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2020年8月4日火曜日

ケヴィン・ケナー編曲ショパンのコンチェルト室内楽版がいい ♪

ショパンのピアノ協奏曲 2曲を、ピアノ+弦楽五重奏という編成で聴いた。1990年の第12回ショパンコンクールで 1位なしの 2位に輝いたケヴィン・ケナーが編曲に携わり、自身がソロを務めた新しい CD(2020年 7月リリース)である。

これがなかなか良くて、もしかすると、個人的には管弦楽版より好きかも知れない ♪




コレ(↓)がその CD。ポーランド国立ショパン研究所のショパン専門レーベルの "NIFC" から 7月にリリースされたばかりのものである。

Fryderyk Chopin: Piano Concertos



ピアノはケヴィン・ケナー。Apollon Musagète Quartett(アポロン・ミューザゲート弦楽四重奏団)にコントラバスの Sławomir Rozlach(スワヴォミル・ロズラフ)を加えた編成。録音は 2018年8月、ワルシャワでのスタジオ録音。


ショパンの時代には、このような小編成で自らの作品を演奏することは一般的だったようで、ショパンも同じように演奏していたと言われている。残念ながら、ショパンによる小編成バージョンの楽譜は残されていない。

この CD の編曲は、ケヴィン・ケナー自身と作曲家&チェリストであるクシシュトフ・ドンベクの二人によるもので、ヤン・エキエル教授編集のナショナル・エディションとして2015年に出版されている。

参考:ヤマハミュージックWeb shop

ケヴィン・ケナーの2019年7月来日公演で第1番がこの編曲で演奏されたようだ。

以上の出典は下記。

✏️ケヴィン・ケナー自身による新アレンジ!ショパン:ピアノ協奏曲集(ピアノと弦楽五重奏版)(Tower Records)


新しい CD であるが、YouTube にはすでにアップされている。楽章ごとの音源で、下記プレイリストにまとめられている。

♪ Fryderyk Chopin: Piano Concertos(プレイリスト)


聴いた感想としては、この作品はもともとこれくらいの編成の方があっているのでは?…ということ。聴いていてとても気持ちがいいというか、安心感?がある。

ピアノの音がよりよく聴こえる気もする。ときどき、オーケストラだけのはずのところでもピアノが聴こえるような気がするが…?


おまけ1。調べてみると、ショパンのコンチェルトの室内楽版というのは以前からあって、いろんなピアニストが録音を残している。「キストナー版」というのが多い。

これは、1833年にライプチヒでフリードリヒ・キストナーが編曲、出版したというもの。下記の記事によると、「オケだけの部分にピアノが絡んだりして、協奏曲なのか、ピアノ六重奏曲なのかわからなくなるような…」と書いてある。

✏️フランソワの弾くショパンのピアノ協奏曲第1番(鎌倉スイス日記)

✏️時代背景 ピアノ協奏曲全4曲(ショパンの本棚)

ケヴィン・ケナー版も、やはりオケだけの部分にピアノが絡んでいたのかな…?


…といろいろ読んでいたら、よくまとまった論文(↓)に出くわした。私のような素人にはちょっと詳しすぎるが、当時の出版事情とかもよく分かるし、なにより主な録音の一覧表が載っているのでありがたい…(^^)♪

✏️ショパンのピアノ協奏曲「室内楽版」 : 1990年代からの 録音史概観(小岩 信治)PDF


少し引用すると…。

そもそも出版されたときに「弦楽器とピアノのパート譜だけの『部分販売』が行わ れ,ピアノと弦楽五重奏,計 6 人で演奏できるようになっていた」そうだ。

ただ「室内楽版」などの位置づけではなく、管楽器なしでも演奏できる・楽しめるという程度の、当時の演奏習慣に合わせた出版方法だったと思われる。

第1番(ホ短調)では、管楽器パートは「ほぼ機械的に,同じ音高の弦楽器のパート譜に小さな音符で転載されていた」そうだ。

また、オーケストラだけで演奏する「トゥッティ」部分で、ピアノが管楽器パートを弾く(補完する)ようなことも行われていた(楽譜にも書いてあった)とのこと。

ショパンが1832 年にパリ・デビューを果たしたときも、《協奏曲ホ短調》を弦楽五重奏と演奏したと考えられている。そういったことは当時一般的だったようだ。

ちなみに、弦楽四重奏版については、「2003~04 年に PWM(ポーランド音楽出版社)からコミネク Bartłomiej Kominek による編曲版が 出版された」とのこと。


主な録音を抜き出してみる。すべて弦楽五重奏伴奏。トリフォノフのみ「弦楽オーケストラ」。①②は第1番/第2番。「有/無」はトゥッティ部分でのピアノによる補完の有無。

  • 1995  白神典子 ①② 有
  • 1998  ルイサダ ① 無
  • 2007/2011 小倉貴久子 ①② 有
  • 2010  カツァリス ② 無
  • 2011  トリフォノフ ① 無


白神典子は初録音。小倉貴久子は浜松市楽器博物館所蔵のプレイエルを使用。カツァリスの CD には「五重奏伴奏付き(David Lively編曲)、ソロ、2台ピアノ、オーケストラ版」の 4種類が入っている。トリフォノフの演奏はヴォイチェフ・ライスキによる編曲。


ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 第2番(ピアノ六重奏版による)白神典子




ルイサダ:ショパン:ピアノ協奏曲第1番&ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲




ショパン:ピアノ協奏曲第1番 室内楽版 [浜松市楽器博物館コレクションシリーズ9]




ショパン ピアノ協奏曲第2番 室内楽版 〜プレイエル・ピアノと弦楽五重奏による〜 【浜松市楽器博物館コレクションシリーズ35】




カツァリス:ショパン:ピアノ協奏曲第2番(4バージョン)




トリフォノフ:Chopin





おまけ2。NIFC(Narodowy Instytut Fryderyka Chopina)は、ポーランド国立ショパン研究所のショパン専門レーベルであるが、2010年のショパン・イヤー(生誕200年)に、ショパン存命当時のフォルテピアノによるショパンのピアノ作品全集を出している。

使われたピアノは「1849年製のエラール」と「1848年製のプレイエル」。弾いているピアニストは「ネルソン・ゲルネル、ダン・タイ・ソン、ニコライ・デミジェンコ、タチアナ・シェバノワ、マレク・ドレヴノフスキ、エヴァ・ポブウォツカ、フー・ツォン、ヤヌシュ・オレイニチャク、ケヴィン・ケナー、カ・リン・コリーン・リー、ディーナ・ヨッフェ、ヴォイチェフ・シヴィタワ、ラウル・コチャルスキ、フランス・ブリュッヘン」で、21枚の CD のセット。ケヴィン・ケナーも参加している ♪


The Real Chopin: Complete Works on Period Instruments





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