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2014年1月23日木曜日

「ショパンのピアニスム」:第1章 ピアノ技法の原理(その3)

●出典:『ショパンのピアニスム―その演奏美学をさぐる』

 第1章 ピアノ技法の原理

●概要&感想 (つづき)


(8) 装飾法

 装飾の少ない簡素なカンタービレ(カンティレーナ)から、
 ベル・カントを模した装飾音から、
 ショパン独特のピアノらしいパッセージ・ワークへ

 音を分割することによって装飾的な変奏を行う
 「ディヴィジョン」の技法をさまざまに使っている


(9) 鍵盤からのインスピレーション、パッセージ・ワーク、音の舞

 ショパンのパッセージ・ワークの多くはうねうねとした入り組んだ
 形を持ち、空気中に音を飛散させながら自由に駆け回って、
 さながら彼のインスピレーションの発露を示すようである。

 非和声音の働きが音楽に流動感と色彩を生み出している


(10) テンポ・ルバート

 3種類のテンポ・ルバートがある

 ①伴奏のテンポを一定に保ったまま、旋律を自由なテンポで弾く
  (ベル・カント唱法)
 ②全体の演奏時間を一定に保ちながら、その中で均衡をもって
  テンポを変える
  (19世紀初頭の器楽の新しい演奏習慣)
 ③マズルカの持つ民族的なテンポ・ルバート
  (強拍の移動など独特な3拍子)


(11) フレージング

 基本は朗読のように?

 ショパンのフレージングの特徴
  ・構造的な境界でも呼吸を切らず、
   それを長く引き伸ばしてどこまでもつなげていく
  ・スラーによる不規則な区分:長短さまざまなスラーが
   フレーズの長さとは一致しない方法で用いられる

 音楽の継続性、単調になることを避け盛り上がりを効果的に表現


(12) ショパンと楽器

 ピアノをオーケストラのように用いることはせず、
 あくまでもピアノの純粋な響きを大切にしていた

 気分のすぐれないときは、エラールのピアノを弾きます。
 これだとすぐに完成した音がでますからね。
 でも元気がよくて、自分だけの音を出してみたいなと思うときは、
 プレイエルが必要なのです。(プレイエルを一番好んでいた)

 プレイエルは、透明感のある柔らかい音と軽いタッチをもち、
 繊細なニュアンスを表現することに適した楽器であった。


(13) ペダリング

 基本:低音部の和声を十分保持した上で高音部に
     非和声音を含めるもの(豊かに響かせるため)

 しかし、多くの非和声音を意図的に混合させた激しい表現や
 最新の注意を払って非和声音を避けるペダリングもある

 自筆譜にはその推敲のあとがみられる


(14) デュナミークと表現様式

 ショパン自身の演奏はしばしば「音が弱い」と非難されたが、
 彼自身は「強く弾きすぎるといわれるよりはまし」と言っている

 ショパンはピアノを叩くような弾き方が大嫌いだった。
 彼のフォルテはあくまでも相対的なもので、いつも同じ強さとは
 限らない。つねにクレッシェンドとディミヌエンドの線上を揺れ動く、
 あの微妙なピアノやピアニッシモとの兼ね合いがあるからです。
 (ヒプキンス)

 演奏するときは十分に音を鳴らし、豊かで丸みのある音を
 繰り広げていかねばなりません。ピアニッシモからフォルティッシモまで、
 限りなく微妙なニュアンスを追い求め、ピアニッシモのときは
 模糊たるつぶやきにならぬよう、フォルティッシモは叩きつけるような
 弾き方で敏感な耳を傷つけたりしないよう、気をつけなくてはなりません。
 (ミクリ)


以上



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