ページ

2019年8月18日日曜日

小山実稚恵さんのベートーヴェンの本で知ったこと ♪

『ベートーヴェンとピアノ 「傑作の森」への道のり』という面白そうな本を見つけたので読んでみた。ピアニスト小山実稚恵さんと音楽学者の平野昭さんの対談という形。

知らないことが色々と書いてあって、面白いというかとても勉強になった…(^^;)。




とり上げられている作品は、ピアノソナタやピアノ協奏曲などの「ピアノ曲」だけではなく、室内楽やチェロ・ソナタなどピアノを含むものまで多数…。

《選帝侯ソナタ》(WoO47)などから始まって、《クロイツェル・ソナタ》(ヴァイオリンソナタ第9番)まで、18回にわたる対談が載っている。目次はコチラ

今回は、ちょっと面白いと思ったこと…、というかこの本で初めて知ったことをいくつか書いてみたい。自分の無知をさらけ出すような記事になりそうだが…(^^;)。


チェロソナタやヴァイオリンソナタは、弦楽器が主体でピアノは伴奏…だと思っていたのだが、これは大きな誤解だということを、恥ずかしながら初めて知った…(^^;)。

ベートーヴェンのチェロソナタでは、チェロとピアノが対等な役割を持っている。こういう形のチェロソナタを書いたのはベートーヴェンが初めてで、それまでのチェロソナタは「チェロと通奏低音」という形だったとのこと。

ベートーヴェンが作品 5 の第1番・第2番のチェロソナタを書いたのは、ジャン=ルイ・デュポールという優れたチェロ奏者との出会いがあったから。また、ベートーヴェン自らが弾いてアピールするために、ピアノパートも大活躍する構成になっているとのこと。

 Argerich / Maisky, Beethoven Cello Sonata No.1 in F major Op.5


また、ヴァイオリンソナタに至っては、もともとはピアノが主体で、ヴァイオリンはピアノに追従するオブリガートのようなものだったそうだ。これはとても意外…。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタでも、第3番まではピアノが主体となっている。それが、第4番からヴァイオリンとピアノが対等な関係になっていき、交響曲のような名作、ヴァイオリンソナタ第5番《春》につながって行くことになる。

 Kremer / Argerich, Beethoven Violin Sonata No.5 in F major, op.24 "Spring"


ピアノソナタについて一つ面白いことが書いてあった。作品49の 2曲(第19番と第20番)について、これは実は一つのソナタ作品だったのでは?…という話。

この作品はピアノソナタ第4番の前に作られている。番号は出版の順番になっているので、作曲順とは異なっているのだ。

で、第1番から第4番の時期のソナタは 4楽章構成。作品49も楽章を並べ替えるとこういう(↓)4楽章構成のピアノソナタになりうる…という話。真偽は確かではないが面白い ♪

  • 20番第1楽章 ト長調 Allegro, ma non troppo
  • 19番第1楽章 ト短調 Andante
  • 20番第2楽章 ト長調 Tempo di Menuetto
  • 19番第2楽章 ト長調 Allegro

誰か、こういう構成で演奏してくれないかな…新解釈として…(^^;)。


ベートーヴェンのピアノ協奏曲は 5曲残っているが、実は「ピアノ協奏曲 第0番 変ホ長調 WoO4」というものが存在するらしい。ちなみに、ヴァイオリン協奏曲 Op.61 を自らピアノ協奏曲に編曲したものもあるようだ。

第0番の協奏曲は 1784年に作曲されたが、ピアノ譜しか残っていない。そこに書き込まれたメモを元に、音楽学者ヴィリー・ヘスが管弦楽部分を加筆して出版したものが有名。

調べてみると、他にもフォルテピアノの第一人者でベートーヴェンでも定評のあるロナルド・ブラウティハムによるものなどがあるようだ。

ちなみに、小山実稚恵さんが今秋、この第0番を演奏することになっているそうだ。

 Piano Concerto No.0 in E flat major - Ludwig van Beethoven


ベートーヴェンの名前が大きくなって、他の作曲家に影響を与えるようになったことの典型例?として、ほとんど「パクリ」のような作品もあるという…。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番 Op.15 が出版されたのが 1801年。その 9年後に出版されたフリードリヒ・クーラウのピアノ協奏曲 Op.7 ハ長調がベートーヴェンの Op.15 に酷似しているという話…。

 Daniel Barenboim: Beethoven Piano Concerto No. 1 in C major Op. 15

 Friedrich Kuhlau - Piano Concerto Op. 7 (1810)


ただこの時代、貴族からの注文で「誰々風に…」という依頼もあったようなので、驚くようなことではなかったらしい。

例えば、ベートーヴェンの「ピアノと管楽のための五重奏曲」Op.16 もモーツァルトの「ピアノと管楽のための五重奏曲」K452「風に」作曲された可能性が高いそうだ。

 Beethoven Quintet Opus 16 Würtz, De Graaf, Meyer, Gaasterland, & Van de Merwe

 Mozart Quintet for Piano and Winds in E flat K452 - Whittington Festival


他にも面白い話はいくつかあるのだが、今日はこれくらいで…。

私としては、「ピアノ曲」以外の音楽ももっと聴こうという今年の目標を実行するにあたって、この本に登場する室内楽などの作品を手始めに聴いていこうと考えている。


参考:読んだ本は下記。

ベートーヴェンとピアノ 「傑作の森」への道のり




【関連記事】
《『ベートーヴェンとピアノ 「傑作の森」への道のり』目次》

《ロナルド・ブラウティハム Ronald Brautigam のベートーヴェンいい ♪》

《ベートーヴェンのピアノソナタ:難易度とチェック結果》

《「音楽と社会」:ベートーヴェンに学ぶ音楽と生活》


  にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ 

0 件のコメント:

コメントを投稿