ヘンデルの「クラヴサン組曲」の演奏についてはハイドシェックの名演奏を見つけて(↓)とても満足した。
…のだが、他のピアニストはヘンデルを弾いていないのか、「組曲」以外に有名なピアノ(で演奏される)曲はないのか…気になったのでもう少し探索することにした。
曲のレファレンスのために、ハイドシェックが録音している「クラヴサン組曲第1番〜第16番」の一覧を再掲しておく。
組曲第n番
↓
- HWV426 イ長調:第1集 No.1
- HWV427 ヘ長調:第1集 No.2
- HWV428 ニ短調:第1集 No.3
- HWV429 ホ短調:第1集 No.4
- HWV430 ホ長調:第1集 No.5『調子のよい鍛冶屋』
- HWV431 嬰ヘ短調:第1集 No.6
- HWV432 ト短調:第1集 No.7
- HWV433 ヘ短調:第1集 No.8
- HWV439 ト短調:第2集 No.6
- HWV436 ニ短調:第2集 No.3
- HWV437 ニ短調:第2集 No.4『サラバンド』
- HWV438 ホ短調:第2集 No.5
- HWV440 変ロ長調:第2集 No.7
- HWV441 ト長調:第2集 No.8
- HWV447 ニ短調
- HWV452 ト短調
「クラヴサン組曲第2集」の、第1曲 HMV434(組曲 変ロ長調)、第2曲 HMV435(シャコンヌ ト長調)、第9曲 HMV442(シャコンヌと62の変奏曲 ト長調)の 3つは「組曲第1〜16番」には含まれていない。
まず思い当たったのが、今年 2月にリリースされたチョ・ソンジンの『ヘンデル・プロジェクト』という CD。収録曲は下記。
- 組曲 第2番 ヘ長調 HWV427
- 組曲 第8番 ヘ短調 HWV433
- 組曲 第5番 ホ長調 HWV430 《調子のよい鍛冶屋》
- ブラームス:ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガ 変ロ長調 作品24
- サラバンド 変ロ長調(組曲 第7番 HWV440 から第3曲)※第2集第7曲
- メヌエット ト短調(組曲 第1番 HWV434から第4曲)(W.ケンプ編)※第2集第1曲
ブラームスの変奏曲の主題となっているのは、HWV 434(第2集第1曲)の「エアと5つの変奏曲」の「エア」部分。5. と 6. の組曲番号が違っているので ※ で注記をつけた。
♪ ヘンデル・プロジェクト(YouTube プレイリスト)
ヘンデルのピアノ演奏ではおそらく最新のものと思われるので期待して聴いたのだが、個人的には今ひとつ惹かれるものを感じない。とても美しく弾いているのだけれど…。
印象としては、ブラームスの変奏曲に一番力が入っていて、この曲を弾くためにヘンデル作品も勉強した…という感じ…(^^;)?それにしては、原曲の HWV 434 が入ってない?
