2025年3月7日金曜日

かてぃん君が推薦する良書『脳と音楽』:音楽への理解が深まった♪…かも

脳と音楽』という難しそうなタイトルの本を読んだ。サブタイトルの「基礎から身につく『大人の教養』」よりも、帯の「角野隼斗氏推薦」に惹かれて…(^^;)。

脳科学者が書いた本なのでやや理屈っぽいところはあるが、その理屈が分かりやすく書いてあるので読みやすい。「角野隼斗氏」の言葉にあるように「音階/音律の成り立ち」については最高の解説だと思った ♪

📗脳と音楽(伊藤 浩介 著)



内容の紹介ができるほどの知識はないので、つまみ食い的感想文。

第1章「音波と音」に書いてある「音波と音は違う」という話は、言われてみればその通りと思うが、普段は混同しているような気がする。

音波は空気などが振動する物理現象。で、音はそれが耳から脳に(形を変えて)伝わって生じる「感覚」である。なるほど…♪


第2章から第4章まで 100ページ以上にわたって、「音の誕生」「音から音階へ」「ドレミの誕生」と、感覚である「音」から「ドレミファソラシ」の音階がどうやってできたのかが、丁寧に解き明かされる。

その中で、耳が音波をどう処理しているのか、その仕組みから「全音」が生まれ、音の周波数の整数比(倍音など)や協和的な音程の話などから「五音音階」「教会旋法」そして「ドレミファソラシ」に至るのだが…要約するのは私の手には余る…(^^;)。

いくつか面白いと思ったことをメモ的に書いてみる。


耳の中にある「蝸牛」は音波の周波数に対応した部分が反応するのだが、反応するのは一点ではなく、その周波数を中心にして少し幅を持っている。

それを「臨界帯域」というのだが、この「幅」のために二つの音が別々の音に聞こえるためには、その幅が干渉しない程度に離れている必要がある…そのあたりから「全音」ができる…ということのようだ。


五音音階(ヨナ抜き音階、民謡音階、律音階などのペンタトニック)は、ある一音から完全5度と完全4度の音を足して、その音からさらに完全5度と完全4度の音を足すことで作られる。

ヨナ抜き音階(メジャー・ペンタトニック)や民謡音階(マイナー・ペンタトニック)は、オクターブの分割方法は同じで、始まりの音が違うだけ。

五音音階は、どのように音を選んでも半音ができない、多くの音の組み合わせが完全5度や完全4度になるという特徴を持っている。


五音音階による音楽は素朴で心地よいのだが、より複雑な変化やニュアンスに富んだ音楽(旋律)を作りたいという欲求から、五音音階の1.5全音を「全音+半音」に分割する(完全4度を2つの全音と一つの半音に分ける)方向に自然と向かうことになる。

その分け方は複数あるのだが、協和的な音程を優先すると完全4度を「全音+半音+全音」に分けることになる(詳しくは本を…(^^;)…)。

これで「ドレミファソラシ」が完成するのだが、どこから始めるかによって、ドリアン、フリジアン、…などの「教会旋法」8種類を含む 14通りの音階が可能となる。

その中で、ドを終止音とする「ドレミファソラシ」(アイオニアン)が選ばれたのは、調性音楽に適しているから、つまり「主音・属音・下属音・導音」を備えているから…という理由のようだ。


このあと「音律」の話、ピタゴラス音律、中全音律(ミーントーン)、平均律などの話になるのだが、面白かったが難しいので割愛させて戴く。

でも、読んでいる最中は何となく分かったような気になった…(^^;)?

一つ興味深かった(知らなかった)のは、ヴァイオリンなどの演奏では「イントネーション」といって、1曲の中でも状況に合わせて複数の音律を使い分けることをするようだ。

単音で旋律を弾くときは「ピタゴラス音律」、重音を弾くときは「純正律」と使い分けることによって心地よい響き、良い演奏効果が得られる…と説明してある。


第5章からは「音から音楽へ」「調性音楽の登場」「音楽のしくみ」「音楽と脳」「音楽とは何か」と、音楽史や和声・楽式論、そして音楽を聴いて心を動かされる仕組みや、そもそも音楽とは何か…といった興味深い話が続く。

「弛緩と緊張」「情報量」「繰り返しと変化」といった、割とよくある話から、「音階音のキャラ」「和音のキャラ」みたいな話まで、盛りだくさんだが、脳科学や心理学などとの関係で(学際的に?)説明されるので飽きない(面白い)。

弛緩と緊張には、音そのもの(大きさ、音高、音色など)から受ける「感覚的」(情動的)なものと、音と音の関係や聴く側の期待とのズレなどから生じる「認知的」(脳としてはより高次的)なものがある…という話はなるほど…と思った。

脳に「言語野」はあるが「音楽野」はないという話も面白かったが割愛…。


その他のメモ。

音楽史の言葉で「慣用期」(common practice period :1600年〜1910年頃)というがあることを初めて知った。日本ではほとんど使われない?狭義の「クラシック音楽」が確立した時期(バロック・古典・ロマン)を指す言葉のようだ。

「音高」(音階音のキャラの違い)を徹底的に排除してすべての音高の情報量を最大化(発生確率の均等化)するのが「12音技法」。さらに強弱や音色まで情報量を最大化したのが「トータル・セリエリズム」である。この方向での音楽の進化は 1950年頃に理論的な行き止まりに達した。


そもそも「音楽とは何か?」に対して色んな音楽家・演奏家などが言葉を残しているが、一番気に入ったのはバーンスタインの "Music just is"(音楽とは音楽でしかない?)という言葉。 

この本なりの「ファイナル・アンサー」は、「人が人へ音を介して意図を伝える情報のうち、言葉で伝えられないものが音楽」だそうだ。

言葉で伝えられるかどうかの判定は「翻訳可能」かどうかで決まる…とのこと。


文末に参考図書「もっと学びたい方へ」が載っていて、興味を持ったもの。最後の本はずっと前に読んで、とても気に入っている本。

---天才たちの創造性と超絶技巧の科学(朝日新書 2022/2/10)

---音楽の何に魅せられるのか?(2011/12/21)

---超絶技巧のメカニズム(2012/1/23)



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