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2014年1月13日月曜日

第4章 ベートーヴェンに関するセミナー(1) (ネイガウスのピアノ講義)

●出典:『ネイガウスのピアノ講義』

  第4章 ベートーヴェンに関するセミナー (1)


●感想(青字は抜き書き)

マスタークラス的なセミナーの記録である。学生のG嬢がベートーヴェンのソナタ「ワルトシュタイン」を弾いた後、ネイガウスがベートーヴェンの曲の演奏について話をしている。G嬢に対しては、けっこうストレートにきついことも言っている。


「何にもまして柔軟性だ、硬さがないように…」とリストが言ったように、指たちは拍子木ではなく、小さな蛇です。しかしG嬢はまだ、ピアニストに必要な、成熟した、円熟味を感じさせるような音の深さには到達していません。


学生たちに見られる共通の欠陥は、ベートーヴェンに対するやや味気ない態度です。…


そのあと、ベートーヴェンの作品は彼の深い思考や複雑な感情が音楽として表現されている、といった趣旨のことを述べている。「思考的感情」という言葉は、知的思考と人間らしい感情の統合のようなものを感じさせてくれる。


ベートーヴェンの作品に与えられているあのような深み、思考・感情の複雑さ…。立派な芸術家の持っているものを表現するために、思考的感情という言葉をここでは好みます。


私たちの頭脳のなかにも、言葉や、思想、それに感情を音楽に換える器官が存在していないなどと、はたして言えるでしょうか?


そしてその結果、ベートーヴェンを演奏する際の基本的な困難さをさまざまな言い方で説明している。基本的には、理性と感情のバランスだと思われる。実際には、その両方の要素をうまく取り入れて表現することは、並大抵のことではない。


ベートーヴェンを伝達する際の最も困難なことのひとつは、まさしく、厳格な思考と感情の深みを結合することです。


ベートーヴェンの作品の解釈にあたって非常に困難なのが、きわめて深遠な作品の感情性と知性―この両者のバランスをとることです。一方では彼はきわめて厳格で、自己抑制的であり、もう一方では、並はずれて激しやすく、感情の奥行きが深い、情熱的な人間でした。


…あまりにロマンチックな方向へは陥らないこと、それと同時に大学教授的な味気なさとか、詩文集(アンソロジー)的に平凡なハイドンの方向に度を越して熱中しないようにすることにあります。


さらに、彼が聴覚を失ったために生じた、演奏・表現する上でのもう一つの「困難さ」を指摘している。


彼の音楽には、…、聴覚を失っていない人がほとんど聴くことができない特性が存在します。これは大きな困難さのひとつです。


これは難しい話なのだが、要約すると次のようになると思われる。


聴覚を失ったがゆえに、ベートーヴェンの音楽には、「想像上のピアノ」のために作曲した結果の音楽がときおり現れる。それは、音楽的・器楽的ではあるが「抽象的な思索」の結果である。


ネイガウスは、この特性がベートーヴェンの演奏をさらに困難にしていると言っているが、この特性に関しては肯定的にとらえている。


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