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2017年2月16日木曜日

将来が楽しみなリュカ・ドゥバルグのインタビュー記事 ♪

ルカ君(リュカ・ドゥバルグ)は、この2月12日に米国のカリフォルニア・デビューを果たしたようだが、その1カ月前に行われた KQED の Elijah Ho 氏によるインタビュー記事(The Counterpoints: 2017/2/9)がなかなか興味深いので、ご紹介したい。

といっても、けっこう長いので私自身が面白いと思ったところをかいつまんで…。




リュカ・ドゥバルグが他のピアニストとはちょっと違う魅力を持っているのは、「単なるピアノ弾き」にはなるつもりはない、という本人の考え方によるところが大きいのだろうと思う。

それは、2015年のチャイコフスキー・コンクールで一番目立った4位になった頃から感じていること(下記記事)ではあるが、このインタビューではさらに進化した?彼の音楽に対する思いが出ている気がする。



ジャズ・ミュージシャンのことを聞かれて、こんなこと(↓)を言っている。(抄訳・意訳)


ジャズの即興演奏を行うには、ハーモニー、リズム、作曲技法など実に多くのことをマスターしている必要があるが、最近の才能ある(クラシックの)ピアニストはそんなことなど気にもかけていない。

僕にとって、にこやかにステージに登場してショパンのコンチェルトを弾いてのけるだけの「ピアノの達人」("a master of the piano")になるつもりはない。音楽家でなくたって「ピアノの達人」にはなれる。

例えば(ジャズ・ピアニストの)アート・テイタムはそのすごいテクニックを見せびらかしているわけじゃない。やってることすべてに意味があるんだ。

リストやショパンだって、ジャズを聴けば非常に興味を持ったと思う。だって、彼らは作曲家であると同時に、即興の得意な演奏家だったわけだから…。


リュカ・ドゥバルグは、ピアニストを超えた「音楽家」になりたいのだと思う。「リストやショパンだって…」というくだりは妙に説得力がある。


また、こんなこと(↓)も言っている。


音楽は生きていなくてはならない。("Music needs to live.")ステージが退屈だとすれば、そこには音楽が生まれていないということだ。音楽は退屈になんかなり得ない。

ショパンやモーツァルトには、人を退屈させようと思って書いた作品など一つもない。作曲家たちは、いつも力強く何かをコミュニケートしようとしている。心の深いところにある何かを…。音楽には生命が必要だ。

毎日10時間ピアノの練習をするだけでは、演奏に生命を吹き込むことはできない。息をして、他の人と一緒にいろんな経験をして、「白鍵と黒鍵」以外の多くのことを知る必要がある。


これは、彼のステージを聴いたときの実感(↓)から、とても納得できる言葉だ。有言実行していると思う。



「生きた演奏」が少ない原因の一つにアカデミズムがある、というような流れで出た話も面白い。


私ももっとリストやショパンを弾きたいのだけど、その演奏にはすでに確立され洗練された型のようなものがあって、いやになってしまう。すぐに誰かが「それはショパン(の演奏としてあるべきもの)じゃない!」などと言うんだ。

楽譜そのものから考えるのではなく、あるべき演奏のお手本("references")を使うというのは、私にとっては耐えられない。私はできるだけ正直でありたいし、作品が伝えようとしていることを表現するためのベストな方法を探したいと思っている。


ポピュラー音楽についての質問に「面白いものもいいものも沢山あると思う」と答えたあとで、音楽そのものより、音楽についての批評や評判(SNS?)のあり方になかなかいいことを言っている。


問題は、いいものについてあまり話をしないことじゃないかと思う。映画なんかでも、いいものがたくさんあるのに、みんな、できの悪い映画のことばかり話したがるみたいだ…。なぜそうなるんだろう?


日本の音楽「評論家」みたいに何でも「素晴らしい!」で済ませてしまうのも困りものだが…。


ちなみにこのインタビューの中でも、音楽評論家の役割みたいな話が出ている。はっきりとは言ってないが、現代の「評論家」たちには厳しい見方をしているようだ。

インタビュアーの「シューマンがショパンやブラームスを論評するような時代じゃなくなったよね」という言葉に対する反応。


ドビュッシーも音楽評論家だった。

評論家というものが、ただ音楽家たちを比べて、悪口を言うだけのことであるなら、それは「遊び場」みたいなもので、真面目にとりあうようなものではないと思う。


このインタビュー記事を読んで、リュカ・ドゥバルグはまだまだ進化し続けていくような期待感を感じた。

有名音楽事務所と契約して、ソニーからCDを出すようになって、「ビジネス」しか考えないようなトリマキに潰されないかと心配したこともあったが、今のところそれは杞憂のようだ。

未来の巨匠、リュカ・ドゥバルグ、頑張れ…(^^)!!



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