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2015年2月22日日曜日

ロシア・ピアニズム:ピアニストの系譜(2)

ロシアのピアニズムはたった一つの教えではなく、とても大きく、宇宙的な規模のもの…。ピアニズムというものを詩、歌、文学などの他の芸術との関わり合いの中で教えられていた…


 『ピアニストの系譜』
 (真嶋 雄大 著、音楽之友社 2011/10/5)

  読書メモ2:ロシアのピアニズム

  本の紹介・目次は→《本「ピアニストの系譜」》


ロシアのピアニストの「系譜」はムツィオ・クレメンティから始まっている。『ソナチネアルバム(1)』等に登場するクレメンティであるが、実はイタリア人だ。

クレメンティは、弟子のジョン・フィールド(アイルランド人、「ノクターン」という形式を創り出しショパン等に影響を与えた)とともにロシアに演奏旅行に行っている。フィールドはのちにロシアに移住して、多くの弟子を育て、そこからチャイコフスキーやラフマニノフにつながる系譜が展開する、という訳だ。

このあたりの著名な作曲家(兼ピアニスト)の一群は注目に値いする(下図)。



ロシアのピアニストの系譜はとても膨大なので、気になった箇所だけを拾っていくことにする。

上の図にもあるアントン・ルビンシテインとニコライ・ルビンシテインは兄弟で、それぞれがペテルブルク音楽院とモスクワ音楽院の創設者である。2つの音楽院ができたのは2人の性格(ピアニズム)が異なっていたかららしい。

ロシアの系譜で大きな位置を占めるのがゲンリッヒ・ネイガウス。スヴャトスラフ・リヒテルとエミール・ギレリスを育てた名伯楽である。「系譜図」の中だけでも22人の弟子が名を連ねている。ネイガウスの孫であるスタニスラフ・ブーニンもこの系譜。新しいところではユリアンナ・アヴデーエワ(1985〜、2010年ショパン・コンクール1位)もいる。

ブーニンの語るロシアン・ピアニズム。「たった一つの教えではなく、とても大きく、宇宙的な規模のものといっていいでしょう。…ピアニズムというものを詩、歌、文学などの他の芸術との関わり合いの中で教えられていたことです。…」

ネイガウスのピアニズムに関しては、次の2冊の本の読書メモがあるので、興味のある方はどうぞ。

 『ピアノ演奏芸術』 →《読書メモ》
 『ネイガウスのピアノ講義』 →《読書メモ》

もう一人、私の中ではヴィクトール・メルジャーノフという名前にも親しみがある。メルジャーノフの弟子である原田英代さんの本を去年の秋に読んで、ロシア・ピアニズムの系譜と内容を少しは理解した気になったからだ。

 『ロシア・ピアニズムの贈り物』 →《読書メモ》

そのメルジャーノフの先生のサミュエル・フェインベルクという人もすごい人だったようだ。1914年にバッハの平均律曲集全曲のロシア初演を行ない、スクリャービンの全ソナタ、ベートーヴェンの全ソナタなどの演奏会を次々に成功させたピアニストらしい。

個人的に興味を持ったのは、フェインベルクが12のピアノ・ソナタや3つのピアノ協奏曲などを残した作曲家でもあったことだ。また『芸術としてのピアニズム』という著書は「今日もなお音楽的バイブルのひとつ」だそうだが、残念ながら邦訳は出ていない。

もちろん、ウラジーミル・ホロヴィッツやウラジーミル・アシュケナージなどの巨匠をはじめ、多くの有名ピアニストが名を連ねている。以下、一度演奏を聴いてみようと思った現役ピアニストの名前をあげておく。名前は知っているが、どんな演奏をするか知らないピアニストも結構いる。

ネイガウスの系譜の中では、ボリス・ベレゾフスキー(1969〜)、コンスタンチン・リフシッツ(1976〜)、イリーナ・メジューエワ(1975〜)、セルゲイ・ババヤン(1961〜)、ダニール・トリフォノフ(1991〜)、イーヴォ・ポゴレリチ(1958〜)など。

それから、ミハイル・プレトニョフ(1957〜)、アナイト・ネルセシアン(1954〜)、エリック・ウィックストローム(1972〜)、ニコライ・ルガンスキー(1972〜)、アルカディ・ヴォロドス(1972〜)、ヴァディム・ルデンコ(1967〜)、ダン・タイ・ソン(1958〜)、ヴァハン・マルディロシアン(1975〜)。

ホロヴィッツの流れを汲むピアニストとして、ヴィクトール・マカロフ(1952〜)とアレクサンドル・ガヴリリュク(1984〜)。

なかなか全部は拾いきれないほど、ロシアは層が厚いようだ。少しずつ演奏を聴いて、お気に入りピアニストを見つけたいと思っている。


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