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2016年10月26日水曜日

ピアノ奏法:「ペダルの現代技法」は体系的で分かりやすい ♪

ベートーヴェンのソナタ第25番の練習中、ペダルで悩んでいるときに、我が家の本棚で「ペダルの現代技法―ピアノ・ペダルの研究」という薄い本(というより冊子)を見つけた。

これが、なかなかいい内容だったので、要点だけメモっておく。ただし、基本的には右ペダル(ダンパー・ペダル)の話。左ペダル(ソフト・ペダル)については短い「所感」だけ載っている。




古い本で、音楽之友社から「昭和39年初版、昭和51年第6刷」で出たものだ。著者はK.U.シュナーベル(有名なアルトゥール・シュナーベルの息子)、訳者は青木和子という人。

ちなみに、Amazon には1964年版と1988年版というのが中古品(古本)で出ているが、最高金額はなんと 29,900円! 私の手元にある本には800円と書いてある…(^^;)。

※追記@2023/05/12:今でもあるのか Amazon をチェックしてみた。中古の「ペダルの現代技法―ピアノ・ペダルの研究」(6,880円)が 1冊だけあった。他のは売れたのか?


基本的な技法をまとめたものが次の図。


「P.」「F.P.」「V.P.」「P.C.」はそれぞれ「ペダル」「フル・ペダル」「ヴァイブレーティング・ペダル」「ペダル・チェンジ」の略。ペダル・チェンジは「ペダル取り替え」と訳してあるが、分かりにくいのでここでは「ペダル踏み替え」と表記する。


フル・ペダル

普通に(一番下まで)踏むのが F.P.(フル・ペダル)。その踏む・離すタイミングについては次のように書いてある。

例として、和声の異なるいくつかの和音を連続で弾く場合を考える。

まず踏むタイミングは常に和音の打鍵直後である。打鍵前または同時に踏むのは、曲の冒頭や休止符のあと、スタッカートの場合のみ。

ペダルを離すタイミングは、得たい効果により基本的には3種類ある。

①和音を「分離」したいときは和音の最後(次の打鍵前)
②和音を休止なくつなぎたいときは次の打鍵と同時
③極端なレガートにしたいときは次の打鍵直後

①は一瞬ノン・ペダルの状態になる。②と③は、和音の変わり目でペダルを踏み替えるペダル・チェンジ(P.C.)の動作になる。


ヴァイブレーティング・ペダル

基本は、和音や旋律に応じて、フル・ペダル(F.P.)の踏み替え(P.C.)を行うわけだが、速いパッセージになるととても手の動きに足(ペダル)がついていかない。

そのような、一音ごとの踏み替えが不可能な場合に使うのが V.P.(ヴァイブレーティング・ペダル)である。「バイブレーション・ペダル」とも言うようだ。

F.P.とペダルなしの間で細かく振動させるわけだが、足を上下させる幅は必要最小限にすること。また、手(音符の動き)と一致(シンクロ)させる必要はない。


中間ペダル(1/4・1/2・3/4ペダル)

中間ペダルは、なんとなく「ハーフ・ペダル」と呼んでいるような気もするが、この本では「1/4・1/2・3/4ペダル」の3種類に分けてある。

ただし、その踏み加減は「余韻」(独:Nachklang:ナーハクラング)の量によって調整されるべきもので、ペダルを踏む深さ(距離)で「1/4・1/2・3/4」と言っている訳ではない。

楽器や場所によっても余韻が変わるので、耳で聴いて判断するしかない。(下記説明の※印が判断基準)


・1/4ペダル

濁らない範囲で最小限の余韻を得る。音響を明るくするだけ。原則として P.C.を必要としない。pp〜mf の中速〜高速の音階と非和声的パッセージに使用できる。

※音階や異なる和声の連続を弾いても濁らないこと。(ペダルなしと音響の差はある)

・1/2ペダル

やや濁りは生じるが音が残る印象はない。和声の変わり目で P.C.するのが基本であるが、スタッカートのときは P.C.不要。
(文末にモーツァルト K.545 の例)

※単一のスタッカート(単音または和音)を弾いてもスタッカートに聴こえるが、音階や異なる和声の連続を弾くといくぶんの濁りを感じる。

・3/4ペダル

さらに余韻がほしいとき使用。音響は透明でよく反響するので輝きのある音になる。とくに有効なのは、いくつかの音の持続が指示されているのに、それと同時に音階的・非和声的パッセージを弾かなければならないとき。

※和音を弾いてすぐに手を離しても和音が保たれる、が F.P.とは明らかに違う音響になる。


ペダル・チェンジと様々な組合せ

ペダル・チェンジ(P.C.)はペダルを離したあとすぐに踏む「ペダル踏み替え」であるが、踏み替える速さをコントロールする必要がある。

柔らかく弾くときや中〜高音部では「速い P.C.」を、低音部や f、ff の場合は「遅めの P.C.」を使うのが原則。

そのほか、例えばレガートな旋律に対して、ときおりスタッカートの伴奏が入るような場合、スタッカートの音符の直後で P.C.する。


また、通常は F.P.から F.P.へ踏み替えるとき、ペダルなしの状態を経る(完全踏み替え)が、ペダルなしの代わりに中間ペダル(1/2ペダルなど)を使って前の響きを一部残すことができる(部分踏み替え)。


以上、ポイントだけをまとめてみた。

この本には実際の曲(難しい曲が多くて私にはあまり参考にならない…)への適用例がたくさん載っている。上級者の人にはこの具体例の方が参考になるのかもしれない。

なお、下記のPTNAの記事(↓)の「第三章 ペダルの技法」には、シュナーベルを引用した解説が載っている。




おまけ。1/2ペダルの楽譜例が昔練習したモーツァルトの K.545(↓)だったので嬉しくなった。ベートーヴェンのソナタ第25番も、基本的には同じようなハーフ・ペダルを使って、なんとか自己満足できる音にはなったと思っている。



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