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2015年7月21日火曜日

ロシアのピアノ教育:音色作り・音楽作り…

PTNAの「海外の音楽教育ライブリポート」に面白い記事を見つけた。

チャイコフスキー・コンクールのレポートに続いて「ロシアのピアノ教育から学べること」という連載記事があり、そのなかの「No.1:奈良井巳城先生インタビュー」がなかなか興味深い。

奈良井巳城先生というのは、モスクワ音楽院に留学し、レフ・ナウモフ先生門下で3年間(1997年~2000年)学んだ、という人。経験に基づく話なので具体性があって説得力がある。(以下、緑の字は引用)


いま練習で苦戦中の「音色」の話は、ヒントになるかも知れない。

ナウモフ先生はネイガウス派なので、音色やイメージづくりを大事にする。

タッチに関する指摘はほとんどない代わりに、すべての音に明確なイメージがないと「もう帰れ!」といわれたそうだ。逆に、自分の解釈・イメージができていれば、いわれた通りに弾かなくても大丈夫だったとのこと。

音色については、意外に?科学的な裏付けをもって理解されているようだ。もちろん、その音を実現するのは感性と技術なのだろうが…。


「打鍵のスピード、角度、力の入れ具合で、一つの打鍵でも震動が変わることが研究で解明されていますが、ロシア人は耳や肌で『こうしたら音が変わる』ということを敏感に察知しているのです。どんな音色が欲しいかは人それぞれで、打鍵も様々ですね」

「どんなに音が小さくても伸びるのは倍音の違いです。同じ10デシベルの小さな音でも、上からトンとつくのと、上にはじくのと、手前に弾いてひくのとでは周波数が変わります。すると人間が聴く時の印象が変わるのです」



音楽(演奏)の作り方に関しても、具体的で興味深い話が出てくる。基本的には一つ一つの音の意味を意識し、それをもとにどういう音にするかを考えることのようだ。

「たとえばドとミソを交互に弾く伴奏型があるとしたら、「このドとミソはどんな意味があるのか?このドと次のドの意味はどう違うのか?上に乗っているメロディラインに対して2回目のドはどんな感じか」等々、一音一音どんな意味があって弾いているのかを問い詰められました」


曲の構成を考え、組み立てを行うために、次のアプローチはとても面白いと思った。

「…『今楽譜に丸をつけたからその音を繋いで来なさい』と。先生が書き込んだ譜面を見ると、今まで見たことのないような位置(の音符)を繋いでいたのです。メロディラインから下の和音の中の音へ、そこからまた思いがけない位置へ・・・でもそれを歌いこんでみるとすごく美しいんですよ!『こうやって楽譜を読み込むのか!!』と目から鱗でした」

「それまでは旋律、伴奏、ハーモニーくらいしか着目していませんでしたが、あらためて譜面を見て、『ここを繋いだらどうなるだろうか、この旋律に対してこう歌ってみたら面白いかもしれない』と、色々試すようになりました」


また、「音色の立体感」という話はなるほどと思った。…が、それを実現するためには10本の指が完全に独立していなくてはできないはずだ。「なるほど」と思っても、自分で試すわけにはいかなそうだ…(^^;)。

「あとロシアでは音色に立体感が求められます。一音ずつどんな音色でタテのバランスを創っていくのか、和音を弾いた時にどんな印象になるのか。のっぺりとした音色にならないためには、タッチも音量も慎重に考えなければなりません」


それから、「そうなのか!」と思ったのは、ロシアのピアニストの多くが作曲も学んでいるという話。最近ピアニストで作曲する人が増えたような印象を持っていたのだが、ロシアでは当たり前だったのだ。日本ではどうなのだろう?

「ロシアでは作曲とピアノを学んでいる人が多く、リサイタルの最後に自作曲や編曲を披露することも多いです。ミハイル・プレトニョフやウラディミール・ニコラーエフなどの流派から、今は他の流派も含めてその流れが受け継がれていますね。デニス・マツーエフやダニール・トリフォノフ(2011年度チャイコフスキー1位・グランプリ)なども作曲をします」


おまけ。「ヘーッ」と思った話。

「トリフォノフは白い手袋をはめて練習していますが、それを外して弾くと鍵盤に対する敏感さが猛烈に生まれます。だからあれだけ美しいピアニシモになるんですね」



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