ピアノ音楽の新譜探索、今回はバッハに定評のあるダヴィッド・フレイの「バロック・アンコールズ」。
バッハを中心としたバロック作品集。タイトルの「アンコール」でも想像できるように、比較的よく耳にする、ある意味 "easy listening" 的な曲が多い…かな?
それでも、さすがダヴィッド・フレイ、実に深みのある聴き応えのある音楽になっている。J.S.バッハの管弦楽組曲第3番 BWV1068 の「エア」(アレクサンドル・ジロティ編)などは、厳かな雰囲気さえ醸し出している。
そして「選曲」が素晴らしい…というか私の好みに合っている ♪ こういう曲をこういう風に弾きたいと思うのだが、素人が弾くとどうしても平凡な感じになってしまうので、なかなか取り組めていない…。
以前練習したことのあるフランス組曲 第4番 BWV 815 の「アルマンド」も、本当はこういう風に弾きたかった…(^^;)。
CD のリリースは 11月14日の予定。録音は 2024年12月にフランスのグルノーブル文化センターで行われた。
YouTube では下記のプレイリストで 5曲だけ(下記「収録予定曲」の緑太字)が聴ける。早く、全曲を聴いてみたいと思う。
♪ Bach: Siciliano(5曲のプレイリスト)
【収録予定曲】
- J.S.バッハ:オルガン・ソナタ 第4番 ホ短調 BWV 528 よりアンダンテ(アウグスト・ストラダル編)
- ラモー:クラヴサン曲集(1724年):組曲 ホ短調RCT 2 より第5曲《鳥のさえずり》
- スカルラッティ:鍵盤ソナタ ロ短調 Kk.87 アンダンテ・モッソ
- スカルラッティ:鍵盤ソナタ ニ短調 Kk.1 アレグロ
- スカルラッティ:鍵盤ソナタ ヘ短調 Kk.466 アンダンテ・モデラート
- J.S.バッハ:フランス組曲 第4番 変ホ長調 BWV 815 アルマンド
- J.S.バッハ:組曲 ヘ短調 BWV 823 サラバンド
- クープラン:クラヴサン曲集 第2巻(1717年):第6オルドル 変ロ長調 より第5曲《謎の障壁》
- ヘンデル:メヌエット ト短調 HWV 434/4(ヴィルヘルム・ケンプ編)
- ジョゼフ=ニコラ=パンクラス・ロワイエ:クラヴサン曲集 第1巻(1746年)第6曲《愛らしさ》
- ジョゼフ=ニコラ=パンクラス・ロワイエ:クラヴサン曲集 第1巻(1746年)第11曲《めまい》
- J.S.バッハ:フルート・ソナタ 第2番 変ホ長調 BWV 1031 よりシチリアーノ(ヴィルヘルム・ケンプ編)
- J.S.バッハ:カンタータ《神よ、われ汝に感謝す》 BWV 29 よりシンフォニア(ヴィルヘルム・ケンプ編)
- J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV 1068 よりエア(アレクサンドル・ジロティ編)
- J.S.バッハ:コラール前奏曲《われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ》BWV 639(フェルッチョ・ブゾーニ編)
- J.S.バッハ:パストラーレ ヘ長調 BWV 590 よりアリア
- J.S.バッハ:オルガン・ソナタ 第5番 ハ長調 BWV 529 よりラルゴ(サムイル・フェインベルク編)
- J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 BWV 1003よりアンダンテ(ブルーノ・モンサンジョン編) ※世界初録音
- J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲 ニ長調 BWV 972 よりラルゲット
この記事(↓)に、ダヴィッド・フレイの言葉を含む解説が載っている。
ダヴィッド・フレイは、チェンバロ作品をモダンピアノでいかに色彩と歌心と奥行きの深さが表現できるかを探求した。
「選曲には長い時間を要しました。バッハは長年弾き込んでいる作品ばかりですが、フランスバロック作品はあまり弾かないようにしていたんです。モダンピアノでいかに説得力をもって演奏することができるか、チェンバロの音をピアノで翻訳するような形で忠実に再現できるか悩んでいたからです。でも、練習を重ねて作品のすばらしさに気づき、旋律のうたわせ方、アーティキュレーション、ダイナミクス、色彩感、声部の際立たせ方、装飾音、テンポやリズムの変化に留意し、モダンピアノの可能性を探求することができました」
偉大なチェンバリスト、スコット・ロスの演奏が導き手となった。
「スコット・ロスはチェンバロという楽器に限界があるからこそ技術を磨き抜いた。チェンバロは音量が小さく、タッチも微妙。奏法でさまざまな工夫を凝らさなくてはならない。ロスの精神を見習いたいと思い、作品ごとに奏法と表現力を徹底的に研究し、作曲家の意図するところに近づいていきました」
ジョゼフ=ニコラ=パンクラス・ロワイエ(Joseph-Nicolas-Pancrace Royer、仏、1705年頃 - 1755)という名前はあまり聞いたことがないので、少し調べてみた。フランス・バロックの作曲家、クラヴサン奏者。
✏️パンクラス・ロワイエ(鍵盤楽器音楽の歴史、第141回)(影踏丸)
上の記事によると、ロワイエの活動の中心は劇場にあり、代表作《ザイード、グラナダの女王 Zaïde, reine de Grenade》(1739)などの歌劇作品が現存している。
現在演奏されるのはクラヴサン曲、それも 1746年に出版された『クラヴサン曲集 第1巻』の 14曲がほぼそのすべてのようだ。うち少なくとも 5曲は自らの歌劇からの編曲。
ただ、そのクラヴサン作品は「いずれも良作ぞろいで、その瑞々しい情感表現と華麗なヴィルトゥオシティは、クープラン以降のフランスのクラヴサン音楽の中では一頭地を抜いて」いるとのこと。
ダヴィッド・フレイのアルバムに収録されている第6曲《愛らしさ》 と第11曲《めまい》を、アレクサンドル・タローのピアノとジャン・ロンドーのハープシコードで聴いてみた。
《愛らしさ》はロマン派の愛の歌のようでもあるし、《めまい》の方は上の記事にも書いてあるが、「劇伴そのもので、狂気、錯乱、といったシーンに似つかわしい代物」で、バロック時代の作品にはあまり見られない、直接的な感情表現とダイナミズムがあり面白い ♪
ちなみに "easy listening"(イージーリスニング)という言葉であるが、念のために Wikipedia で調べてみた。「1950年代から1970年代にかけて最も人気があったポピュラー音楽のジャンルおよびラジオの放送プログラムである」と書かれている。
私は「気楽に聴ける音楽」くらいのつもりで使ったのだが、ジャンルを表すこともある(あった?)ようだ。
【関連記事】


0 件のコメント:
コメントを投稿