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2019年9月21日土曜日

エリオット・カーターのピアノソナタは好きかも ♪

「美しい現代ピアノソロ」という記事の作曲家がやや期待外れだった(↓)ので…

《「美しい現代ピアノ曲」を聴き始めた…のだが…》

別の記事(↓)に紹介されている作曲家のピアノ曲に当たってみることにした。アルヴォ・ペルトとかの名前も入っているので、今度は大丈夫かと…(^^;)。

✏️Contemporary piano music?

16人ほどの作曲家とそのピアノ曲が紹介されているが、一人ずつボチボチ聴いていこうと思っている。今日はエリオット・カーター…。




曲を聴く前にまず驚いたのは、エリオット・カーターさんは、つい最近(2012年11月)まで生きておられた…ということ。

亡くなる 103歳までお元気で、亡くなる 3ヶ月ほど前には「12 Short Epigrams」という作品を完成させている。これは、ピエール=ローラン・エマールのために制作されたもの。


で、とりあえず、上の記事で紹介されていた 3つの作品 "Retrouvailles (2000), Intermittences (2005), Tri -Tribute (2005-6)" を聴いてみることにした。


 Retrouvailles

"Retrouvailles" というのはフランス語で「帰省」とか「reunion(同窓会など)」みたいな意味らしい。2分足らずの小品。現代曲らしさはあるが、音はきれい。

ただ、ピアノ演奏の動画付き(↓)で聴くと、なぜか?違和感のようなものがある。

 Elliott Carter: Retrouvailles


 2 Thoughts About the Piano: No. 1. Intermittences

"Intermittences for piano" (2005) は 7分ちょっとの曲。面白いとは思うが、「聴きごたえ」みたいなものが今ひとつ、私には感じられない。

音楽の「流れ」や「歌」みたいなものはあまり感じられず、強いて言えば、現代的な演劇にあるようなアクセントの強いセリフを聴いているような印象…?


 Tri-Tribute: I. Sistribute

音楽というよりも「ピアノで喋っている」という感じの短い(1分ちょっと)曲。

 Tri-Tribute: II. Fratribute

2分40秒のゆったりした曲。現代音楽の観賞力のない私にとってはやや退屈…。

 Tri-Tribute: III. Matribute

2分ちょっと。訥々と喋る一人芝居のような印象?よく分からない。


記事で紹介されていた曲以外に、少し長めの 2曲(「ピアノソナタ」と「ナイト・ファンタジー」)を聴いてみた。

Elliott Carter: Piano Sonata (w/ score) (1945/46, rev. '82)

今回聴いた中では一番好きな曲。聴き応えは十分にあるし、音楽的であるし(私の感じるレベルの…)、もう一度、あるいは他のピアニストでも聴いてみたいと思った。ちなみに、この音源のピアニストは Paul Jacobs という人。

初期の(1945-46年)、無調で複雑なリズムを駆使する以前の作品であることも関係しているのだろう。


 Elliott Carter - Night Fantasies (w/ score) (for piano)

聴きごたえはあるし、音楽的な流れや曲の構造を感じる部分もあるし、とてもきれいな音が聴こえてくる部分もある。一方で、宇宙人が喋っているようなフレーズも…(^^;)。

でも、聴き終わったあとで、もっと聴き続けたいとか「いいなぁ〜」という感じは、正直なところあまりしない。こんな美しい和音?…というか音の組み合わせをよく見つけたなぁ〜と思う部分もあるが、まだ私にはこの良さは分からない…。

ちなみに、この曲は Charles Rosen、Paul Jacobs、Ursula Oppens、Gilbert Kalish という、当時すでにカーター演奏のエキスパートであった 4人の優れたアメリカ人ピアニストから委嘱された作品だとのこと。


ここまで聴いた範囲でいうと、「ピアノソナタ」がちょっとお気に入りピアノ曲になりそうな気配。それ以外は、魅力的な部分もあるが、私にはまだ消化できないという感じ。

まぁ、室内楽やピアノ協奏曲も含めて、もう少し聴いてみたい作曲家ではある。


以下、エリオット・カーター(Elliott Carter、米国、1908/12/11-2012/11/5)の作風を年代別に整理しておきたい。作品は、ピアノを含むものに限定している。

出典は Wikipedia と下記の論文。

✏️エリオット・カーターの生涯を巡るピアノ作品


初期:ネオ・クラシック・スタイル(新古典主義)

この時期のピアノソロ作品としては「ピアノソナタ」(1945-46)のみ。ピアノの音域をフルに活用し、ピアノだからこそ可能な複雑なリズムパターンを駆使し、カーター特有の「流れの音楽」を作り出すことを意図した作品…だそうだ。


中期:ポスト・モダン・スタイル

この時期もピアノソロ作品としては「ナイトファンタジー」だけ。

この間、「リズミック・モジュレーション」を駆使し始め、「無調」「複雑なリズム」へと向かい、さらに、1960年代からは「ピッチクラスセット理論」や「ハーモニーの可能性の探求」を進めていく。(上記「出典」記事からの引用、よく分からない…(^^;)…)

この時代の作品に「ピアノ協奏曲」(1964)もある。


後期:90歳以降の新境地?

1980年代以降、「理論を手放さずに難易度が落ちて」聴きやすい作品が多くなった。結果的に、演奏家に受け入れられやすくなったようだ。

内容的にも、それまでの「厚いテクスチャー、複雑なリズムとハーモニーが織りなす音楽」から、「非常に透明で快活 さとユーモアが伴う即興的なアイディアに富んだ音楽」へと変化していった。

面白い例としては、ピアノとオーケストラのための《サウンディングス》(2005)がある。これは、指揮者兼ピアニストのために書かれた作品で、「ピアノソロ、ピアノを弾くのを止めてオーケストラ、指揮をするのを止めてピアノソロ」といった三部形式を採用している。ピアノ協奏曲のようでいて、そうでない…?


カーターの中期作品は、ピアノ作品に限らず、抽象性が高くかつ難しいためほとんど演奏機会がないようだ。今日ももっぱら演奏されるのは「ナイト・ファンタジー」(1980)以降の作品か、ヨーロッパから委嘱された「最近作」ということらしい。

ちなみに、1970年代後半にブーレーズの支援によって、ヨーロッパにも知られるようになり、世界的な巨匠としての地位を確立していったそうだ。


最後に、主なピアノ作品(ピアノを含む作品)を挙げておく。


ピアノ独奏曲

  1. ピアノソナタ (1945–46)
  2. Night Fantasies for piano (1980)
  3. 90+ for piano (1994)
  4. Two Diversions for piano (1999)
  5. Retrouvailles for piano (2000)
  6. Intermittences for piano (2005):2 Thoughts About the Piano: No. 1. Intermittences
  7. Catenaires for piano (2006):2 Thoughts About the Piano: No. 2. Catenaires
  8. Matribute for piano (2007)

ピアノ室内楽

  1. Elegy for viola and piano (1943)
  2. Duo for violin and piano (1974)
  3. Quintet for piano and winds (1991)
  4. Quintet for piano and string quartet (1997)
  5. ピアノ三重奏のための「Epigrams-エピグラム」(2012)


ピアノとオーケストラ

  1. ピアノ協奏曲 (1964)
  2. Dialogues for piano and chamber orchestra (2003)
  3. Soundings for piano and orchestra (2005)
  4. Conversations for piano, percussion, and chamber/full orchestra (2010)


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