紹介記事などからは、チョ・ソンジンの意気込みは感じられるのだが…。
「チョは古典派以前の音楽に遡る必要を感じ、とりわけヘンデルの組曲をモダン・ピアノで弾く意味を〈発見した〉と語る。トレヴァー・ピノックらピリオド楽器奏者の演奏に影響を受け、実際にチェンバロを触りながらも現代のピアノにこだわり、ペダルの使用を控え、デュナーミク(強弱法)の一部を変えることで独自の再現を目指した」
「すべての声を届けたく、実に多くのテクニックを駆使しました」
次に見つけたのはマレイ・ペライアが 1997年(ペライア 50歳)にリリースした『Murray Perahia plays Handel and Scarlatti』という CD。
♪ Murray Perahia plays Handel and Scarlatti(YouTube プレイリスト)
収録曲(ヘンデルの分)。
- HWV 430:組曲第5番=第1集 No.5『調子のよい鍛冶屋』
- HWV 435:第2集第2曲「シャコンヌと21の変奏曲」
- HWV 428:組曲第3番=第1集 No.3
- HWV 427:組曲第2番=第1集 No.2
ペライアの演奏はやや優等生的なところがあるが、このヘンデルはいい感じだと思う。
なお、「シャコンヌと21の変奏曲」HWV 435 は有名な曲らしく、プロのピアニスト(あまり知らない人が多い?)の演奏や PTNA などの演奏動画もいくつか YouTube に上がっている。ギターやハープなどの編曲もあるようだ。
Ragna Schirmer という女性ピアニストの演奏はちょっと気に入った ♪
オルガン、ギターでの演奏もなかなかいい。
それから、グレン・グールドが珍しくハープシコードで演奏した録音も残っている。第1集の第1組曲〜第4組曲のみ。
♪ Handel: Harpsichord Works (Glenn Gould)(YouTube プレイリスト)
ブラームスの変奏曲の主題となっている「アリア」が入っている HWV 434(第2集第1曲 変ロ長調)自体の演奏を探してみたが、意外と録音が少ない。
YouTube では、アンドラーシュ・シフの演奏が見つかった。楽譜が表示されるのだが、「プレリュード」の冒頭は和音の連続になっていて、それをシフはアルペジオのように(たぶん)当時の弾き方で弾いており、ちょっと面白い ♪
なお、最終曲のメヌエットをケンプが編曲したものは、チョ・ソンジンもアルバムの最後に入れているが、アンコール曲などでわりと弾かれているようだ。
「クラヴサン組曲」第1集・第2集に入っている曲のうち、残るは第2集の第9曲 HMV442(シャコンヌと62の変奏曲 ト長調)だけなのだが、あまり人気がないのか、YouTube ではピアノ演奏を見つけることができなかった。
ハープシコード演奏もそんなに多くない。そんなに悪い曲とは思えないのだが…。
結局、ヘンデルの鍵盤楽曲として有名なのは、「調子のよい鍛冶屋」が含まれる組曲第5番 HWV430 と、第2集第2曲の「シャコンヌと21の変奏曲」HWV 435、あとは組曲第2番 HWV427 あたりということなのかな…?
あとは部分的に、組曲第11番(第2集第4曲)HWV437 の「サラバンド」、ブラームスの変奏曲のテーマに使われている HWV 434(第2集第1曲)の「アリア」、そして、同じく HWV 434 の「メヌエット」のケンプ編曲によるアンコール・ピース?
ハイドシェックの名演を聴いて以来、ヘンデルのピアノ曲(鍵盤楽曲)はもっと弾かれてもいいのでは?…と思っているのだが、プロのピアニストの意見は少し違うのかも…(^^;)?
おまけ。ヘンレ社のピアノ用楽譜で、ヘンデルを探してみた。「クラヴサン組曲」の第1集と第2集以外では「フーガ集」しかないようだ。
※"Piano Suites (London 1720)" =第1集
Suite A major HWV 426
Suite F major HWV 427
Suite d minor HWV 428
Suite e minor HWV 429
Suite E major HWV 430
Suite f sharp minor HWV 431
Suite g minor HWV 432
Suite f minor HWV 433
Appendix 一部の初稿版や初期の版 Initial Prélude HWV 566, 570, 572, 568
※"Piano Suites and Piano Pieces (London 1733)" =第2集
Piano Sonata B flat major HWV 434
Chaconne G major HWV 435
Suite d minor HWV 436
Suite d minor HWV 437
Suite e minor HWV 438
Suite g minor HWV 439
Suite B flat major HWV 440
Suite G major HWV 441
Prelude and Chaconne G major HWV 442
※16曲の「組曲」に含まれない曲は "Suite" とは呼んでいない。
※"Six Fugues HWV 605-610 and Fugues HWV 611, 612"
Fugue g minor HWV 605
Fugue G major HWV 606
Fugue B flat major HVW 607
Fugue b minor HWV 608
Fugue a minor HWV 609
Fugue c minor HWV 610
Fugue F major HWV 611
Fugue E major HWV 612
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