たまたま目にした『ムジカノーヴァ 2022年12月号』の表紙に聞きなれない言葉があった。「フォルマシオン・ミュジカル」…?
「レッスンの引き出しを増やそう」という枕詞がついているので、ピアノ教室の先生むけに、レッスンのアイデアとかが書いてあるのか?…と思ったら、どうも新しい?ソルフェージュのやり方らしいのだ。それもそんなに「新しく」はないようだ…(^^;)。
その表紙がコレ(↓)。記事の執筆者は舟橋三十子という人で、✏️Formation Musicale というサイトを運営されたり、『フォルマシオン・ミュジカル 名曲で学ぶ音楽の基礎 I』という本を書かれたり…と「フォルマシオン・ミュジカル」を推進している先生のようだ。
『ムジカノーヴァ 2022年12月号』
…で、検索してみると実にたくさんの記事や論文や教材が出てくる。音楽の教育関連では結構「有名」な言葉のようだ。
いくつかの記事を読んで、何となく理解したことをまとめてみると…。
- 従来のソルフェージュは、聴音と視唱が中心で、課題もその目的のためだけに作られたものが多く、それぞれの訓練の細分化が進んでしまった。その課題解決のために、ソルフェージュ教育(知識)と器楽教育(表現)の距離を近づけることを目標とした改革が、1978年にフランスで行われた。
- その「フォルマシオン・ミュジカル」では、大作曲家などの実作品を教材にして、聴音、読譜、リズム、音程練習、移調練習、楽曲分析、音楽理論、音楽史などに触れ、音楽家が身につけるべきあらゆる音楽的要素を学習する 総合教育となっている。
- 日本には、1990年代から紹介はされているようだが、音楽教育界に一般に知られるようになったのは 2010年代と思われる(論文や教材の出版年からみて)。例えば、ヤマハミュージックWeb Shop サイトの記事 ✏️フォルマシオン・ミュジカルをはじめよう! で紹介されている最初の教材の日付は 2016年の 8月と思われる。
※追記:✏️フォルマシオン・ミュジカル特集ページ(YAMAHA)には「誌上レッスン」の最終回(第24回)まであることを、記事を書いたあとに発見した。
例えば、こんな感じ(↓)。小さくて字が読めないかも知れないが…(^^;)…、ムソルグスキーの「展覧会の絵」の「プロムナード」を聴いて、リズムのエクササイズや聴音などの課題をやるようになっている。
要するに、聴音やリズム練習など個別の「要素技術」を訓練するためだけに作られた課題を使っていた従来の「ソルフェージュ」に対して…。
実際の楽曲を使って、そこに含まれる旋律や和音を「聴音」したり、使われている「リズム」を聴き取ったり、さらには「移調練習」や「楽曲分析」や「音楽史」の勉強までやってしまおうという…のが「フォルマシオン・ミュジカル」…なのかな…?
何だか面白そうな感じもするし、確かにリズムだけを取り出した練習(リトミック?)や、聴音用に作られた単旋律や和音を聴き取るよりも、実際の楽曲を使う方が、音楽的な力は身につきそうな気がする。あくまで、素人考えですが…(^^;)。
ただ、これを教える先生は結構大変かもしれない…とも思う。例えば、ピアノの先生であっても管弦楽曲など広範囲の音楽を知っている必要があるし、リズム練習や聴音に相応しい楽曲を探すのも大変だと思われる。
まぁ、そのためにいろんな教材が出ているのだとは思うが…。
ちょっと興味が湧いてきたかも知れないので、こういう入門書(↓)を読んでみようか?…という気もするが、まずはネットで見つけた記事や論文をもう少し見てみようと思う。
『はじめてのフォルマシオン・ミュジカル ~音楽力を育てる新しいソルフェージュ』(高田美佐子、2016)
『フォルマシオン・ミュジカル 名曲で学ぶ音楽の基礎 I: 楽典・ソルフェージュから音楽史まで』(舟橋三十子、2014)
おまけ。ピアノの曲を選曲したり練習したりするときに、ちょっと似ていることをやっているかも知れない…と思った。
例えば、選曲のときの試し弾きのときには「初見」で弾くことも多いし、どういう作品か?などの「音楽史」の一部は調べたりすることもある。
練習の中では、難しい箇所の「リズム練習」もやるし、簡単な「楽曲分析」みたいなことをやることもある。
それから、お手本演奏を聴くときには「聴音」的なことをやっているかも…。とくに、フーガなどを練習するときは、弾きながら各声部を聴き取ろうとしていたりもする。
…ということで、ピアノの練習の中でやっていることも、何となくプチ「フォルマシオン・ミュジカル」と言えないこともないかも…(^^;)?
✏️フォルマシオン・ミュジカルをはじめよう!(ヤマハミュージックWeb Shop)
✏️フォルマシオン・ミュジカル特集(YAMAHA)
✏️フォルマシオン・ミュジカル(Wikipedia)
「フォルマシオン・ミュジカル(フランス語: formation musicale)は、フランスで行われている新しいソルフェージュのことである。従来のソルフェージュは、聴音と新曲視唱が中心であったが、このフォルマシオン・ミュジカルでは、大作曲家の作品を教材にして、聴音、読譜、リズム、音程練習、移調練習、楽曲分析、音楽理論、音楽史などに触れ、音楽家が身につけるべき真の教養を目指す内容となっている」
✏️Formation Musicale(舟橋三十子)
参考論文。
✏️フランスの「フォルマシオン・ミュジカル」にみられる特質(松永朋美、2007)
✏️新しいソルフェージュ〜フォルマシオン・ミュジカルへの展開(舟橋三十子、2015、PDF)
✏️「フォルマシオン・ミュジカル」教育内容の変遷に関する一考察(長崎結美、2016)
✏️新しいソルフェージュ〜フォルマシオン・ミュジカルからの発展(舟橋三十子、2019、PDF)
✏️フォルマシオン・ミュジカルの教材分析及びその可能性について(加納暁子、2022、PDF)
0 件のコメント:
コメントを投稿