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2015年7月17日金曜日

大人のピアノ再考2:中高年の能力はどのくらい?

昨日の《大人のピアノ再考1:ピアノ学習の目的?》に続いて、「大人のピアノ」についての徒然随想。

今日のテーマは、中高齢者の「能力」について。大人になると何の能力がどのくらい落ちるのか? 人間の成長(いろんな意味での)はどの辺りで止まるのか、止まらないのか?

『大人だってピアニストに!!』(藤田 誠治 著)の著者は、11種類の能力について、データに基づいた検証を行っている。そのいくつかをご紹介したい。




動作の反応スピード

50〜70歳代の普通の老人と20〜30歳の若者とジョギングする老人について、反応時間(刺激〜判断)と運動時間(判断〜行動)を測定したデータがある。「反応時間 + 運動時間」(単位:秒)は以下のとおり。

普通の老人    :0.295 + 0.188
普通の若者    :0.270 + 0.154
ジョギングする老人:0.267 + 0.138 ←一番早い!

普通の若者よりジョギングする老人の方が反応も運動も時間が短い(速い)のだ! ピアノ演奏でいうと「楽譜をみる〜どう弾くか判断する〜弾く」にかかる時間である。これは、中高年にとっては朗報だ ♪ さっそく、ジョギングしなくては!


筋肉

握力は、20〜40歳がピークで、70歳ではピーク時の70%程度になだらかに低下するそうだ。一方、脚筋力は20歳をピークに、60歳で60%(男子)〜45%(女子)くらいまで低下するようだ。

ピアノの場合、それほど筋力を必要とするとは思えないので、実際には問題になることはならないのではないかと思う。むしろ、日頃使わない筋肉を使っているはずなので、ピアノの練習を継続することで必要な筋力は維持されるような気がする。

重要なのは、筋肉の柔軟性と、それを動かす神経回路の働きである。(と別の本に書いてあった)


脳神経

従来、脳神経の機能は加齢とともに低下する一方だと考えられていた。「二十歳を過ぎると1日に10万個の神経細胞が死ぬ」などと脅かされたものだ。しかし、この説は修正される必要があるようだ。

死滅する細胞がある一方で、成長し続ける神経細胞がある。正常な加齢では、後者の「成長」の方が晩年まで優勢である。さらに、損傷した神経細胞はその周りの細胞がその働きを補っていく。…というのが、最新の知見であるとのこと。

つまり、脳の働き、感覚能力・記憶能力・学習能力などの低下はまったく心配する必要がない、ということらしい。「歳のせい」にすることもできなくなる…わけだが…(^^;)。


聴力

人間に聞こえる音の周波数は、20〜20,000Hz と言われている。年齢とともに、高音域が聞こえなくなるというのが一般の説である。ピアノの音域は(倍音を除くと)28Hz〜4,186 Hz である。

下記の数字は、健康な人の一般的な傾向を示している。軽度・中度・高度は難聴の程度を示している。例えば、60歳だと、2,000Hzまでは問題ないが、それ以上の高音域に対しては軽い難聴、3,000Hzを超える高音に対しては中程度の難聴となる。

40歳:
50歳:5,000Hz〜軽度
60歳:2,000Hz〜軽度、3,000Hz〜中度
70歳:〜1,600Hz軽度、1,600Hz〜中度、7,000Hz〜高度
80歳:〜 300Hz軽度、 300Hz〜中度、5,800Hz〜高度

音楽を聴くことを楽しみとする者にとっては、あまりありがたくない数字である。とはいえ、ピアノ曲のほとんどは3,000Hz以下の音で作られているそうなので、60歳くらいまではほとんど問題ないらしい。倍音が聴こえないことによる音色の変化はあるかもしれないが。

ピアノを弾くことに関しては、ピアノ自体の音もけっこう大きいので、聴力の衰えがピアノの学習に影響することはない、と信じたい。ベートーヴェンのような例もあるので…(あまり参考にならないか…)。


学習力

ピアノ学習者としては「学習」能力は気になるところである。一般には、学習のスピードは加齢とともに遅くなるが、「時間をかければ」若年者とあまり変わらない能力はある、ということになっている。

例えば、コンピュータの訓練で、中高年では訓練時間が若年者の2倍かかるという研究もある。中高年の特徴としては、質問が若者の3倍多い、マイペースの方が学習の正確さが高いことが報告されている。

私の場合、時間がかかることがややフラストレーションになっているような気もするが、じっくりマイペースでやるしかないようである。


記憶力

記憶には、短期記憶、長期記憶、永続的記憶などの種類がある。

短期記憶(電話番号を聞いてその場で電話をかけるような場合)については、加齢による影響はほとんどないようだ。初見演奏は歳を取っても大丈夫なはず?

長期記憶の場合、記銘(覚えること)と想起(思い出すこと)の両方が必要となる。実験の結果、中高年者では、覚える力はそれほど衰えないものの、思い出す想起力が衰えるらしい。これは、日常生活で実感している…。練習した曲が、いつの間にか「元の木阿弥」状態になるのはこのせいか…?


そのほか、個人的には視力の衰えが悩みである。このところ老眼が進んできたせいか、楽譜が見えにくくなってきた。楽譜までの距離と鍵盤までの距離の微妙な差も気になる。それもあって、最近はできるだけ早く暗譜するよう努力しているのだが…。

…で、結局どうなの?ということだが、この本の著者は「ピアノ学習は中高年でも大丈夫!」と主張している。なので、次回は「大丈夫!」の中身を少し整理してみたいと思っている。



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