックスの作品も、なかなかいい感じだと思った。とくに「チャッコーナ」は 10分を超える曲であるが、最後まで楽しみながら聴くことができた。
ちなみに、クレメンティの 2曲(第45番、第14番)は「指の練習」としてタウジヒが選んだ 29曲の練習曲以外からの選曲になっているのは、当然と言えば当然か…。
おまけ。この CD をベースにしたプログラムと「ゴルトベルク」の 2つのプログラムを携えて、ジャン・ロンドーが 10月に来日することになっている。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