2025年9月4日木曜日

本『日本のピアニスト』日本ピアノ界の始まり〜現在地までよく分かる

久しぶりにピアノに関する本を読んだ。『日本のピアニスト』というタイトルで、実はあまり期待せずに読み始めたのだが、意外に面白かった。

…いや、「面白かった」という表現は正確ではない。沢山の日本人ピアニストの名前が次々に登場するが、まるでプロフィール紹介文のように師事した先生や卒業学校、コンクールの入賞経験などが羅列されている部分はあまり面白くはないかも知れない…(^^;)?

📗日本のピアニスト~その軌跡と現在地(光文社、2022/10/19、本間ひろむ 著)




でも、これまで色んな形(コンクール、コンサート、YouTube、本、ネット…)で名前を覚えたピアニストたちが次々に登場するので、ちょっと嬉しかったり興味深かったりもした。しかも、歴史の流れに沿って紹介されるので、ある意味頭を整理することが出来た。

それと、それぞれの時代や話題ごとの説明やエピソードが簡潔に分かりやすく書かれているのも、そこはとても面白かった ♪

日本のピアノ界の黎明期の状況、音大の始まり方や先生と生徒の話、ヤマハとカワイの成り立ちとその後の発展、海外で活躍する日本人ピアニスト、ショパンコンクール、サイバー空間、そして日本のピアノ界の「現在地」など…。


日本におけるピアノの歴史は、1549年にフランシスコ・ザビエルが持ち込んだクラヴィコード、1823年 7月 6日にシーボルトが持ち込んだスクエア・ピアノ(→《7月6日、今日は「ピアノの日」♪》)まで遡る。

…が、ピアニスト(ピアノを弾く日本人)の話は、岩倉使節団(1871)に随行して米国に留学した 3人の少女が 10年ほどピアノなどの教育を受けて帰国した後から始まる。

渡米当時 8歳の津田梅子、9歳の永井繁子、12歳の山川捨松である。帰国後は新しく出来た鹿鳴館で人気者となった。


日本人初のピアノ独奏会を行ったのは永井繁子。彼女に師事した幸田延(1870年東京生まれ、幸田露伴の妹)が、中村紘子さんの『ピアニストという蛮族がいる』という本の中では、「(日本)最初のピアニスト」として名前が上げられている。

東京音楽学校で幸田延に師事したのが久野久(くの ひさ)。「日本一のピアニスト」ともてはやされながら、遠征先のヨーロッパで失意のうちに自殺している。



…と、この後も興味深い話は続くが、この本に沿って歴史を辿るつもりはないので、このあとは大幅に時代を飛ばして…(^^;)…、2021年のショパンコンクール以降でちょっと面白いと思ったことをいくつかメモ的に書いてみたい。


2021年のショパンコンクールは本当に楽しめた ♪


一つ残念だったのは、牛田智大くんがセミファイナルに進めなかったことであるが、その理由について、この本の著者はこんなこと(↓)を言っている。

その悠然たる存在感、ステージマナー、これらはコンサート・ピアニストのそれだった。…おそらくは審査員もそんな違和感を抱いたに違いない

この感覚、分からないではないが、それで「次のステージでも聴きたいか?→ NO」の判定はいかがなものか?…とも思う。まぁ、今更…ではあるが。


それから、著者は反田恭平、小林愛実、角野隼斗のいずれも、そんなにショパンにこだわってはいないのでは?…といったことを書いている(と思う)。

似たような感覚は私も当時持っていて、彼らがこのあと「ショパン弾き」としてやっていくことはまったくイメージできなかった。

コンクールでショパンに全力で取り組んで、やり切って、それぞれに結果を出して…。じゃあ、次行くか…みたいな感じ…。


『サラサーテ』2021年12月増刊号から引用された角野隼斗くんの言葉(↓)が、その「感じ」をよく表していると思う。

「彼(ショパン)がパリのサロンでやっていたことと、僕が部屋の中でカメラを回していることはさほど変わりがないと思います」

「この数ヶ月、ショパンの表現に注力しましたが、これを糧にさらにいろいろ学び、クラシックを軸にしながらもさまざまなジャンルを組み合わせた自分の表現を求めていきたいです」


そのあとの「サイバー空間」の話や現在活躍している若いピアニストたちの多様な活動の話も面白いのだが、現在進行形の状況にもつながることなので、ある意味まとまりがない。

読者としても、その様々な情報を頭の隅に置きながら、同時代に活躍するピアニストたちが創り出す音楽シーンを楽しむ…というのがいいのではないか?…と思う…(^^)♪


おまけ。実はほぼ並行してもう一冊ピアノ関連の本を読んでいて、面白いという意味ではそちらの方が断然面白かった。『老後とピアノ』(稲垣えみ子 著)という本である。

ただ、ある意味「大人のピアノあるある」「再開ピアノあるある」のオンパレードなので、いざ、感想記事を書こうとすると、「そうだよね〜」としか書けない…(^^;)。

語り口が面白くテンポもいいので読み物としては申し分ないのだが…。



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