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2024年11月22日金曜日

Schubert さすらい人幻想曲 ハ長調 D 760:異彩を放つピアノ作品、多くの名演奏を紹介 ♪

シューベルトのピアノソナタ全曲鑑賞、今日はちょっと寄り道をして「さすらい人幻想曲」 ハ長調 D 760 。有名な曲で個人的にも大好きな曲。

シューベルトが 3年間ほどピアノソナタから離れてオペラなどの創作に没頭し挫折したあと、1822年のこの作品で新たな書法と構造への試みを行い、その成果がその後のソナタ制作に反映されることになる。シューベルトのピアノソナタを考える上でも重要な作品。




「新たな書法と構造」の試みによって、この作品は、シューベルトのピアノ作品の中でも異彩を放つ特別なものとなっている。

第1楽章・緩徐楽章・スケルツォ・フィナーレに相当する「4楽章構成のソナタ風作品」であると同時に、全体が一つの「幻想曲」として有機的にまとまった構造となっている。

冒頭の「ターンタタ」という長短短のリズム(ダクチュルリズム)が全曲を支配し強い統一感を作り上げている点では、1つの動機から発展した単一楽章のソナタとも考えられる。

この手法はベートーヴェンの「動機労作」を意識したものと思われる。ベートーヴェンに対する意識は最終楽章での対位法の使用にも見られる。

また、シューベルトの他のピアノ作品と比べても、難易度が極めて高く、アルペジオの多用など思い切りヴィルトゥオジティを追求したように見える。

これは、オーケストラの響きをイメージしながら作曲したのではないかと推測できる。その結果、シューベルト自身もうまく弾けないほどの難曲になった…(^^;)?


この曲の愛称は、第2楽章(変奏曲)の主題がシューベルトの歌曲「さすらい人」D 493(の第2節)から引用されているからである。第2節の歌詞と訳を参考までに。

Die Sonne dünkt mich hier so kalt,
Die Blüte welk,das Leben alt,
Und was sie reden,leerer Schall,
Ich bin ein Fremdling überall.

ここで太陽はわたしにはとても冷たく思え
花々は萎れ、あらゆる命は老い
人々の話す言葉は空虚に響く
わたしはどこにいてもよそ者なのだ


結構たくさんの演奏を聴いたが、好きな曲なのでどの演奏もそれぞれにいい感じに聴こえてしまう。色々聴いているうちにどれが私の「お気に入り」なのか、この曲にどういうイメージを持っている(期待している)のか分からなくなってしまった…(^^;)。

何となく気に入った順に名演奏をご紹介する。結果的には 9個になった…。ちょっと多すぎるので、この作品はもっと聴き込む必要があるのかも知れない。


エフゲニー・キーシン(Evgeny Kissin、露、1971 - )の若い時のライヴ演奏。これは、聴いた中では私の好みに一番近いと感じたもの。音楽(音響)としても美しく、聴き応えもある。



ユリアンナ・アヴデーエワ(Yulianna Avdeeva、露、 1985 - )の 2019年のライヴ演奏。これも勢いがあって素晴らしいと思う。



この曲の名演奏と言えば必ず登場するスヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter、ウクライナ、1915 - 1997)、1963年の録音。さすがの演奏。

(トラックNo. 1〜4)


ペーター・レーゼル(Peter Rösel、独、1945 - )、1971年 26歳のときの録音。好印象 ♪

(トラックNo. 15〜18)


ギャリック・オールソン(Garrick Ohlsson、米、1948 - )の演奏はそれほど聴くことはないのだが、このライヴ演奏はちょっと気に入った ♪



舘野 泉さん(1936 - )の 1992年リリースのアルバムに入っている演奏もなかなかいい ♪

(トラックNo. 1〜4)


バッハでよく聴いているダヴィッド・フレイ(David Fray、仏、1981 - )だが、シューベルトもいい感じだ ♪ 2006年リリースのアルバム。

(トラックNo. 1〜4)


シューベルトの演奏では一目置いているポール・ルイス(Paul Lewis、英、1972 - )だが、この曲に関してはやや物足りなさを感じた。もう少しキレが欲しいと思った。

(トラックNo. 1〜4)


この曲の名盤紹介によく登場するアルフレート・ブレンデル(Alfred Brendel、チェコスロバキア、1931 - )の 1988年7月録音の音源なのだが、個人的にはあまり好みではないかも…。

(トラックNo. 5〜8)


そして、残念ながら選外?になったのが、期待しながら聴いたアレクサンドル・カントロフ(Alexandre Kantorow、仏、1997 - )の新譜。11月1日発売の CD にブラームスのピアノソナタ第1番と共に収録されている。


全体的に悪くない演奏だと思いながらも、細かいところのリズム感や間合いなどでやや違和感を感じる。要は、私の好みの演奏からすると何かが違っているのだと思う。まぁ、この辺りは人それぞれの「好み」によるのかも…。

♪ Alexandre Kantorow plays Brahms and Schubert:アルバム
(トラックNo. 10〜13)
✏️シューベルト:幻想曲 ハ長調 D760 作品15「さすらい人幻想曲」(佐藤卓史)

✏️名盤 シューベルト:さすらい人幻想曲 D760(クラシック音楽の名曲名盤この一枚)

✏️SCHUBERT online



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