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2021年3月12日金曜日

メンデルスゾーンのピアノ曲を概観する ♪

昨日の記事《メンデルスゾーンの謎:MWV番号?、未出版のピアノ曲も沢山?》の続きで、今日はメンデルスゾーンのピアノ曲の全体像を整理してみようと思った。

…と言っても、私の知識はゼロに等しいので、PTNA ピアノ曲事典の解説(星野宏美さん)に頼ることにした。この中に「メンデルスゾーンのピアノ独奏曲概観」という章があり、とてもよくまとまっているので、ここから抜粋することにした。




もともと理工系のせいか、文章を読んだだけではなかなか頭に入って行かない。箇条書きとか図にしないと分かった気にならないのだ。

で、上のような絵も作ってみた。これを眺めていると、何となく全体像が掴めたような気になるのだ。本当に理解しているかどうかは分からないが…(^^;)。

文章を読むのが得意な方は、PTNA ピアノ曲事典の解説を読まれた方が早いかも…。


閑話休題。

PTNAの記事では、メンデルスゾーンのピアノ独奏曲を 5つに分類(↓)してあって、それぞれに属する主なピアノ曲を挙げて、全体が掴めるようになっている。

  1. 古典派の伝統を引き継いだソナタ
  2. バッハの影響を色濃くみせる前奏曲とフーガ
  3. 名人芸的な要素の強い変奏曲
  4. 綺想曲、幻想曲、スケルツォ、練習曲
  5. 無言歌に代表される性格的小品

以下、これに従って主な作品を箇条書きで整理しようと思う。なお、「U 8」などの番号は「MWV番号」で、"MWV" を省略したもの。「U 8」は「MWV U 8」のこと。年号は作曲された年(私の趣味で年齢を追加してある)。


ピアノソナタ

  1. イ短調 U 8:1820年11歳
  2. ホ短調 U 19:1820年11歳
  3. ヘ短調 U 23:1820年11歳
  4. 第2番ト短調 Op.105/ U 54:1821年12歳
  5. 変ロ短調 U 42:1823年14歳
  6. 第1番ホ長調 Op.6/  U 30 :1826年17歳
  7. 第3番変ロ長調 Op.106/ U 64:1827年18歳

第2番・第3番が出版されたのはメンデルスゾーン没後の 1868年。Op.番号のついてない 4つのピアノソナタは近年になってようやく出版された。

ベートーヴェンの最晩年にあたるこの時期、若きメンデルスゾーンはベートーヴェンの後期作品から強い影響を受けている。Op.6の全体を貫くカンタービレな性格はベートーヴェンの後期ピアノソナタ Op.101や110に近く、力強い開始が印象的な Op.106は『ハンマークラヴィーア』に意識的に倣っている。

また、1823年にはホ長調のソナチネ MWV U 35 を作曲している。


なお、ロベルト・プロセッダによる『メンデルスゾーン :ピアノ独奏曲全集』では、「ピアノソナタ ハ短調」(1820年)という曲も収録されている。

3つの楽章に異なる MWV 番号(U 13, U 15, U 17)が付けられているので、現時点では一つのソナタとは認められていないのかも知れない。断片とか下書き的なもの?


前奏曲とフーガ


ピアノ用フーガは断片も含めて約20曲あるが、生前出版したのは 2曲のみ(↓)。

  1. 前奏曲とフーガ ホ短調 U 157, 65:1827年18歳(1842年出版)
  2. 6つの前奏曲とフーガ Op.35:1831~36年/22〜27歳(1837年出版)

メンデルスゾーンは10歳頃に作曲の勉強を始め、バッハの孫弟子にあたるツェルターのもとで、通奏低音、対位法、フーガなどのバロック的作曲技法を習得している。

彼は、ピアノやオルガン、室内楽や管弦楽、重唱や合唱のための数多くのフーガを作曲している。フーガ的書法を部分的に取り入れた作品はさらに多い。いずれもバッハへの深い敬意と、ロマン派特有の技巧的、感情的高まりが見事に一体となった力作である。

とくに Op.35 は、同じ年に出版されたオルガンのための《3つの前奏曲とフーガ》Op.37、前年に出版されたオラトリオ《パウロ》Op.36 とあわせて、バッハの絶大な影響の感じられる三連作となっている。

なお、メンデルスゾーンは 1829年(20歳のとき)にベルリンでバッハ《マタイ受難曲》の復活上演を成功させており、1835年からはライプツィヒ・ゲヴァントハウス・オーケストラの指揮者として活動している。

ちなみに、Op.35 のために作曲されたが、採用されなかった前奏曲が 3曲あり、作曲者の没後、《3つの前奏曲》Op.104a として出版された。


変奏曲


ピアノのための変奏曲は 3曲。いずれも 1841年(32歳)の作曲。生前に出版されたのは Op.54、有名な「厳バリ」のみ。他の 2つは 1850年出版。

  1. 17の厳格な変奏曲 ニ短調 Op.54/U 156
  2. 変奏曲 変ホ長調 Op.82/U 158
  3. 変奏曲 変ロ長調 Op.83/U 159

「17の厳格な変奏曲」は、ウィーンの出版社から、ボンのベートーヴェン記念像の建立資金を集めるための「ベートーヴェン・アルバム」への新作提供を依頼されて作曲された。

