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2021年6月13日日曜日

ラモーが作成した装飾音符の弾き方一覧表 Ornament Table、便利かも ♪

ラモーが作成したという "Ornament Table"(装飾音符表)というのを見つけた。装飾音符の記譜法とその弾き方を簡単にまとめた一覧表だ。便利かも…(^^)♪




この "Ornament Table" の出典は下記のようになっているので、1706年・1724年に出版されたクラヴサン曲集に収められているものと思われる。

Source: Jean-Philippe Rameau, The Books of 1705/06 and 1724, vol. 1 of New Edition of the Complete Keyboard Works, ed. Siegbert Rampe, trans. J. Bradford Robinson (Kassel: Bärenreiter-Verlag, 2004), 16.


左側に 12種類の装飾音符の記譜法と弾き方が例示されている。右側には、その他の演奏方法がいくつか挙げられている。12種類の簡単な説明を下記にまとめておく。


"cadence" はトリル。一つ上の音から始まる。



"cadence appuyée" はトリルの変形。最初の音が少し長くなる。



"double cadence" はトリルの最後にターンが加わる。



"doublé" はターン。



"pincé" は "cadence" と似ているが、主音から始まって一つ下の音と交互に繰り返す。



"port de voix" は一つ下の音が主音の直前に挿入され(保持され)る。ラモーのモデルでは、四分音符に対して八分音符が挿入されている。一つ前の音はこの音よりも下。



"coulez" は、一つ前の音が一音以上高い場合で、"port de voix" のように、一つ上の音が主音の直前に挿入される。



"Pincé et port de voix" は、一つ下の音から始まるトリルで、かつ最初と最後の音が少し長めになる。



"Son coupé" はスタッカート。ラモーのモデルでは半分の長さ。



"Suspension" はスタッカートだが、タイミングが少し遅れる。



"arpegement simple" はアルペジオ。スラッシュ記号が和音の下に付けば下から上、和音の上に付けば上から下へのアルペジオとなる。



"arpegement figure" は、アルペジオだが、和音にない音が追加されるもの。ラモーの例では「ソドミ」のドの前にシが追加されている(保持はされない)。



また、両手同時に上から下へのアルペジオがある場合、最初の音は拍の頭で左右同時打鍵し、次に右手、続いて左手のアルペジオを弾くようにする。




この資料を見つけたのは下記の論文である。

Ball State University という大学の博士論文のように見える。著者は Hiromi Sasaki となっているので日本人のようだ。

"Ornament Table" は、第2章の "Differences In Harpsichord And Piano; Performance Practices" の中にある。p.39(PDFのp.44)に "Figure 1. Rameau's Ornament Table" として載っている。

第2章にはハープシコードとピアノの違いが具体的に解説してあって、役に立ちそうだ。…なのだが、英語の長文なのでそのうち気が向いたら…(^^;)。


また、第3章が "The Suite In A Minor From Nouvelles Suites De Pièces De Clavecin" となっていて、「新クラヴサン組曲集」の第4組曲イ短調についての詳しい解説になっている。

ここに、務川くんが弾いた「ガヴォットと6つのドゥーブル」も入っているので、興味のある方は原文をどうぞ…。

ちなみに、第1章のイントロダクションに "Rameau’s Life and Works" とか "French Keyboard Music" などの項目もあって、ラモーなどのフランス・バロック音楽を弾くなら、本当はこういうことを知っていなければいけないのだろう…と思いつつ…英語なので…(^^;)。


論文の中にも書いてあるが、この時代の楽譜には装飾音符を含む記号類があまり書かれておらず、書かれていたとしても記譜法や解釈(弾き方)が統一されていなかったらしい。

また、演奏家が自由に装飾を入れるというのが、この時代の演奏の慣習でもあった。

なので、解釈・奏法・弾き方などに関する「決定版」のようなものは存在しないと考えた方がよさそうだ。

ただ、そんな中でも、作曲家の意図通りの演奏をしてほしいという思いで、ラモーはこの "Ornament Table" を作ったのではないか?…とも考えられる。

このテーブルに縛られる必要はないが、重要な参考資料にはなると思われる。


蛇足。このテーブルに書いてあることを、いまやっている「やさしい訴え」(第3組曲 ニ長調 RCT 3-1)の練習に活かせるかどうかは別問題…(^^;)?



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