最初にこの曲を見つけたのは、ケンプがバッハの曲を編曲したものを自分で弾いている YouTube 動画（↓）である。
このときのタイトルは、へ短調チェンバロ協奏曲の第2楽章「ラルゴ」だった。厳密に言うと、その「ラルゴ」をピアノソロに編曲したもの。
で、この「ラルゴ」が通称「バッハのアリオーソ」と呼ばれる曲なのだが、その元になったのが、バッハの「カンタータ第156番『わが片足すでに墓穴に入りぬ』」のシンフォニアということになる。
つまり、
Bach：カンタータ BWV156 の Sinfonia
↓
Bach：チェンバロ協奏曲第5番第2楽章 Largo
↓
各種編曲：バッハの "Arioso"
ということだ。
バッハの曲を編曲したものは「コラール前奏曲『イエスよわたしは主の名を呼ぶ』BWV639」などのタイトルになっていることが多い。
…のだが、『わが片足すでに墓穴に入りぬ』というのではちょっとイメージが悪いので、「バッハのアリオーソ」などと呼ばれているのだろう（たぶん…）。
でも、教会カンタータなので、「私は死にそう…」という救いのない内容だけではないだろうと思って、このカンタータを調べてみた。
すると、「東京バッハ合唱団」のサイトに、ドイツ語と日本語の対訳を載せたページ（↓）があった。※追記＠2023/05/23：残念ながら、歌詞も音源もリンク切れ…。
歌詞：カンタータ第156番｢墓に片足入れ｣
これを見ながら、カンタータの演奏（↓）を聴いてみた。
♪ Bach - Cantate BWV 156 - Ich steh mit einem Fuß im Grabe
構成は次のようになっている。１曲目が "Arioso" の元になった "Sinfonia"、２曲目のタイトル "Ich steh mit einem Fuß im Grabe" が『わが片足すでに墓穴に入りぬ』の原題だ。
1. Sinfonia
2. Aria (Soprano, Ténor)
"Ich steh mit einem Fuß im Grabe"
3. Récitatif (Basse)
"Mein Angst und Not"
4. Aria (Alto)
"Herr, was du willt, soll mir gefallen"
5. Récitatif (Basse)
"Und willst du, daß ich nicht soll kranken"
6. Choral
"Herr, wie du willt, so schicks mit mir"
その歌詞からすると、「主よ来たれ、…世を去るときに…わが終りをよみしたまえ」ということのようだ。「よみ（嘉）する」は「良しとしてほめたたえる」という意味。
ちなみに "Arioso" というのは、レチタティーボ・アリオーソ（アリア風レチタティーボ）を縮めたもので、感情表現の歌であるアリア（Aria）と語りが中心のレチタティーヴォ（Recitativo）の間（推移部）に現れることが多いそうだ。「叙唱」と訳される。
また、 "Arioso" は「歌うように」を意味する発想記号として使われることもある。
「バッハのアリオーソ」に関連するいろんな曲/演奏を聴いてみた。楽器による表情が違ったりしてなかなか面白い。個人的には、やはりピアノの音が好きだ。チェロやオーボエも悪くはないが…。
●チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056
グレン・グールドがピアノで弾いているもの（↓）があったので、これも聴いてみた。チェンバロを意識したような弾き方でなかな味のある演奏だ。
●「バッハのアリオーソ」
ケンプの演奏以外のピアノ編曲（この方が伴奏が簡単そう…）。
♪ Bach: Adagio from Keyboard Concerto in F Minor BWV 1056 (Arioso) | Tzvi Erez
※追記＠2023/05/23：リンク切れ
チェロ版。これもなかなかいい感じ。
ギター版は少し趣が変わるかな…？
さらに趣が変わるのがこれ（↓）。ポール・モーリアとそのオーケストラ、スイングル・シンガーズによる演奏。実は、1965年のフランス映画「恋するガリア」のテーマ曲になっている。
おまけ：その他の候補曲であったコラール前奏曲２曲は、《いつかは弾きたいピアノ曲たち♪》の一覧表に追加した。
J.S.バッハ/ブゾーニ：コラール前奏曲 BWV639
"Ich ruf'zu dir, Herr Jesu Christ"
J.S.バッハ/ブゾーニ：コラール前奏曲 BWV645
"Wachet auf, ruft uns die Stimme"
機会があれば、弾いてみるかも知れない…。
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《近況：「バッハのアリオーソ」を練習曲に追加 ♪》
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