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2014年9月18日木曜日

ピアノ音楽史:終章「ピアノ音楽の歴史は終わったのか?」

※目的:20世紀のピアノ音楽史を概観する
※出典:「ピアノ音楽史事典」
    (千蔵八郎、春秋社、1996年)
 第8章 ドビュッシーの出現と20世紀はじめのピアノ音楽
 第9章 20世紀のピアノ音楽
 終章  ピアノ音楽の歴史は終わったのか?
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ピアノ音楽の歴史は終わったのか?



■ ピアニストとの関係において成立するピアノ音楽

ピアノ奏法は、18世紀の最後の四半世紀に始まり、古典派からロマン派初期のころにその基礎が確立された。そしてその後、しだいに難しい技巧を要求する曲がかかれるようになってきた。ピアニストもそうした変化に対応できるよう、訓練の内容を高めていった。


■ 19世紀的なピアニズムと現代のピアニズム


現代のピアニストは、長く厳しい訓練の結果を使ってピアニスト自身の曲の解釈をステージで披露する。19世紀のピアニスト=作曲家という形の音楽家は少なく、ほとんどは再現芸術家である。

他方、再現芸術家というより、同時代の作曲家の作品の紹介者としての役割に重きを置くピアニストも存在する。この場合、作品そのものを理解し、表現方法を自ら考え出し、新しい音楽を音にするというスペシャリストとしての側面が大きくなる。

シェーンベルク以降の新しい(実験的な)ピアノ曲は、従来のピアニズムを前提にして作曲されるわけではない。最初に作曲家のアイデアがあり、それを理論的に整理し、それによって作品を書いていく。ピアノのための作品というよりは、作品の単なる演奏媒体としてピアノがある、という考え方に近い。

したがって、それを演奏するピアニストには、従来のピアニズムによる技術・表現にはなかったものが求められる。その作曲過程への理解や共感まで求められることになる。


■ 人間と同様に、ピアノ曲も大きくは変わらない?

カービーの「鍵盤音楽の歴史」の最後の章に次のようなことが述べられている。

「音楽の重要な要素の一つが即興性にあり、とくに鍵盤楽器においてそうであるように思われる。偶然性の音楽にはたしかに即興性が存在するが、セリエルな音楽の領域で、即興性が重要であり続けることはないだろう。」

「即興演奏に対する自然な衝動が、ともかくも自らふたたび主張するようになるのではないだろうか。」

鍵盤楽器の音楽の基本には即興性があり、それはセリエルな音楽には存在し得ない。即興演奏は人間の自然な衝動であり、将来の音楽において即興性が重要な役割を果たしていくのではないか、ということだろう。

文明が進んでも人間の本質はそれほど変化しない。音楽を聴くときは、どんな時代・環境においても、美しいメロディーに酔い、快いハーモニーとリズムに身体をゆだねる楽しみを求めるのではないか。あえてアブストラクトな音楽を求める根拠はあるのだろうか。


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〔一言感想〕

この本の筆者は、最後に「ベートーヴェンやショパンやリストの曲をわざわざ聴きにいくことはあっても、同時代に息づいていることを実感するためにならともかく、アブストラクトなピアノ曲を聴くために、わざわざ大金を払って演奏会に足を運ぶだろうか。…」と書いている。現代ピアノ音楽には懐疑的なようだ。

私自身、ベートーヴェンやショパンが大好きである。いろんなピアニストがそれぞれの解釈やピアニズムで新しい魅力をもったベートーヴェンを聴かせてくれるのはじつに楽しい。「再現芸術」は味わい楽しむだけの十分な価値をもっていると思う。

しかし同時に、今の時代のピアノ音楽を聴きたいという気持ちも強い。ベートーヴェンやショパンやドビュッシーも、その時代の最先端を行く「現代音楽」を書いていた。新しい、より魅力的な音楽を創り出すために、様々な試みと努力を重ねてすばらしい作品を残してくれたわけだ。

今の時代にも、21世紀の「ベートーヴェン」や「ドビュッシー」がいると信じている。その作曲家たちが、いま何を考え何を創り出しているかにとても興味がある。それを聴き分けるだけの能力や経験や感性が私にあるかどうかは自信がない。が、そのいくつかの兆しだけでも聴きたい、感じたいと思っている。

「同時代の作曲家の作品の紹介」をしてくれるピアニストや演奏会が増えることを大いに期待したい。


p.s. 「即興性」「即興演奏」というのはちょっと期待できるキーワードではないかと思った。再現芸術においても、同時代の(これからの)音楽においても重要な気がする。

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【完】


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