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2014年9月23日火曜日

「ピアノ音楽史事典」から:現代音楽とピアニスト

《現代ピアノ音楽の勉強を始める》に書いたように、少しまじめに現代ピアノ音楽を勉強しようかと思っている。

とりあえず、『ピアノ音楽史事典』の近現代史のメモを作って、現代音楽史の流れを概観したあと、近藤譲氏の『線の音楽』を読み進めながら「読書ノート」を作り始めたところである。



『ピアノ音楽史事典』メモ


『線の音楽』ノート


「ピアノ音楽史事典」で面白いと思ったことをいくつか書いてみる。


■ ドビュッシーとシェーンベルクは同時代

現代音楽、とくに現代ピアノ音楽はドビュッシーから始まると言われる。そして、現代音楽のいくつかの要素は、ドビュッシーの中に見られる。全音階や旋法による旋律、伝統的和声からの離脱や不協和音の多用、不規則なリズムやクロス・リズム(ポリリズム)などである。

「現代音楽」という言葉は紛らわしくて、歴史の流れを誤解することがある。例えば、シェーンベルクはドビュッシーと一回り違う(12歳若い)だけで、ほぼ同じ時代に活躍している。シェーンベルクが無調音楽を書いたころに、ドビュッシーは《前奏曲集》を書いている。

また、ベルクが《ソナタ》を作曲した1908年には、ラヴェルの《夜のガスパール》、プロコフィエフのソナタ第4番、フォーレのノクターン第9番とバルカロールなどが作られている。従来の音楽と新しい音楽が混じっていた時代なのだ。


■ 2回目の新しい音楽への実験

20世紀初頭にはシェーンベルク等による新しい音楽の試みが行われたわけだが、20世紀の後半には2回目の実験が始まった。

テープ録音や電子音などこれまでにない素材が使われたのが特徴のひとつである。自然音などを使ったミュージック・コンクレートや人工的な音素材による電子音楽が作られた。また、ジョン・ケージのプリペアド・ピアノも、ピアノの音のいくつかを変化させることで、新しい音楽(楽器)を創り出す試みである。

しかしこの時代にも、従来の手法で書かれた音楽も共存している。例えば、ラフマニノフやストラヴィンスキー、あるいはプロコフィエフに続く世代のカバレフスキーやハチャトゥリャン、ショスタコーヴィチなどは、新しい語法を使用していても、上記のような実験的手法はほとんど使っていない。


■ 2種類のピアニスト:再現芸術家と同時代作品の紹介者

現代のピアニストは、長く厳しい訓練の成果を使ってピアニスト自身の解釈による演奏をステージで披露する。19世紀には普通だった「ピアニスト=作曲家」という形の音楽家は少なくなり、ほとんどのピアニストは再現芸術家ということになる。

その一方で、同時代の作曲家の作品を紹介する音楽家としての役割に重きを置くピアニストも存在する。この場合、作品そのものを理解し、表現方法を自ら考え出し、新しい音楽を音にするというスペシャリストとしての側面が大きくなる。

たしかに、日本の現代ピアノ曲を探していると、大井 浩明さんのような、同時代作品の初演を積極的に手がけているピアニストにも遭遇することがある。「同時代作品の紹介者」としてのピアニストも、もっと注目されるといいのだが。

それと、ファジル・サイのような「ピアニスト=作曲家」ももっと増えてくると、現代ピアノ音楽シーンももっと活性化されて面白くなるのではないかと思う。こういう音楽家たちに期待したい。と思う一方、聴き手としてはそういう音楽にもっと親しむべきだと思う。



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