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2022年8月11日木曜日

memo: 現代音楽作曲家をあえて分類してみる?

《鍵盤音楽史:現代》プロジェクトでは、55人の現代音楽作曲家のピアノ曲を順次聴くことにしている。28人目のヘルムート・ラッヘンマンまで来たので、半分を過ぎたところ。

ここまで聴いてきて、「現代音楽」といっても作曲家によってかなり方向性が違っているなぁ…ということを何となく感じている。

とりあえず、今感じていることをメモしておきたい。


今年生誕100年のクセナキスの楽譜


ピアノの練習を始めてから、「4期」という言葉を知った。「バロック〜古典〜ロマン〜近現代」という音楽(ピアノ曲?)のおおまかな時代区分である。

…のだが、「近現代」はあまりにも大雑把すぎるだろう!…と以前から思っていた。「現代音楽」と言われる部分だけとっても、シェーンベルクの「12音技法」から 100年も経っているのに、その 1世紀にわたる音楽の潮流や傾向がよく分からないのだ。


《鍵盤音楽史:現代》プロジェクトを始めたのは、せめてピアノ音楽についてだけでも、その潮流や傾向、あるいは作曲家の作風や作品の特徴を知りたいと思ったからである。

…といっても、専門知識があるわけではないので、自分の好みと感性を信じて、気に入ったピアノ作品を探す…ということしかできない。作曲技法がどうだ…といった話は、解説を読んでもよく分からないことが多い…(^^;)。

そもそも、「現代音楽」は「作曲技法」にこだわり過ぎていると思う。結果としての「音楽」やその「音響」の美しさ・新鮮さではなく、「技法」の新しさを競っているように見える。いい音楽を楽しみたいと思っている一聴衆にはあまり関係のないことだ。


…と、前置きが長くなってきた…。

今回は、十分に考えた結果ではなく、現代ピアノ曲を聴きながらそれぞれの作曲家のことを調べる中で、何となくおおまかにグループ分けのようなことができるのではないか?…と思ったので、忘れないうちにそれをメモしておこうと思ったものである。

5つのグループに分けられそうだ。


1. 前衛音楽の王道?

シェーンベルクあたりの「実験音楽」「前衛音楽」の伝統?の延長線上にある作曲家たち?「過去の伝統からの決別」と「新しい作曲技法の追求」を目指しているように思える。

例えば、メシアン、ケージ、ブーレーズ、ベリオ、シュトックハウゼン、バートウィッスル、ラッヘンマンなど。

バートウィッスルは、アレクサンダー・ゲール、ジョン・オグドン、ピーター・マックスウェル・デイヴィス、エルガー・ハワースとともに「マンチェスター楽派」を結成している。

この「前衛音楽」正統派?の作品は、一部を除いて私の好みではないことが多い。メシアンの「鳥のカタログ」などはその例外の一つ。


2. 過去の伝統を包含した上で自らの個性を確立

バロック以前から「現代音楽」まで、これまでの音楽の潮流をすべてを音楽の「伝統」として認めた上で、そこに新しいもの、自分ならではのものを構築していく作曲家。

「前衛音楽」などの技法も、バロック・古典・ロマン派の調性音楽などと同様に作曲技法の一つ、材料の一つとして認めながら、自らの個性・美学を追求していくという態度。

ラウタヴァーラの次の言葉が象徴的だと思う。

数千年の西洋音楽の歴史全体を、現代の音楽家は一つの領域として捉えるべきだ

このグループに属する作曲家としては、コープランド(ジャズ、アメリカ民謡)、ラウタヴァーラ(北欧音楽、スピリチュアル)、武満徹(邦楽)、近藤譲(「線の音楽」)など。


3. 現代音楽から訣別し独自のスタイルを確立

「現代音楽」から一旦距離を置いた上で、独自のスタイルを打ち立てた作曲家。現代音楽からの「訣別」と言っても、何らかの影響は残っている場合もあると思われる。

典型的なのは、ペルトの「ティンティナブリ」。

「現代音楽」で成功しながらも、違和感を感じて 12年間作曲から遠ざかり、その後、自分の感性にしたがって美しいピアノ曲を書き続けているピーター・シーボーンもこのグループに属する作曲家だと思われる。


4. 現代音楽から訣別し調性音楽に戻る(新ロマン派など)

必ずしも「現代音楽」からの訣別という過程を通っていない場合もあると思うが、要は「新古典派」「新ロマン派」と言われる作曲家たち。

典型的なのは「現代音楽からの訣別」を自ら語っている吉松隆だろう。


「最後のロマン派」と呼ばれるバーバーや「新ロマン主義」と言われることの多いカラマーノフもこのグループに入れていいと思う。


5. 何らかの特徴をとり入れ自分のスタイルを確立

このグループは、「現代音楽」との関係がどうかというより、自らのスタイルを作り上げる材料を外から持ってきている…というような作曲家たち。

例えば、ジャズをとり入れて成功したカプースチン、ラグタイムをとり入れたボルコムなど。あと、ミニマルミュージックを作品の中心に置く作曲家などもこのグループに入れていいかも知れない。フィリップ・グラス、マイケル・ナイマンなど…。


以上の 5つ以外にもまだありそうな気もしているが、とりあえず考えたのは以上。

これまでに聴いた 28人の作曲家をざっと見ても、この 5グループのどれに入れたらよいのか、分からない作曲家もいるので、もう少し考えてみようと思っている。

また、別の切り口として「宗教性」(ラウタヴァーラ、カラマーノフ、ペルトなど)や「地域性」(コープランド、ラウタヴァーラ、ボルコムなど)もあるかも知れない…。



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