マリア・ジョアン・ピリス(ピレシュ)、この人も「世界最高のピアニスト」という本に載っていたピアニストである。「禅僧か賢者か」という意味ありげな副題とともに紹介されていた。
その中にあった2つのエピソードが気に入って、名前を覚えた。
一つは、2008年の「スーパーピアノレッスン」というNHKの番組を引き受けた際、ワークショップという形にこだわったという話。「教師と生徒は対等であり、音楽を通じて人間どうしが交流することが大事である」という考えからだそうである。
もう一つは、モノ・カネみたいな社会が嫌になって(?)ブラジルに移住したという話。両方とも、自分の考え方を通す凛としたものを感じた。
「ワークショップ」の話は、音楽をやることの本質に関わることのような気がして、とてもいい話だと思った。よくは分からないが、日本の場合、徒弟制度のような雰囲気を感じるので、余計に感心したのかもしれない。
ピリスの場合、初めて演奏を聴いたのは、今練習しているモーツァルトのピアノソナタ(K.545)を探していたときである。偶然に聴いたのが、下記のCD、これが実に良かった。
ご存知の通り、K.545のソナタはわりと易しい曲であり、子供でも弾いたりする曲である。ところが、これがピリスの手にかかると実に素晴らしい音楽になるのである。
音色の美しさと表現の豊かさで、自分が練習している曲と同じものとはとても思えない名曲に聴こえるから驚きである。それ以来、ピリスは私のお気に入りピアニストのトップを争う存在になっている。
そして、どんなに練習を積んでも、この演奏の足元にも及ばないことは重々承知しながらも、この演奏を最高のお手本としているのである。
そのほかに、「世界最高のピアニスト」という本で推薦されていた演奏は、ショパンのピアノ協奏曲第1番(1997年録音)、ショパンのノクターン集、シューベルトの即興曲集などである。
ノクターン集と即興曲集はまだ聴いていない。近いうちにぜひ聴きたいと思っている。(それにしても、ピアノ曲だけに限ってもほんとうに沢山の曲があり、一通り聴くだけでもずい分と時間がかかるものである。)
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