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2022年5月10日火曜日

🎹S.バーバー 1910-1981「現代音楽」の要素を含む「最後のロマン派」

《鍵盤音楽史:現代》 7人目の作曲家は、サミュエル・バーバー(Samuel Barber, 米, 1910-1981)。優れたピアニスト、声楽家(バリトン)でもあった。

私自身は、「弦楽のためのアダージョ」(Adagio for Strings)が有名な現代作曲家…くらいの知識しかなかった。しかし、意外にも「現代音楽」要素は少なく、伝統的な作風で、新ロマン主義に分類されているそうだ。




サミュエル・バーバーは、米ペンシルヴェニア州に生まれ、6歳でピアノを、7歳で作曲を始めた。1924年、14歳でカーティス音楽院に入学。ロザリオ・スカレロに作曲を学んだ。

1936年にイタリアに留学し、同地で「弦楽四重奏曲第1番ロ短調」を作曲。のちに、この第2楽章が「弦楽のためのアダージョ」として広く親しまれることになる。

1947年、チェロ協奏曲がニューヨーク批評家協会賞を受賞。1957年のオペラ「ヴァネッサ」と 1962年のピアノ協奏曲でピュリッツァー賞を受賞。


同世代のコープランドやカーターなどとは違ってモダニズムや実験的姿勢に走らず、和声法や楽式においてかなり伝統に従っている。

バーバーの作品は豊かな旋律が特徴的で、新ロマン主義に分類され、同じくイタリアに留学した米国の作曲家ハワード・ハンソンと並んで「最後のロマンティスト」と評される。

ただし、「ヴァイオリン協奏曲」のフィナーレにおける無調や、「ピアノ・ソナタ」の中間楽章における12音など、現代的な要素も見られる。


ピアノソロ作品(とピアノ協奏曲)を年代順に並べてみた。ピアノソロ以外はグレーの文字にしてある。(出典:Wikipedia など)

  1. メロディ (1917)
  2. ラルゴ (1918)
  3. 子守歌 (1919)
  4. 3つのスケッチ (1923)
  5. ファンタジー (1924)
  6. カリヨンのための組曲 (1924)
  7. メイン・ストリート (1926頃)
  8. 2声-3声のフーガ (1927)
  9. 間奏曲 I(ジャンヌのために)(1931)
  10. 遠足(ピクニック)Op.20 (1942~44)
  11. ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26 (1949)
  12. 組曲 思い出(スーヴェニール)Op.28 (1951):ソロ、4手
  13. 夜想曲(ジョン・フィールドを讃えて)Op.33 (1959)
  14. ピアノ協奏曲 Op.38 (1961~1962)
  15. バラード Op.46 (1977)


ちなみに、シャーマー社というところから『バーバー : ピアノ作品全集』(2010年)という楽譜が出ているが、その収録曲は下記。

  1. 遠足 Op.20
  2. ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26
  3. 思い出 Op.28
  4. ノクターン Op.33
  5. バラード Op.46
  6. 間奏曲 第1番 (遺作)



以下、YouTube で聴いた音源の主なもの。


「遠足(ピクニック)Op.20」

ポリリズムなどが多用されていてちょっと面白い。第3曲などは美しいのだが「7:8」のポリリズムは弾けそうもない…(^^;)。下記の 4曲からなる。( )の中は「28段階難易度」
  1. Un poco allegro(22)
  2. In slow blues tempo(19)
  3. Allegretto(24)
  4. Allegro molto(24)


「ピアノソナタ 変ホ短調 Op.26」

「現代音楽」的だが、最終楽章のフーガはちょっと面白い ♪ ピアノはケネス・ブロバーグ。2017年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール(2位入賞)での演奏。


「思い出(スーヴェニール)Op.28」(4手)

バーバー自身が友達との楽しみのために書いたピアノ連弾曲を、本人がオーケストラ用のバレエ組曲(オーケストラ版)としてまとめ、のちにそれがピアノソロ用、ピアノ連弾用に編曲された。ピアノ連弾のレパートリーとしてそれなりに人気があるようだ。

ワルツ、ショティッシュ(スコットランド舞踊)、パ・ド・ドゥ、トゥー・ステップ、ためらいのタンゴ、ギャロップ の 6曲からなる。


「夜想曲(ジョン・フィールドを讃えて)Op.33」

トリフォノフの『Chopin Evocations』という CD(ショパンの二つのピアノ協奏曲を中心にそこから「喚起」された作品を集めた2枚組CD)に収められている。

さすがトリフォノフ!素晴らしい解釈・演奏だと思う。美しい ♪


「バラード Op.46」

1977年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのために委嘱された曲のようだ。聴き応えがあっていい感じなのだが、課題曲だけあってかなり難しそう…。


「ピアノ協奏曲」
正直なところよく分からない…(^^;)。ピアノは初演も行った John Browning。George Szell 指揮の Cleveland Orchestra の演奏。


ここからは有名な「弦楽のためのアダージョ」関連の音源。


「弦楽四重奏曲 Op.11」(1936)

「弦楽のためのアダージョ」の原曲(第2楽章)。他の楽章もなかなかいいと思う ♪


「弦楽のためのアダージョ」

グスターボ・ドゥダメル指揮ウィーンフィルの演奏。美しい ♪


「アニュス・デイ」

「弦楽のためのアダージョ」のバーバー本人による合唱曲への編曲(1967)。


「弦楽のためのアダージョ/ ピアノソロ版」

やはり、弦楽合奏に比べると物足りない。ピアノは keisuke nakagoshi という人。


それから、歌曲もたくさん作っていて、「英語圏出身の歌手にとっては古典的なレパートリーとなっている」そうだ。本人が歌った録音(↓)も残っている ♪


作詞 Matthew Arnold、作曲 Samuel Barber。で、何と!この美しいバリトンはバーバー自身…(^^)♪ 伴奏は Curtis String Quartet。


参考:『あるピアニストの一生』の田所先生のご意見。『バーバーピアノアルバム』(全音)に収録されている曲についての難易度と解説がある。



ピアノソナタについては、「20世紀のアメリカ音楽の最高峰ともされる作品。とくに終楽章は傑作と言われている」とのこと。難易度はもちろん最高の「28」で「プロ用」。

「ピクニック」の 4曲については、「上級の生徒をお持ちの先生ならば持っていると役に立ちます。…新しもの好きの生徒に使えます」と書いてある。

私も「新しもの好き」なのだが、この 4曲(難易度 19〜24)はちょっと無理かも。

出典:✏️ピアノ教材研究/ バーバー(あるピアニストの一生)


主な参考記事は下記。

✏️サミュエル・バーバー(Wikipedia)

✏️バーバー 1910-1981(PTNA)


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