《▼Sweelinck「半音階的幻想曲」とりとめもない譜読みで一週間?》
こんな感じ(↓)で全体を分析してある。今回はとりあえず、曲全体の構成を大まかに把握できればいいことにしたい。
見つけた資料(PDF)は下記。Dr. Derek K. Remeš(Eastman School of Music)という先生が書かれたもの。"Society for Seventeenth-Century Music" の年次大会(April 20-23, 2017)での公演で配布された資料のようだが、解説文のようなものは見つからなかった。
✏️MUSICAL RHETORIC IN SWEELINCK’S CHROMATIC FANTASIA
ただ、後で Dr. Derek 自身の解説を YouTube で見つけた(↓)のだが、英語で専門用語が頻出するのでほとんどついて行けない…(^^;)。
🎦Musical Rhetoric in Sweelinck's Chromatic Fantasia
動画の解説によると、この論文の初出は "the Music Theory Society of New York State 2016 meeting" となっている。
構成の前に、AI(Gemini)による楽曲解説を簡単にまとめておく。
この作品はスウェーリンクの代表作の一つであり、革新的な半音階の使用と精緻な対位法によって音楽史上重要な位置を占めている。
特徴的なのは半音階で下降する主題であり、この主題が拡大、縮小、二重縮小などに変形され、様々な対位法的技巧が駆使されている。
なお、当時の平均律(ミーントーン)では D♯とE♭のような異名同音の音が異なる響きを持っていたため、その不協和感は現代の耳には想像以上のものだったと考えられる。
また、自由な形式である「ファンタジア」でありながら明確な構造を持っていることも大きな特徴の一つとなっている。
その構造に関して Dr. Derek の資料からいくつかの図表を引用しておく。
まずは、主題とその変形(拡大、縮小…)。
そして、全体の構成。MM. は小節番号。
ちょっと分かりにくいが、下記の 3部構成が基本になっている。
- 導入部(Exordium):1〜69 小節
- 中間部(Medium):70〜170 小節
- 終結部(Finis):171〜197 小節(コーダ:194〜197)
他のネット情報では、この 3部の切れ目を「基本主題」「拡大主題」「縮小主題」で区切るという説明をしているものもあるが、Dr. Derek の分析では上の図表(→ "Proportion")のように少しずれている。
また、この図表の中に 2つの "Structural Stretto Events"("pillar")が書かれている。
これは 4つの声部で主題だけがたたみかけるように重なり合う「ストレット」である。下記は終結部にあるストレット(縮小主題)。
導入部の最後の方、終結部の最初の方で出てくるので、3部構成を区切る役割を持っているようにも見える?が、厳密にその区切りにある訳ではない。
ちなみに、今使っている楽譜では、最後の方の 186 小節目(↓)が抜けていることを発見した。IMSLP の他の楽譜でも抜けているものがあるので、後世の学者・音楽家によって補完されたのかも知れない。
この小節はあった方が良さそうなので入れることにした。
他にも色々と分析してあるので、興味のある方は元の PDF をどうぞ…(^^;)。
…ということで、概要は少し分かった気がするので、練習に際しては主題(拡大、縮小も含めて)と 3部構成を意識したいと思う。
あと、対主題(CS: Counter Subject)も沢山出てくるので、ある程度はこの資料を見て参考にしようと思っている。
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