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2021年8月10日火曜日

あるピアノコンクール審査員の告白…それでもコンクールは面白い…(^^;)

「あるピアノコンクール審査員の告白」という、ちょっと興味をひかれた記事があった。


そこに紹介してあった「告白」記事を読んでみた。記事を書いたのは Israela Margalit というアメリカのピアニスト&脚本家(1944年、イスラエル生まれ)。



長文の英語なので、気になる部分だけをざっと読んでみた。

書いてあることは、ピアノコンクールの審査員としての悩みと、コンクールの審査が必ずしも公平には行われていないことのいくつかの例などである。

内容としては、これまでにも他の人たち(Slipped Disc を主催しているノーマン・レブレヒト氏など ↓)から指摘されていることで、それを実際にコンクールの審査員を経験した人が裏付けてくれているという記事だ。



以下、少しだけ抄訳・意訳してみる。


審査の投票システムは注意深く作られているのだが、それでも、月並みなピアニストが優勝したりする。それにはいくつかの理由がある。

例えば、私がある国(政府)から派遣された審査員だとすると、自分の国のコンテスタントには比較的高い点をつけ、ライバル達には低い点をつける。他の審査員も同様だとすると…。

あるコンクールのオブザーバーをしたときのこと。審査員団が二つのグループに分かれていた。伝統を重視するグループと新規性や個性を重視するグループ。結果的に優勝したのは、どちらのグループからも嫌われなかった、あまりパッとしないピアニスト…。

あるコンクールでは、主催者側がひいきのピアニストを勝たせるためのキャンペーンを行っていた。審査員がそのことを公表したりすれば、二度とそのコンクールには(審査員として)呼ばれなくなるだろう。


審査員の悩みの一つとして、勝ち上がれなかったコンテスタントとの会話について、こんなこと(↓)が書かれている。


敗者は「なぜ私が落ちたのか教えてほしい。どうすれば成長できるかも…」と尋ねてくるが、彼らが欲しいのは正直な答えではなく才能を認めてもらうことなのだ。

私が言えるのは、彼らの演奏を楽しんだことと、審査結果に彼らの名前がないことに驚いたこと…くらい。でも、そういう答えは、彼らに希望を与えることは出来ても、成長の助けにはならない。


他にも、色んなことが書いてあるが、長い英文なので省略させて戴く…(^^;)。


音楽コンクールの審査を「公平」なものにすることは、永遠の(たぶん解決しない?)課題なのかも知れない。ときどき「改革」が叫ばれたり、一部行われたりするが、大きく改善したような話はほとんど聞かない。

そもそも「芸術」の優劣をつけることに疑問を呈する意見もある。

それでも、ピアノコンクールを十分に楽しませて戴いている身としては、コンクールの存在自体を否定する気はまったくない。

参加するピアニストのために、できるだけ「公平」であって欲しいとは思うが、完全に「公平」というのは無理だろうと思う。ただ、あからさまな「えこひいき」「身内びいき」みたいなことはやめて欲しい。


自分の生徒を勝たせる…みたいなことは、残念ながら今でもあるようだ。

今年のエリザベート王妃コンクールでは、審査員長 Gilles Ledure が役員を務める "Queen Elisabeth Music Chapel" の "Artists in Residence" の一人である Jonathan Fournel くんが優勝している。

✏️Artists in Residence(Queen Elisabeth Music Chapel)

✏️Board members(Queen Elisabeth Music Chapel)


もちろん「実力」で勝ち取った 1位かも知れないが、個人的には疑問を感じた…。


私が国際ピアノコンクールが好きな理由はいくつかある。

第一は、新しいピアニストとの出会いである。色んなピアノ曲を知ることもできるし、多様な演奏を聴く機会でもある。ネット配信などの充実は本当にありがたいことだ ♪

それと、苦しんでいるピアニストたちには本当に申し訳ないが、自分の好みのコンテスタントを見つけて、応援するのも楽しい ♪

あと、たまにではあるが、審査員の先生方の意見や本音(不満?)などが記事に出ることもあって、色んな考え方を知ることができるのも面白い…(^^)♪


ピアニスト側から見ると、優勝・入賞してその後のキャリアにつなげることが一番の目的なのだろうが、それ以外にも意義を見出しているピアニストもいるようだ。

この記事(↓)で紹介しているピアニストは、国際コンクールは「戦う場所」ではなく、音楽家にとって一番大事な「人前で弾くって言う事」、つまり演奏機会の一つととらえている。なるほどと思った。


確かに、自分でコンサートを開くことは大変だろうし、ましてやオーケストラとの共演となると、若いピアニストにとってはそう簡単なことではないだろう。

彼の「僕は勝ち負けを考えた事は無い。はねられたなら、審査員が僕とは感覚が違うって言うだけさ」という考え方も共感できる ♪


ちなみに、今年 10月に本選が開催されるショパン国際ピアノコンクールでは、コンテスタントに審査員の生徒がいる場合、その生徒には投票できない(点数をつけることができない)仕組みになっている。さらに、採点表はあとで公表される。

前回 2015年の採点表を見ると、なかなか興味深いことが見えてくる…(^^)♪ 他のコンクールでも、採点結果の公表を義務付けてはどうだろう?



さて、今年のショパンコンクールはどんな結果が待っているのか、楽しみだ…(^^)♪


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