ページ

2016年5月7日土曜日

シューマン「色とりどりの小品」の珠玉の作品たち

シューマンのピアノ曲を勉強(弾く方じゃなく聴く方…)していて、ひと通り聴き終えた。そのなかで、ちょっと引っかかった作品の一つが「色とりどりの小品」Op.99 である。

「引っかかった」というのは、聴いていて「おっ!いいんじゃない♪」というのと同時に、私のレベルでも弾けそうな曲があるかも…と思ったからである。


難易度ははっきりしないが、ピアノの先生のブログなどをみると、「色とりどりの小品」や「アルバムの綴り」には、中級レベルから取り組める素敵な曲がたくさんある、といったことも書いてある。

シューマンの作品の中では、演奏機会は少ないようだが、あの!ピエール=ロラン・エマールさんがリサイタルで取り上げたことがあるのを発見してとても嬉しかった。しかも、クルターグの「遊び」やドビュッシーの「前奏曲」との組み合わせというのがまたいい♪

→〈ル・プロジェ エマール 2012〉
 ※追記@2023/03/21:リンク切れ

ということで、少し詳しく調べてみることにした。…といっても、基本は『シューマン 全ピアノ作品の研究 下』という本(やっと読み終えた!)に書いてあることであるが…。


「色とりどりの小品」Op.99 の原題は "Bunte Blätter"(カラフルな葉っぱ)。初版譜は1851年の12月に出ているが、基本的には1830年代に作られた小品の拾遺集となっている。

全14曲のほとんどが、「子供の情景」や「クライスレリアーナ」から「ウィーンの謝肉祭の騒ぎ」にかけての充実した時期に書かれたものだ。「子供の情景」と関連していると思われる第5曲、「3つのロマンス」との関連が推測される第7曲と第10曲なども含まれる。


拾遺集としてはもう一つ「アルバムの綴り(Albumblätter)」Op.124 というのがあり、「色とりどりの小品」からもれたもの(20曲)が集められたと考えられている。

ちなみに、シューマンは手紙で「子供の情景」のために約30曲作ったと書いているので、最終的に「子供の情景」(13曲)に入らなかった曲はどこに行ったのか?という「謎」が残された…。そのヒントが Op.99 と Op.124 に隠されている?

『名曲ミステリーゾーン 謎解きアナリーゼ』という本には、「《子供の情景》外伝―残りの18曲を探せ!」という章があり、謎解きが試みられているらしい。ちょっと面白そう…。


さて、この14曲であるが、3つのグループに分けられる。

第1〜3曲:3つの小品(Drei Stücklein)

1838年12月に作曲された小曲集。自筆譜には「クリスマスのために愛する花嫁(クララ)に寄せて」と書かれており、それぞれの曲にも「リート」「ロマンス」「狩の音楽」という表題が残されている。

第4〜8曲:5つの音楽帳(Fünf Albumblätter)

「5つの〜」とまとめられているが、作曲年代は1834〜1841年くらいの幅がある。第4曲の主題をもとに、クララとブラームスが変奏曲を作曲している。

第9〜14曲:様々な表題付き作品

第11曲の「行進曲」は葬送行進曲の雰囲気だが、トリオがなかなかいい。第12曲「夕べの音楽」は、3拍子なのに2拍子で刻まれる軽快なリズムがシューマンらしい。第14曲は「4つの行進曲」Op.76 と同時(1849年)に作られたもの。それ以外は1838〜1843年の作品。

注目すべきは第13曲の「スケルツォ」。これは、未完となった「交響曲ハ短調」のスケルツォ楽章として作曲されたもののピアノ稿が元になっている。管弦楽的な響きが感じられる。


曲目のリストを下記に示す。★印は、私が個人的に気に入ったもの。演奏時間はPTNAの「ピアノ曲事典」から。

(3つの小品)
1. I. Nicht schnell, mit Innigkeit:2分 ★
2. II. Sehr rasch:1分 ★
3. III. Frisch:1分 ★

(5つの音楽帳)
4. I. Ziemlich langsam:2分
5. II. Schnell:1分
6. III. Ziemlich langsam, sehr gesangvoll:2分
7. IV. Sehr langsam:2分30秒
8. V. Langsam:1分30秒

(様々な表題付き作品)
9. ノヴェレッテ / Novellette:3分 ★
10. 前奏曲 / Präludium:1分
11. 行進曲 / Marsch:8分 ★
12. 夕べの音楽 / Abendmusik:4分30秒 ★
13. スケルツォ / Scherzo:4分30秒 ★
14. 速い行進曲 / Geschwindmarsch:3分30秒 


YouTube にはリヒテルの音源がいくつかあるが、私が気に入った演奏は、ユーリ・エゴロフというピアニストの演奏(↓)。


いますぐに(今の実力レベルでは)弾ける曲はほとんどないかも知れないが、頑張れば手が届く範囲にありそうなので、そのうちに候補曲にできれば…、と思っている。



【関連記事】
《シューマン「森の情景」をよりよく理解するために♪》

《シューマンのピアノ作品:二つの時代》


  にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ 

0 件のコメント:

コメントを投稿