このアルバムには、メンデルスゾーンのほか、ショパン、チェルニー、リストら、当時の人気作曲家たち計10名が作品を寄せている。

「厳格な」は、当時の変奏曲につきものの「華麗な」に対するアンティテーゼ。


綺想曲・幻想曲・スケルツォ・練習曲など


  1. カプリッチョ 嬰ヘ短調 Op.5:1825年16歳
  2. ロンド・カプリッチオーソ ホ長調 Op.14:1830年出版
  3. 幻想曲 ホ長調 Op.15:1830年出版(アイルランド民謡「夏の名残のバラ」による変奏曲)
  4. 幻想曲 嬰ヘ短調 Op.28:1834年出版(「スコットランド風ソナタ」)
  5. 3つの幻想曲あるいはカプリス Op.16:1831年出版
  6. 3つのカプリス Op.33:1833~35年/24〜26歳(1836年出版)

Op.16 はウェールズで知り合った美しい3姉妹のために作曲したもので、自筆譜には、第1曲「バラとナデシコ」、第2曲「スケルツォ」、第3曲「小川にて」と記されている。


性格的小品


  1. 無言歌集第1巻 Op.19:1829年20歳
  2. 無言歌集第2巻 Op.30:1833年24歳
  3. 無言歌集第3巻 Op.38:1836年27歳
  4. 無言歌集第4巻 Op.53:1841年32歳
  5. 無言歌集第5巻 Op.62:1842年33歳
  6. 無言歌集第6巻 Op.67:1843年34歳
  7. 無言歌集第7巻 Op.85:1834年25歳
  8. 無言歌集第8巻 Op.102:1842年33歳
  9. 7つの性格的小品 Op.7(1827年出版)
  10. 6つの子供の小品 Op.72:1842年33歳(1847年出版)

無言歌集は第6巻まではメンデルスゾーン自身の編集。第7〜8巻は没後知人により出版されたもので、中にはメンデルスゾーン自身は「無言歌」と考えてないものも含まれる。

また、作曲家自身がタイトルを付けたのは「ヴェネツィアの舟歌」(Op.19-6、Op.30-6、Op.62-5)、「デュエット」(Op.38-6)、「民謡」(Op.53-5)の 5曲のみ。言葉では捉えきれない「何か」を純粋な音の響きで伝えようとするのが「無言歌」と考えた方がよい。

48曲以外にも、これまでに10曲ほどの無言歌が発掘されており、今後も新たな発見がある可能性も高い。


Op.7 は1824~27年作曲の初期作品を集めたもの。バロック的な対位法をロマン派的な小品に取り入れた意欲作で、とくに第3曲と第5曲は厳格なフーガとなっている。

Op.72 知人の子供たちのために作曲されたもの。


以上の概要(主な曲)を一枚の絵にまとめたのが冒頭に載せた図である。

あとは、楽譜の出版状況や IMSLP にあるピアノソロ曲の楽譜を調べて、選曲にとりかかれるのはその後になる。あと1〜2日はかかりそうだ…(^^;)。


以下、ご参考。(昨日の記事から再掲)


メンデルスゾーンを得意とするイタリアのピアニスト、ロベルト・プロセッダ(Roberto Prosseda、1975~)のピアノ作品全集(CD 10枚組)。


星野宏美さんオススメの楽譜。ヘンレ社の 3冊。

メンデルスゾーン: ピアノ作品集 第1巻/ヘンレ社/ピアノ・ソロ

収録曲
  • Capriccio op. 5
  • Sonata E major op. 6
  • Perpetuum mobile op. 119
  • Scherzo MWV U 54 (op. 119 in a different version)
  • Seven Character Pieces op. 7
  • Sonata B flat major op. 106
  • Scherzo b minor MWV U 69
  • Rondo capriccioso op. 14
  • Fantasy E major op. 15 
  • Trois Fantaisies ou Caprices op. 16
  • Fantasy op. 28
  • 3 Preludes op. 104, 1
  • 3 Etudes op. 104, 2 

メンデルスゾーン: ピアノ作品集 第2巻/ヘンレ社/ピアノ・ソロ

収録曲
  • Trois Caprices op. 33
  • Scherzo a capriccio
  • Album Leave op. 117
  • 6 Preludes and Fugues op. 35
  • Andante – Allegro op. 118
  • Andante cantabile – Presto agitato
  • Praeludium and Fuga e minor
  • Variations sérieuses op. 54
  • Gondola Song A major
  • Andante con Variazioni E flat major op. 82
  • Andante con Variazioni B flat major op. 83
  • Children's Pieces op. 72

メンデルスゾーン: 無言歌集/ヘンレ社/原典版

収録曲
  • 第1集 Op.19: 甘い思い出/後悔/狩人の歌/ないしょの話(信頼)/眠れぬままに/ヴェネツィアの舟歌第1 ト短調
  • 第2集 Op.30: 瞑想/安らぎもなく/慰め/道に迷った人/小川/ヴェネツィアの舟歌第2 嬰ヘ短調
  • 第3集 Op.38: 夕星/失われた幸福/詩人の竪琴/希望/情熱/デュエット
  • 第4集 Op.53: 海辺で/浮き雲/胸さわぎ/心の悲しみ/民謡/勝利の歌
  • 第5集 Op.62: 五月のそよ風/出発/葬送行進曲/朝の歌/ヴェネツィアの舟歌第3 イ短調/春の歌
  • 第6集 Op.67: 瞑想/失われた幻影/巡礼の歌/紡ぎ歌/羊飼いの嘆き/子守歌
  • 第7集 Op.85: 夢/別れ/うわ言/悲歌/帰還/旅人の歌
  • 第8集 Op.102: 寄るべなく/追憶/タランテラ/そよぐ風/子供のための小品(楽しい農夫)/信仰



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