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2016年4月30日土曜日

シューマンのピアノ作品:二つの時代

シューマンの「森の情景」(から2〜3曲)を練習しているので、これを機に少しシューマンを勉強しようと思っている。

とりあえず『シューマン 全ピアノ作品の研究(下)』(西原稔 著、音楽之友社、2013年)という本を借りてきて、関係ありそうなところを拾い読みした。以下、そのメモ書き。

ちなみにこの本は、シューマンの全ピアノ作品51曲について、成立過程・構成・作曲手法・他作品との関連、稿や版、評価などを多くの譜例付きで解説してあって、けっこう読み応えがあり面白い。理解できるかどうかはさておき、通読してみようと思っている。(上巻も?)




今回は、シューマンのピアノ作品における「森の情景」の位置付けを理解するために、シューマンの生涯とピアノ作品における「二つの時代」について整理してみる。


シューマンの年代区分

シューマンの年表はほぼ10年・5年単位で分りやすい。

1810年生まれ、1830年20歳で音楽家になることを決意、前後してクララと知り合う。「アベッグ変奏曲」Op.1は1830年の作品。

1830年からの10年間(ライプツィヒ時代)は愛と苦悩の時期、ほとんどの作品が「フロレスタンとオイゼビウス」およびクララと関係していると言っても過言ではない。1840年に30歳でクララと結婚。

新婚時代、結婚の喜びを歌曲に託した1840年の「歌曲の年」、続く1841年「管弦楽の年」、1842年「室内楽曲の年」と充実した時期を過ごす。が、1842年ごろから心身の疲労で病気がちになる。

そして、1844年に転機を迎える。クララと一緒にロシアに演奏旅行に行くのだが、シューマンよりクララの方が人気があったことに気落ちし…。また、希望していたゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者になれなかったことの失意も重なり、結果として、転地療養のような形でライプツィヒからドレスデンへ移る。

1845年からは、古典対位法とバッハの研究に改めて取り組み、1830年代とはまったく異なった音楽を作り出す。

1850年、40歳でデュッセルドルフ市音楽監督の職を得て、デュッセルドルフへ移る。その後、1854年に投身自殺を図り、療養所に入り、1856年、46歳で亡くなる。


ピアノ作品については、1830年代まで(1840年のクララとの結婚まで)の時代と、1845年以降とに分けて考えることができる。


1830年代までのピアノ作品

1830年代まで(クララと結婚する1840年まで)は、

「シューマンの分身であるフロレスタンとオイゼビウスがクララへの想いを込めて作曲した《ダヴィッド同盟舞曲集》」が中心にあり、

「《スケルツォ、ジーグ、ロマンスとフゲッタ》や《ウィーンの謝肉祭の騒ぎ》で…ピアノ作品の創作も一時代を終える」ことになる。


とくに、1837年〜1838年頃は充実した作品群がある。

1837年、クララとひそかに婚約し、父親ヴィークに拒絶された年の主な作品。

ダヴィッド同盟舞曲集 Op.6
幻想小曲集 Op.12
交響的練習曲 Op.13

1838年、10月から半年ほどウィーンに滞在した頃の主な作品。

子供の情景 Op.15
クライスレリアーナ Op.16
幻想曲 Op.17
フモレスケ Op.20
8つのノヴェレッテ Op.21


1845年以降のピアノ作品

ドレスデンで、古典対位法とバッハの研究に改めて取り組み、1845年には、ペダル・フリューゲル(足鍵盤付きピアノ)のための作品「カノン形式によるペダルフリューゲルのための6つの練習曲」Op.56などを生み出す。


「これらの作品に流れる静寂な音の世界は、1830年代の爆発的なシューマンとはまったく異質である。…いわばシューマンの魂のモノローグを思わせる。」

シューマンにとっての新しいスタートとも言える。この時期のピアノ作品は次のように分類できる。

①古典対位法的な作品
②子供のための作品
③1830年代作品等の拾遺集
④その他

①は、最初にあげた Op.56 や「BACHの名前による6つのフーガ」Op.60 など。②はシューマンの子供たちのための作品群で「少年のためのアルバム」Op.68 などがある。

③は、主に1830年代の作品その他を集めた拾遺集で、「いろとりどりの小品」Op.99 など。④はその他の連作曲集などであり、ここに「森の情景」Op.82、「朝の歌」Op.133 などが含まれる。

「朝の歌」や「主題と変奏(精霊の変奏曲)」Anh.F 39 は、「…幻聴に悩まされながら、また同時に『精霊の声』に一心に耳を傾けて、天からの創造の啓示を必死に求めて作曲された作品」である(とのこと)。


そんな中で生み出された「森の情景」Op.82 について、もう少し詳しく見てみたい。次回に続く…。


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